「よいしょっ、と!」

どん!
どん!!
どどん!!!

………なんだ? コレ…………」
「あ、悟空、お帰り〜。 うん、コレね、ブルマさんに貸してもらったのw わたし、勉強して受験して学校に行こうかなって思ってるんだ!」

いつものように修行から帰ってみれば、なんだか分厚い難しそうな本を山ほど抱え、テーブルにどさどさっと置いて意気揚々の。毎度のことながら、また突拍子もない事をいきなり言い出した彼女に、いつもの如く悟空は目が点だ。

「なんで?」
「だってさ、わたし今のところ炊事洗濯家事しかすることなくてけっこう暇だし。それに思い出してみれば、わたし学校投げ出してこっち来ちゃったからね。というわけで! 今日からわたし、受験勉強始めるから!!!」

なんだかめちゃくちゃ燃えているになんと言っていいかわからず、勢いに押されて頷く悟空。



そのころカプセルコーポレーションでは。

「受験まであと三ヶ月しかないのに…。ちゃん、本気なのかしら………」

ま、どっちにしろ暇つぶしにはなるかしら、と軽く考えているブルマであった。





ハチャメチャ! お受験騒動






その日から、の猛勉強が始まった。
最初のうちは、余った時間になにかをしたくて始めた受験勉強だったのだが、そこは真面目で単純な彼女のことだ。
やっているうちにどんどんのめりこんでいった。





「なぁ?」
「ん〜?」
「オラ風呂入ってくるけど…」
「どうぞ〜、湧いてるから。着替えも置いてあるよ」
「今日も一緒はダメなんか〜?」
「ごめん、参考書やっちゃいたいの」





机に突っ伏してカリカリとペンを動かすの後姿。
最近かまってもらえない悟空はちょっと、、、じゃなくてけっこう淋しかったりするわけで。


勉強を始めてからというもの、ご飯は作ってくれるし家のこともちゃんとやってくれてはいるけれども。
風呂は一緒に入ってくれなくなった。まぁ、以前は一緒に入ってなかったから別にそれは我慢できるのだが。それより何より。





、オラもう眠いんだけど……」
「あ、いいよ、先寝ちゃって」
〜〜〜」
「ん〜?」
「………………いや、なんでもねぇ。おやすみ」
「ん、おやすみ〜」





――――――これが、いちばんこたえるのだ。





結婚してから現在まで、そりゃもう一度だって離れて眠ったことなんかなかったのだ。
寝るときはいつも一緒だったし、別にヤラシイことなんかなくたって、となりにの体温を感じるだけで、ひどく安心するのだ。だからここ数日、抱き枕(=)のないベッドは妙に寝心地が悪い。


けれど、は今勉強にハマっちゃっているようで、頑張ってる彼女の姿も実のところものすごく好きな悟空は、「受験とかいうヤツまでの辛抱だ」と自分に言い聞かせた。




部屋を出る前にもう一度振り返り、本とにらめっこをしているを見て。





「頑張れよ。……でも、あんまりムリすんなよ」




特に深い意味はなかったのだが、天界で武道の修行をしていたときも死ぬ寸前まで頑張っていたのを思い出し、何気なくそう言葉をかけた悟空を、今まで彼に背中を向けて目もあわせず書物に没頭していたがくるっと振り返った。





「………ごめんね、悟空。ありがとう」





思えば、ここのところ悟空とゆっくり話してなかった。
昼間に悟空が修行してくるといってどこかにいっちゃってる間に家事をこなし、修行ついでにいろいろ捕ってきてくれる食するものを悪戦苦闘で料理して。
あまった暇な時間で勉強しようと思っていたはずが、気付いてみたら夜更けまで机にかじりついていたここ数日。


考えてみたら、普通怒られて当然というか、自分がされたら絶対怒るだろうコト――――例えば、気のない返事をするとか、目を見て話さないとか―――をやらかしている自分に気付き。


そんな自分に「がんばれ、ムリするな」なんて言ってくれる悟空に、申し訳ない気持ちが今更あふれ出してきて、はバツが悪そうな、困ったような笑みを浮かべた。



のその心境の変化を見逃さなかった悟空は、期待に瞳をキランと輝かせ。


「それじゃ、今日ぐれえ一緒に寝―――――――――」
「悟空に頑張れって言われると、もう! 俄然ファイトがわくってもんよ!!!」




言いかけた言葉をかき消して、強く拳を握りしめてメラメラと瞳に炎を灯らせる





―――――――――『そっち』に変化してしまったのか………。





なんというか………昔も今もちっとも変わらない、その場の雰囲気を読まない彼女に、悟空は軽く脱力し、目の前の『勉強』に思考を奪われているは当然そんな悟空の様子など気づくこともなく、「頑張るぞ〜!」と気合を入れなおしている。



再度机に向かって猛烈な勢いでペンを動かし始めたの背中を見て、悟空は大きくため息をつき、ひとり冷たいベッドに向かった。
その背中には、哀愁が漂っていた………。










それからもの受験勉強は続き。
悟空は寝る前に必ず、一抹の期待を胸に「頑張れよ」に声をかけ。
で、悟空がなにを期待しているかなんて知る由もなく、それを悟空の純粋なる「応援」だと受け止め、にっこり笑って「ありがとう、頑張るよw」と返すわけで。










