一周年記念♪







それは、悟空と悟飯がちょっとお出かけしていて、が一人で家事兼お留守番をしていたときのこと。



「あれ、ピコさん? なにやってるんですか、そんなところで。悟飯になにか用かな?」


が洗濯物を干しに外に出たら、家の前でピッコロがうろうろしていた。
かつては大魔王として大事な自分の夫に瀕死の重傷をを負わせたピッコロではあるけれど、今現在は、同じく大事な自分の息子がたいそう懐いている武道のお師匠さん。



「いや、別に悟飯に用などはない……」
「そんなこと言っちゃって〜。用なんかなくても、悟飯とお話したいんですよね〜、ピッコロさん?」
「……なんだ、それは」
「だから〜。ピッコロさん、悟飯のこと好きでしょ? 師弟愛ってやつ?」
「…………ふん」



にっこり笑うから視線をはずし、ピッコロはそっぽを向いたが、はそんなことまったく気にも留めず、洗濯物を広げて物干し竿に引っ掛けながら。



「悟飯ちゃんも、ピコさんのこと大好きですよ? 今日はピコさんがどーしたこーしたって、楽しそうに話してくれるの。悟空と同じくらい、ピコさんのことも好きみたい」
「―――――――――じゃあ、お前はどうだ?」
「は?」



切り替えされて、はくるり、とピッコロを振り返る。
お前はどうだって、なにがどうなんだろう?……と、目で訴えている彼女に、ピッコロは視線を合わせた。



「だから、お前も孫と同じくらい、オレ様に好意を持っているか?」
「え? ……ぇ、えええぇえええ!?!?」


いっくら鈍いちゃんでも、その言葉の意図するところがわかったらしく、ボン、と顔を赤くして素っ頓狂な声を上げた。



それってそれって……ええ!? そんなの、、、ど、どう答えりゃいいんだ!?!?
い、いやうん。答えなんか決まりきってるんだけど!!!








「久しぶりだな、



ピッコロに予期せぬ質問を投げかけられて、答えに窮しているに、声をかけてきたのは。


「あ、あれ? 貴方は…たしか、死んだ悟空のお兄さまじゃ………」
「お兄さまではない。オレの名はラディッツだ」



いや、そういうことではなくて。
なんで死んだはずの悟空の兄が、ここにいるのかが問題なんですけどね。



「きさまっ! 今はオレがと大事な話をしているんだ! 邪魔するなっ!」
「ほう…。オレのにどんな大事な話があるというのだ?」
「ちょっと待て。 わたしはラディさんのもんじゃないですよっ。それに……なんであの世にいるはずの人がここにいるんですか!?」



ラディッツは確か、ピッコロの魔貫光殺砲で悟空とともに死んじゃったんではなかったか。
その後、悟空はドラゴンボールで復活したけれど、ラディッツが生き返るはずもなく、いまだに地獄にいるものだとばかり思っていたのに。

なんだかワケがわからないが、とりあえず「オレの」発言を全否定してから、がラディッツに問うと、彼はニヤリ、と皮肉げな笑みを浮かべた。



「さあな。さしずめアホな管理人が一周年記念とかでオレ様を出そうとしたが、設定がうまくいかなくて強引に引っ張ってきたんじゃないのか?」
「そういうことだな。まったく毎回毎回、思いつきで行動しやがって…。いちいち振り回される俺たちの身にもなりやがれってんだ」
「あああ、ナッパさんまでご登場ですか!?」



これまた死んで地獄にいるはずのナッパの登場。
生きてるうちから、ナッパはいろいろとちょっかいを出してきたので、は彼が苦手だった。
しかも、、、大切な仲間を何人も殺した実行犯。いまだ、その恨みは忘れていない。



「よう、。お前に会いたくて戻ってきちまったぜ!」
「………別に、わたしは会いたかないですよ。さっさとあの世に帰ってください」
「おいおい、冷てえなぁ。このナッパ様がこんなにお前を想って――――――」
「きさま、後から来てを口説くなっ! 邪魔だ!!!」
「ナッパ、抜け駆けはよくねえぜ!」




