☆拍手御礼小話*18☆
〜byヒロイン〜
あのとき悟空がわたしを放していたら。
わたしはきっと、遅刻しながら学校に行って。
今までとなんら変わらない生活を送ってたんだろうな。
あのときわたしが悟空に抱きつかなかったら。
多分それを『夢』だと思い込んで。
その一瞬の奇跡を思い出の底に深く沈めちゃってたかもしれない。
『すげえ可愛いぞ』
『強くなったなっ!』
『大丈夫か?』
『ずっとそばにいてやる』
『大好きだ』
『おめぇが……大切なんだ』
悟空にもらった、大切な宝物。
柔らかな声にのって、耳に心地よく響く、甘いささやき。
こんな言葉も、あの日がなかったら、聞くこともなかったんだ。
そのための代償は、本当に大きくて。
いまだに時々脳裏をかすめては、胸をぎゅっと締め付けるけど。
―――――後悔なんて、しない。
だっていま、悟空のとなりで笑ってるわたしは。
まちがいなく、幸せだから。

|