ちょっと前まで、わたしはただの一般的な高校生で。
アニメの主人公に本気で恋する少し(…かな?)おかしい女の子だった。
でもきっと、そんなわたしだったからこそ、今の幸せな現実があるんだと、そう思う。
そしてきっと、これから先なにがあっても、この道を選んだことを後悔することなんて……あり得ない。





最終章:過去・現在・未来





そういうことは、少し前からよくあった。
内面はいずれにしても、とりあえず外見は目立つ
自覚は皆無で天然おとぼけ。
そんな彼女は「好きです」の言葉にきょとんと首をかしげ、それから困ったように眉頭を下げ。

答えは、決まって同じ―――――――――『ごめんなさい』
理由も、決まって同じ―――――――――『好きな人がいます』


好きな人がいるけれど、その人は絶対に自分を見てくれることはない。
わかってる。わかってる……けど―――――――――自分の気持ちを誤魔化して付き合うことなんてできない。
それに、こんな自分のどこがそんなにいいんだかはわからないが、とりあえず彼らは想いを伝えることができて、答えを出すことができる。それが、わたしには……できない。
『ごめんなさい』『好きな人がいます』を繰り返すたび、振られた当人よりも落ち込んで泣きべそをかくに、告白なんかして悪いことをしたな、と罪悪感を感じた男子がいったい何人いたんだろう。



そういうことがあった日は決まって、友人のため息交じりのお説教が始まるのだ。
すなわち、「現実逃避なんかしてないで、早く目を覚ませ」。


「どぉしてアンタはそうなのよ! この前のだって今朝のだって、けっこういい線いってたじゃない!」
「でもさ………話したこともないしよく知らない人に言われても…イマイチ実感湧かないっていうか……」

机をバンバン叩きながらの講義に、は頬杖をついていた腕をその机から離して、上目遣いに友人を見た。
そんな彼女の表情は、同性から見ても可愛らしいと思ってしまうくらい。
確かに涼しげな瞳と筋の通った鼻、艶やかな唇を小顔にしっくりと配置させているは文句なしの美人ではあるけれど、それより、内面からくるほんわかした雰囲気が可愛くて。
自覚さえあればもう少しは現実を見てくれたのではないか、と思いながら、友人は苦々しく息を吐き出した。


「アンタだってさ、会ったことも話したこともないのを好きだって言ってんじゃんよ………」
「だ、だけど! わたしは悟空のことよぉくわかってるもんっ!」
「なんで『悟空』かねぇ? アニメの主人公だよ、あれは」
「わたしにだってわかんないよ…。なんで、悟空なんだろうなぁ」


しゅ〜ん、と本気で落ち込むの様子に、友人は軽くため息をついた。



逢いたくて逢いたくて。
そんなこと、現実になんてあり得ないことだってわかってるのに、気持ちは募る一方で。
夢でもいいから逢いたいと思って、それなのに、本当に夢で逢えて目が覚めれば、やっぱり現実にこんなことは起こらないんだと思い知らされて―――――――――胸が、軋んだ。





どうして、こんなに好きなんだろう。
架空の人物だってわかってるのに、どうしてこんなに心を惹かれてしまったんだろう。



いつか………この苦しくて切ない気持ちは、消えてくれるんだろうか。
悟空よりももっとドキドキさせてくれる人が、現れたりするんだろうか。









――――――――――――それは、ちょっと前の、悟空に出逢う前の、本気で悩んでいた自分の記憶。

















そして、今。






! おい、悟飯が小便したぞ! 早く来てくれ!!!」
「おしっこ? 悟飯ちゃんオムツしてるのになんでわかったの、悟空?」


慌てふためく悟空の声に、この日三度目の洗濯物(赤ちゃんが生まれたら汚れ物がものすごく増えた)を干していたは小走りに家の中に戻る。



「いや、泣いてたからオムツ替えてやろうと思って取ったらさ、しちゃったんだよ、オラの手に!」
「―――――――――なんで手で受けるのさ。オムツで押さえればよかったのに」


悟空の両手の中には確かに赤ちゃんのおしっこが収まっていて、それを見たが軽く額を押さえた。
いきなりおしっこを飛ばされて焦っていたのはわかるけれど、何故に手で受け止めようと思ったのかがはなはだ疑問だ。



ふぎゃーーー!と顔を真っ赤にして泣くわが子を抱き上げて、はポンポンとその背を叩きながら。


「まったくおもしろいパパですね〜。そんなパパがママは大好きなんですよ〜」


手の中にある液体を窓から外に捨てて手を洗いに行く悟空を見ながら、はクスクスと笑った。
どういった結果であれ、悟空が育児に積極的に参加してくれることが嬉しい。
赤ちゃんをあやしながら穏やかに笑うのおっとりとした心が伝わったのか、悟飯はぴたりと泣き止んだ。