そんなこんなで、やってまいりました、受験前夜。

「ん〜〜〜!!!」

一息ついたが大きく伸びをして、時計を見れば、只今10:30p.m.。


とりあえずやるべきことはやったし、復習も完璧だ。
やっぱ悟空の応援がポイント高いよね、とにんまり笑いながら、は久々に午前0時前に机の卓上ライトを消した。




お風呂に入ってすっきりし、いつもは悟空を起こさないためにリビングのソファーで寝ているけど、今日はまだ時間も早いし明日に備えてベッドで寝よう、と思いながら、が風呂場から寝室に向かうと、リビングの電気がまだついているのが目に入った。


悟空、消し忘れちゃったのかな。


そう首をかしげながら、はその部屋の扉を押し開けた。


普通の大人ならまだ起きていてもおかしくはない時間なのに、はそこに悟空がいるとは思えなかった。それもそのはず。悟空は寝るのがはやい。そりゃもう、低学年の小学生でもまだ起きてるんじゃないかって時間(九時ごろ)にはもう、熟睡モードに入っているのだ。



ついでだからなにか飲んでから寝ようと、が続きのキッチンへ向かおうと歩を進めたとき。



ソファーに寝転んで、そのまま眠っちゃってる悟空がふと目に入った。


悟空はいつも、寝るときはトランクス一枚で。
ふとんにもぐっていれば別にどうってことないスタイルなのだが、そんな格好でこんなところに寝ていたら、いかな丈夫な悟空だって風邪をひくってもんだろう。



起こすのは可哀想だけど風邪を引かせるよりはと、ベッドに促すためにソファーに近づくの瞳に映った悟空の姿。



それは、あどけない子供のような寝顔。
太い腕と足、厚い胸板。
引き締まった筋肉質な身体。



明るい中で見るその身体は、すごく、キレイで。
規則正しく上下するその胸と無防備なその寝顔に、見慣れているはずなのに、は妙にどぎまぎしてしまった。


しばらく悟空と一緒に寝ていなかったからなのか。
そういえば、この逞しい腕に最後に抱かれたのは、受験勉強を始める前……つまり、三ヶ月前。





「っ! な、何考えてるのっ、わたしってば……!!!///」





悟空の寝顔と身体に欲情するなんて、自分はヘンタイなのか!? とか思いながら、疚しい思考を振り払うように真っ赤な顔でブンブン頭を振り回し、勇気を出して、悟空の肩に手をかけた。





「悟空、悟空ってば。こんなとこで寝てたら、風邪ひくよおう!?!?」



二、三度ゆすり、声をかけたを、二本の腕がグッと抱き寄せ。
寝ているとばかり思っていたの語尾が不自然に上がり。




「寝てたんじゃなかったの、悟――――――んっ」



言いかけた言葉は、悟空の唇で塞がれた。
そのまま呼吸も奪われるんじゃないかと思うほど深く口付けられて、頭の芯が蕩けそうになって、次に感じたのは、背中に柔らかいソファーの感触。





「勉強、終わったんか?」


降ってきた柔らかい声に、潤んだ瞳を上げれば、押し倒したような状態ですぐ上にある悟空の悪戯っぽい笑みが視野に飛び込んできた。



「う……ん、まぁ。――――――てゆうか、え? え!?」



律儀に答えを返してから、遅ればせて現状を把握したのか、せわしなく瞬きをして素っ頓狂な声を上げるに、悟空は軽く微笑み返す。



「じゃあ、今日から一緒に寝てくれるだろ?」



無邪気な声と、無邪気な笑顔。
でも。
その無邪気さに、なにか裏を感じるのは、気のせいだろうか。
いや、気のせいじゃないっ!!! 





「あの、あのね悟空! 確かに勉強終わったんだけどさ、明日! 明日が本番なの!!! だから、今日までは――――――っっ!」


必死に悟空の胸を押し戻すの抵抗なんか、悟空に通用するはずもなく。
そのまま首筋に唇を寄せられ、の身体が小さく震える。



可愛い、可愛い

本当は、このまま狸寝入りを決め込んで、明日が試験ののためにベッドをあけておこうと思っていた。
ここのところ先に寝ていた自分を起こさないように気遣って、がこのソファーで寝ていたのを悟空は知っていた。だから今日は、ゆっくり寝かせてやろうと思ってここで寝ていたのだ。

でも。

風呂上りのの甘い香りに、まず理性がぐらつき。
真っ赤になって頭を振るそのしぐさは、なにか恥ずかしいことを考えているときの彼女の癖。それを目の当たりにしてさらに崩壊寸前になった理性が、彼女の白くて温かい手が自分の肩にかかったことで完璧に崩れてしまった。

深いキスで濡れたその唇も。
戸惑い揺れるその潤んだ瞳も。
自分の唇に敏感に反応するその身体も。


すべてが悟空の男の性に火をつけてしまっていることに、まったく気付いていないが。
可愛くて、愛しくて。
だから―――――――――我慢できなくなる。





「ずぅ〜っと我慢してたんだぞ? 淋しかったのに。おめぇもよく頑張ってたけどさ、オラも頑張ったと思わねぇか?」


「〜〜〜〜〜///」




試験の前夜なのに。
明日が本番なのに。
今日は早めに寝て、明日に備えなきゃならないのに!