「ったく、うるさいなぁ……」



勝手に喧嘩してる輩を見て、がため息混じりに呟いたとき。





「……今日はずいぶんと賑やかじゃないか」


聞き覚えのあるその声が、もうひとつの面倒の種の来訪を告げていた。



「………また来たんですか、ベジさん。今悟空はいませんよ」
「ほう。それは好都合だ。、そろそろこのオレ様に靡いて―――――」
「靡きませんよ」



毎日のように通ってくる、サイヤ人の王子・ベジータ。
主に悟空に勝負を挑みにくるが、にも色目を使ってくる困った人なのだ。
いつもは夫たる悟空ががっつりとをガードしているが、それでも「お前が本当に好きなのはオレだろう」とか、「カカロットなんぞよりオレとお前のほうがつりあっているぞ」とかと、どっからそんな自信が来るのかは謎だが、いけしゃあしゃあと言ってくる。
以前は思いっきり自分を殺そうとしたくせに、この人の神経回路はどうなってるんだろう…?と、毎度毎度甚だ疑問に思うである。





「『また』だと? ベジータ、きさま、それはいったいどういうことだ……?」


ピクリ、との言葉に反応したのは、ピッコロさんで。
ああピコさん、貴方だけは悟飯のよき師匠なだけだと思っていたのに、となんだかせつなくなるを無視してベジータをにらむピッコロ。



「ふん。オレ様のオンナに毎日会いにきてなにが悪い」
「ちょっとベジさんふざけんなっ! 誰がいつあんたのオンナに――――――」
「「「「オレ様のオンナーーーーー!?!?!?」」」」



ベジータの言い様に、さすがのもぶちきれて大抗議をしようとすれば、当のよりもさらに大激怒の声が彼女の言葉をさえぎった。





「きさまふざけるなっ!!!はオレのだ!!!」(ちがうから)
「なにをバカな!!!はオレのものだ!!! 王子も何も関係ないっ!!!」(だから、ちがうから)
「いくらベジータでもだけはゆずらねえぜ!!!」(ゆずるゆずらないの問題じゃないから)
「ふん、きさまらクズどもがなんと言おうと、はオレのオンナだ!!!」(ちがうっつってんだろ)





ぎゃあぎゃあと、そりゃもう殺気混じりに怒鳴りあいを始める目の前の男たち。
その話題の中心にいるのが自分であることに、否が応でも気づくが、胸の内で全否定の突っ込みを入れる。
好意を持ってるかだのオレのだの会いたくて戻ってきただのはオレのオンナだのと、なにを好き勝手にほざいてやがるんでしょうか、この人たちは。



だいたいわたし―――――――――結婚してるんだけどなぁ……。



愛する夫がいるだけではなく一児の子持ちなのに、どうしてそんな色の付いた話題の渦に巻き込まれてるんだろう?
からかうならほかの人にしてくださいよ。





付き合いきれない、と結論を出し、言い合う男どもを無視してちゃっちゃと洗濯物を干す。
超人的な強さを誇る男たちが一触即発の状況にあるそのすぐそばで、フンフンと鼻歌を歌いながら洗濯物を干しているも、かなりの大物だ。



「洗濯終わりっと。次、掃除〜♪」



もはや怒鳴りあいなど見ざる言わざる聞かざる状態のが、軽い足取りで家に入ろうとして。
玄関の戸に手をかけて、ふと気づいたようにクルリ、と振り返る。





「ね、家壊されちゃうと困るから、喧嘩ならもっと広いところでやってくださいねw」



にこっ、と可愛らしく笑うの笑顔に、一同つられてヘラリと笑みを浮かべた。



「よしっ! じゃあ向こうで決着をつけるとしよう!」
「久しぶりの戦闘だな! 血が騒ぐぞ!」
「あの世は骨がなくて退屈だったからよう、久しぶりに思いっきり暴れるぞ!!!」
「クズどもめが。エリートのオレ様にかなうわけがなかろう!」