「よしよし、いい子ね〜」と悟飯を抱っこするを見て、戻ってきた悟空がぷくっと頬っぺたを膨らませた。



「なんでだと泣き止むんだよ。オラが抱っこするとすげぇ怒るんだぜ、こいつ」
「なんででしょうね、悟飯ちゃん? パパがむくれちゃったよ」



顔を真っ赤にして、こんなちっこい身体から何であんな大声が出るんだろうと思うほど泣き喚いていた悟飯が、の腕の中できゃこきゃこ笑っているのが、どうにも面白くない悟空である。――――――それに加え。





「わっ! や、ちょっと悟飯? おなか空いちゃったの?」


自分の親指をくわえ、空いたほうの手での胸をむにむに弄っているわが子を見て、悟空はパッとから悟飯をかすめ取った。



「悟飯! あれは父ちゃんのだぞ! 勝手に触っちゃダメなんだぞ!!!」
「ちょ…っ! な、なに言ってんの悟空さんっ!!!///」





真っ赤になってうろたえるなんか完全無視して、悟空は大人気なくも悟飯をにらむ。
赤ちゃんが母親のおっぱいを欲しがるのは、生きていくうえで当然過ぎるくらい当たり前のことだ。でも。
今まで独り占めにしてきたものを、子供が産まれてからというもの、『それ』は完全に悟飯のものになってしまっていて。
――――――わかっちゃいるんだが、面白くないものは仕方ない。



母親から引っぺがされて、あまつさえ急に大きな声を上げられた赤ちゃんはといえば。
きょとん、とビックリしたような表情で、面白くなさそうな自分の父親を凝視して。
それから、クシャリ、と顔をゆがめた。



ふぇ……ふえ〜〜〜〜ん!!!ふぎゃーーーーー!!!!!」
「泣いたってダメだ! 腹減ってんならオラがなんか食わしてやる! 母ちゃんのおっぱいはもうおしめぇだ!!!」
「おしまいって……悟空っ! 悟飯ちゃんはまだ産まれてからやっと半年すぎたくらいなの!!! 離乳食は食べてるけど、おっぱい卒業は早いってばっ!!!」
「だったら、牛乳とかでいいじゃねぇか!」
「悟飯が飲んでくれないと、わたしだっておっぱい張っちゃって痛いんだよっ! お父さんなんだから、変なヤキモチ妬かないでよっ!!!」



自分の子供にヤキモチを妬く悟空も、それはそれで可愛くてズッキュ〜ンと胸がときめいちゃうけれど。
事は可愛いわが子の死活問題。

エキサイトしまくる悟空につられ、これまたエキサイトを促される
目の前で繰り広げられる激しい言い合いに、悟飯は泣き止んで、ぽかん、とそんな両親を見上げている。



「赤ん坊だってオラの子だって悟飯はだ! 妬くなってほうが変じゃねぇか! そんなに痛ぇんなら、オラが飲んでやる!」
「悟空の………どアホ〜〜〜〜〜!!!!!///」



悟空の爆弾発言投下で、どっか〜ん、と噴火したは。
疾風のごとく素早く悟飯を悟空から掻っ攫い、ふわ、っと自分の胸に押し付けて。




「まったくもうっ! よくも恥ずかしげもなくそんなこと/// しょうがないパパなんだからっ!」



軽くにらんでから悟飯に視線を落としたに、悟空はカクリ、と肩を落とした。

は………オラより悟飯が好きなのか…………?」
「――――――――――――――――――……………………は?」


予想だにしなかった質問を投げかけられて、思わず悟空を見返したの視線の先。
今にも泣きそうな、ウルウルと瞳を潤ませた、悟空の視線とぶつかった。



19歳にもなろう男がなんて顔してるんだ(しかも、自分の子供にヤキモチを妬いて)、とも思ったけれど、その捨てられた子犬のような淋しそうな瞳の色に、なんだか切なくなってしまって。
なんていうか…………の胸もじんわりと熱くなってくる。悟空につられて、まで泣きそうになる。



「そんなこと、ないよ。悟空も、大好き。だから……そんな顔、しないでよ」


思いっきり涙声で言ったその言葉に、悟空はちょっと安堵したように瞳を和ませ、上目遣いにを見た。



「じゃあ、今度、のおっぱい飲ませてくれっか?」









どうして。
どうしてそこまで乳にこだわるんですか悟空さん。





「―――――――――そんなえっちいの、、、悟空じゃないーーーっ!!!」



恥ずかしいやら腹立たしいやらで顔から火を噴きながら思わず感情のまま叫んでしまったら、またしても悟空は泣き出しそうな顔をして。



「悟飯には飲ませてオラにはくれねぇなんて、おかしいじゃねえか。やっぱりは、オラより悟飯のほうが……」
「おかしいのは悟空さんの考え方ですっ。悟飯はわたしの息子として愛しいの。悟空は大事なだんな様として愛してるのっ!わかってよ〜〜〜っっ」



悟空にしてみれば、純粋に対等に扱ってもらいたいだけであって、えっちいとかそんな疚しい思いは毛頭ない(はず)のだが、にしてみれば、息子が乳を飲むのはそれが生きる糧だから当たり前なのに、どうして夫がそれを嫉妬するのかが理解できないわけであり。