上目遣いの悟空の甘やかな瞳と、悟空をほったらかしにしてしまったこの三ヶ月間の罪悪感を突いてくるその言葉に、声もなく見上げる真っ赤なの顔。
視線を泳がせながら、「だって…頑張れって言ってくれてたじゃん……」と呟くようにもれたかすれた声は、とりあえず聞かなかったことにして。





「な? だから、今日からは一緒に寝てくれるよな?」





―――――出た。
悟空の、的に悩殺素敵笑顔。





大好きな人の大好きな笑顔に、逆らえる方がいらっしゃるなら、見てみたいものだ。





恨めしげに見上げながらもこくりと頷くを、クスリと笑いながら抱き上げ、悟空は寝室に向かった。















そして迎えた、受験当日。
寝不足のため、目の下に隈がくっきりできていて。
なぜか体調がすぐれず、吐き気がする。





それでもなんとか、無事試験を終えて。






「どうだった? 試験……てゆうか、どうしたの? 顔色よくないわよ?」

借りた教材を返すために会場近くのカプセルコーポレーションに寄ったに、ブルマが顔色が悪くなるほどひどい出来だったのか、と心配そうに眉をひそめた。


「はぁ。試験のほうは、とりあえず八割方わかりました。多分受かると思う…んだけど、、、それより、なんか吐き気がするんですよ。昨日寝るの遅かったからかなぁ……」


試験前夜に夜更かし? といぶかしげに思いながらも、そういえばこの子の家には孫くんもいるんだったっけ、と気付き、ブルマがにんまり笑う。
八割方出来たということは、この三ヶ月間、は多分悟空をほったらかして勉強に専念していたと容易に想像がつき、その間ずっと我慢を強いられた悟空が昨夜爆発したのか、と。



ブルマ姐さん、相も変わらず素晴らしい読みだ。
というか、悟空とはあまりにわかりやすく、読みやすい。




からかってやろうかとも思ったのだが、の顔色が本気でやばかったので、とりあえず今日のところはやめておこうと断念し。


「気をつけなさいよ。たちの悪い風邪が流行ってるみたいだから」


西の都に今大流行中の風邪の噂を思い出し、そう忠告するブルマには力なく笑った。

「うん、気をつけます。じゃ、どうもありがとうございました」


ぺこりと頭を下げ、はカプセルコーポレーションを後にした。
















それからかれこれ三ヵ月後。(ぶっ飛びすぎ!) 


「悟空、ご飯できたよ〜!」
「おわっ! うまそ〜だな〜!!」



結局は学校に行っていなかった。
いや、試験は頑張った甲斐があって見事に合格したのだが。





「あっ、動いた!」
「ホントか!? どれどれ……あっ、ホントだ!! 元気だな。きっと男だぞ!」
「え〜、わたし女の子がいいんだけどなぁ…」





そう、の体調不良は、『つわり』という名の病気だったのだ。
学校に行って勉強するのもいいが、時間を拘束されてしまったらゆったりやっていた家事ができなくなってしまうし、何より目前の『妊娠』を最重要と考えれば、やっぱり学校は断念したというわけだ。






まぁでも。
合格しただけで、けっこう満足した自分もいるし、今現在、はすごく幸せな気持ちを味わっているし。
自分のお腹の中で日々成長しているお子様について、いろいろ学ぶこともある。







「腹、おっきくなったよなぁ。明日ぐれぇに産まれんじゃねぇか?」
「ふふふ。赤ちゃんは十月十日≪とつきとおか≫で産まれるんだって。ほら、ここに書いてあるでしょ?」



急に目立ってきたのお腹に手を当てながら、悟空がニコニコと笑い。
そんな悟空にやっぱり嬉しそうに笑顔を返し、広げてあった育児の本を示す





幸せだな〜、と。
笑みを交わす二人には、以前と変わらず穏やかで緩やかな空気が今日も流れている。















「でもやっぱ行きたかったな〜、学校」
「落ち着いたらまた試験ってやつ受ければいいだろ?」
「……その際はまた勉強に集中するようになっちゃうけど、それでもいい?」
「――――――やだ」





















はやすぎる展開にもはや誰もついていけないのでは!?
と思わせる(ダメじゃん!)リク夢でございました・・・。
「悟空に勉強を励ましてもらう」ハズが、なにをどうしてこんなふうにになってしまったのか。
ごめんなさいっ、やっぱり管理人はアホです。。。
優希様、趣旨ずれまくってますが、、、どうぞお許しください〜〜〜(≧人≦;)
そして様、読んでくださってThanksでございましたww