連れ立って武空術で飛んでいくその方々を見送るの顔には、策士よろしく黒い笑みが浮かんでいたという。。。



















で、後日。





「はぁ…」



ため息をついているのは、今回の話題の中心・ちゃんだ。





「どうした、?」
「お母さん、どうしたの?」
「悩みか、
「相談なら乗ってやらんでもないぞ」
「そんな顔すると俺まで悩んじまうぜ」
「だからカカロットなんぞやめてオレ様のところに来いって言ったんだ」




上から、悟空・悟飯・ピッコロ・ラディッツ・ナッパ・べジータ。
夫と息子が自分のそばにいるのはわかるが、その他四人は、なんで未だにここにいるんでしょうか…。


言わずもがな、のため息の原因は、悟空と悟飯以外の方々からの御厚意だったりする。
―――――――――いや、『厚意』ならいいんだけど、『好意』だから困っちゃうのだ。



先日は、ただからかっているだけだ、という結論に達していたのだが、どうやらそうも言っていられないくらい押し付けられる好意に、頭痛までも覚える昨今。



特別、気を引くようなことをしたんだろうか?
好き好きビームは、悟空と悟飯のみにしか出していなかったと思うんだけど、実はけっこう勘違いされるようなことでも無自覚にやっていたのだろうか。
しかも、今はこんな感じで皆さん仲良く(?)してるけど、元を正せば愛するだんな様と愛息子の命を脅かす、にっくき敵さんだった方々に。



確かに。
確かに戦ってほしくなくって、まあ、いろいろと説得に回ったりはしたが、的には必死に夫と息子を守りたかったからであったわけであり。……で、結果として敵さんの心情を汲んで同情したりもしてしまったわけなんだが。





「孫、きさま、に何をしたんだ!?」
「お、オラなんにもしてねぇぞ。なぁ、
「おろかものめっ! 仮にも夫という立場にありながら、妻にこんな顔をさせるとはっ! わが弟ながら、情けないぞカカロット!!!」
「黙れラディッツ!! 夫だ妻だと……オレは断じて認めんぞ!!!」
「ふっ、オレも最初から認めちゃいないがな。まあ、こんだけ悩ませるカカロットが相手じゃ、先は見えているな」
「あの……認めるも何も、お父さんとお母さんが結婚したから、ボクが存在してるんじゃあ……」
「「「「言うな悟飯(((クソガキ)))!!!!!」」」」





なんだか目の前で始まった不毛な喧嘩に、は再度深〜いため息を落とした。



悟空が原因じゃなくて、あなた方が悩みの種なんですよ、と。
だめだ、ちゃんとはっきり言っとかなくちゃ。
たぶん、自分のこのはっきりしない態度が、この事態を招いたんだろう。



はキッ、と顔を上げて、ぎゃあぎゃあ騒いでいる男どもに視線をやり。



「あのですねっ! どうもどっかに勘違いが芽生えたようなんで言っときますがっ!!!」



喧騒に負けないように張り上げたの高い声に、ぴたりと静かになるその場。
急に静かになると、逆に言いにくくなったりもするのだが、事が事なだけにググッと意を決したは。



「わたしは、結婚してるんですよ? 愛してるのは悟空さんただ一人ですっ。……あ、それと悟飯ちゃんも。その他の方々は、アウト・オブ・眼中! 友情芽生える可能性は無きにしも非ずだけど、恋愛感情は今までも今もこれからもぜっっっったいに芽生えませんともさっ。ピッコロさんには悟飯が大変お世話になったので感謝の気持ち、三人のサイヤ人の方々には、数少ない同胞で戦ってほしくなかったのと、その可哀想な生い立ちに同情しただけ。その辺、わかってもらわないとっ!」



キッパリハッキリ言い切った。







この発言に喜んだのは、もちろん夫たる孫悟空その人だ。
は不思議な魅力を持っていて、そのほのぼのとした柔らかな雰囲気で周りのものを虜にしてしまう。そりゃもう、老若男女どころか、動物、異性人、さらには天界人や閻魔さままで。
はっきり言って、自分がその魅力に囚われた第一号の犠牲者(こっちの世界では)ではなかろうか、と思う悟空。
そんな彼女が自分に惚れているとわかったときのあの瞬間を思い出すだけで、ほっぺたが勝手に緩みだす。




けれど!




