☆拍手御礼小話*20☆
〜byヒロイン〜




今日もまた、一日が終わる。
真っ赤に染まる、神殿のお庭。


ここに来てもう、どれくらい経ったのかな。


夕陽を見ながら、ふと元の世界を思い出した。





学校帰りの電車の中からも、街に沈んでいくこんなキレイな夕陽が見えたなぁ。
お父さん、お母さん、まだわたしのこと心配してるかな。
友達たちも、みんな元気にしてるかな。



わたしはね………時々淋しいけどね、とっても元気だよ。
それに、格闘技なんか始めてね、まぁ、こんなボッコボコだけどさ、前よりずいぶんましになったよ。


ここではみんな良くしてくれるから。
だから…心配しないでね。





答えなんか返ってくるはずないってわかってるけど。
今の世界も元の世界も変わらずキレイな夕陽に、なんとなく心で話しかけてみる。
伝わるといいな、なんて思いながら沈んでいく夕陽を見ていたら。





「大丈夫か?」



突然後ろから声をかけられた。

驚いて振り向けば、そこには今この世界で一番安らぎをくれる人が立っていた。



「……びっくりした。お帰り悟空」


いつの間にか下界の修行から帰って来ていた悟空に、慌てて笑顔を向ける。
いつもはその大好きな気が神殿に戻ってくれば一番にお迎えしてたのに、失態だ。
見れば心配そうな悟空の表情。感傷に浸っていたのが、思いっきりバレちゃったんだろう。



そんな顔、してもらいたくない。



「大丈夫……だけど、やっぱ痛いよ〜、顔も、身体も。ポポさん今日も遠慮なくボカスカ殴ってくれちゃってさ。でも!今日は何回か避けられたんだよ、ポポさんの攻撃!」


無理にテンションを上げてみて、精神的な弱さを見せないように笑ってみれば。
そんな気持ちを知ってか知らずか、悟空も柔らかく笑ってくれて一言。


「そうか」


そう言って、わたしの頭を優しく撫でてくれた。





―――――――――ね?わたし、元気でしょ?
―――――――――ね?わたし、心配ないでしょ?

ここには、わたしの大好きな人がいて、こんなに優しくしてくれるんだよ。
だから、大丈夫。





もう一度夕陽に視線を戻して、ふわりと浮かんだ、心の底からの笑顔。





「あ〜、腹減った!中入ろうぜ」
「悟空の合言葉みたいだよね、その『腹減った』ってヤツ」





クスクス笑いながら、悟空と肩を並べて神殿の中に入った