好感を持つだけならまだしも、なぜか敵対する方々はことごとくそんな彼女にそれこそ面白いほどオトされてしまって。
いや、別には落とそうなんて気持ちはこれっぽっちもないのはわかるのだが、勝手に惚れられる自分の奥様を見て、もともとヤキモチ妬きな悟空は気が気じゃなかったりしたのだ。

そんな折の「愛してるのは悟空ただ一人(悟飯もだけど)」宣言をぶちかましてくれちゃったに、もう、なんと言うか……メロッメロの悟空さん。



「わかったかおめぇら。おめぇらがどんなにのことが好きだって、オラの『愛』にはかなわねえんだぞ。それに、はオラだけが好きなんだからな〜。おめぇら潔くあきらめろ」
「いえお父さん。お母さんが好きなのはお父さんだけじゃなくて、ボクもですよ」


ポソッと突っ込みを入れる悟飯を無視して、フフン、と珍しくも勝ち誇った笑みを浮かべて周りを見渡す悟空に向かうその他の視線は、そろいもそろって。





怒怒怒怒怒!!!といった感じで。





「孫きさまっ! なんだその勝ち誇った態度は!」
「弟のくせに、兄の女に手を出すとは! 許さんぞカカロット!」
「なんで、あんな下級戦士のカカロットに! オレは認めんっ! 認めんぞっ!!!」
「カカロットのどこがそんなにいいというんだ! サイヤ人の王子であるオレのほうが、すべてにおいて上だろう!!!」






矢継ぎ早に怒鳴り散らすやからに向けられる悟空の顔は、それはもう、爽やかで晴れやかな笑顔で。







「負け犬の、遠吠えだな♪」







その言葉に、一瞬その場に沈黙が流れた後。











「孫悟空ーーーーー!!!!!」「「「カカロットーーーーー!!!!!」」」










普段静かで穏やかな空気が流れるパオズ山に、あまりにも似つかわしくない大音量の怒声が響き渡りました。















そんな大喧嘩の原因を作った罪作りな我が家のヒロイン・ちゃんはといえば。

どんなにおモテになろうとも。
どんなに素敵な人に好意を寄せられようとも。
―――――――――一番はいつでも悟空デス。

なんて思いながら、エキサイト軍団なんか無視して一人頬を染めていました。



チャンチャン♪




















&悟飯〜

「ねぇ悟飯ちゃん。あの喧嘩は、わたしのせいなのかなぁ…」
「(元はといえばそうですが…)お母さんは悪くないですよ。お母さんの『愛してる』宣言に舞い上がって、フラれた方々の傷心を気遣わなかったお父さんの発言が悪かったんです」
「そうだよねぇ。それに、これって現実に起こるとは限らないよね?」
「そうですね。これってなんか、管理人さんの一周年を記念してのただのお遊びみたいですからね」
「………でもさ、こうやって見ると、ぶっ壊れてるよねぇ、うちの管理人さん」
「その管理人さんに好き勝手に書かれてるボクたちって一体………」



〜悟空&フラレ組〜

「ちくしょう、管理人め……。孫ばっかり贔屓しやがって」
「確かに。オレ様はフラれるためだけにあの世から連れてこられたようなものか……。ひでえ扱いだぜ」
「てめえだけじゃねえよラディッツ。このナッパ様も同じようなもんだ……。いくら脇役だからってよぅ」
「サイヤ人の王子たるこのベジータ様をこんなお遊びに使いやがって。管理人め、ただではすまさんぞ………」
「なんだよ、いいじゃねぇか♪ここはオラとのLoveA部屋なんだからよ♪これからも頼むぜ、管理人っ!」
「「「所詮ここは、管理人のやばい妄想部屋なのか………」」」




















でも、愛情だけは精一杯注いで、これからも描いてまいりますよ〜www
そんなわけで、祝!一周年☆