そんな不毛な言い合いを涙ぐみながら続けていた二人だったのだが。










「まんま………ぱぅぱ………」

「「…………え?」」










聞こえてきたその単語に、それまでにぎやかに言い合っていた悟空とは、仲良く同時にきょとんとハモった。
の腕の中、それまでほっぽっていた我が子(もはや親失格)が、自分の両親の顔を交互に見上げてニコニコと笑っているのに気づいて。



喧嘩(というのだろうか?)していたのなんかどこかに吹っ飛び、二人してじぃ〜、と悟飯を見つめ、それからお互い顔を見合わせた。





「―――――――――なぁ、今、コイツ………」
「………ママ、パパって言った…よね悟空……………」





今まで、いわゆる「おかたり」なる音を発するだけだった赤さんから飛び出したふたつの単語。
その単語を聞いて、呆然と言葉を発する二人が、次の瞬間、顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべた。





「ママってママって、わたしのこと??うわっ!なんか照れちゃうっ/// ねぇ悟飯ちゃん、もう一回言ってみてっ!」
「パパって、父ちゃんのことだろ? オラが父ちゃんかぁ///」



父親だ母親だと薄く自覚はしていたが、実際言われてみて初めて感じるこの気持ちはなんだろう。
照れくさいけれど、誇らしいような―――――――――そんな、不思議な『嬉しい』の感情。



先ほどの泣きべそ顔はどこへやら。
そりゃもう満面の笑顔の二人の視線の先には、けれどの胸をやっぱりむにむに触っている悟飯がいて。










「まんま〜、ぱぅぱ〜」










――――――――――――コレはもしかして…いや、もしかしなくても。





ママ、パパではなく、『まんま(=ご飯の赤ちゃん言葉)』と『パイパイ(母乳の赤ちゃん言葉)』ではなかろうか。



「悟飯っ! おめぇ、勝手に触るなって言ったばっかなのにっ!!!」


またもや振り出しに戻る悟空の感情的な声を聞きながら、は「パパママ発言ではなかったか」と、がっくりと頭をたれた。

「はいはい。パパがうるさいから離乳食作ってあげるね。悟空、ちょっと抱っこしてて」



脱力しながらも、生まれて初めて発した言葉が「腹減った」の意味合いであるあたりがなんとも悟空の息子らしいと思いつつ。
ヤキモチ妬いている悟空と言い合ってても堂々巡りだと判断したが、悟飯を悟空に託したが、母親の腕を離れたとたん、またまた「びええええ!」と怒ったように泣き出す悟飯。





〜〜〜」
「ヤキモチ妬きさんな悟空が悪いんでしょ。なんとか頑張れっ、パパvv」


にこっとハートマークが飛び出しそうな笑顔を悟空に向けてキッチンに向かうの背中を、悟飯の泣き声と一生懸命にその赤ちゃんをあやす悟空の声が追いかけてきた。





クスクス笑いながらそれを聞いた後、は大きく伸びをして。


「よしっ! やりますかっ!」


いつものように気合を入れて腕まくりをし、包丁を握るその表情は、これまたいつものように戦闘体制・臨戦状態と同様にきりりと引き締まっていて。

それがこの家庭での食事作りの大変さを物語っていた。




















そんなふうに、毎日がドタバタでハチャメチャで。
時折困ってしまうことや、いろいろと大変なことも盛りだくさんな今現在。
でも、一日一日が、かけがえのない宝物だと感じてしまう。

愛してやまない人がいて、その人が自分を愛してくれていていて。
実りを結んだ新しい命を、まぁ、やきもちも妬くけれども、同じく愛しいと感じてくれているのが伝わってくる。





そんな毎日が、幸せ。















悪戦苦闘の離乳食作りと、ついでに自分たちの食事作りを終えて、ゼエゼエする息を整えるために一息ついて。
ふと気づいたら、さっきまでぎゃーぎゃー泣いていた悟飯の声が聞こえない。
不思議に思って悟空と悟飯を残してきた部屋に戻れば、そこにあったのは悟空が悟飯をベッドに寝かせて布団をかける姿。



「あれ? 悟飯寝ちゃったの?」


せっかくご飯つくったのになぁ、と苦笑するを振り返り、悟空はにっと笑う。


「へへ。どうだ、オラだってちゃ〜んと悟飯を寝かせられるんだぞ」
「――――――てゆうか、はじめてじゃん? わたしがいないのに寝かせられたの」


得意げな悟空の様子に、はクスクス笑う。



「そっかそっか、悟飯ちゃんは寝ぐずってたんだね〜。だからおっぱいが恋しかったんだ」



すぅ、と寝息を立てる自分の赤ちゃんは、すごく、すごく可愛くて。
そっと頬っぺたに触れてみると、ぷわん、と柔らかい感触。それが、とても愛しい。


「ふふふ、可愛いな〜。自分の子ながら、絶対イイ男になるよ悟飯は。だって、こ〜んなに可愛いんだもん」


ぷにぷにと頬っぺたを突っつきながらホワンと笑う
思いっきり親バカ発揮なその発言に、悟空は「そうだな」と同意はしたものの、やっぱり少し面白くない。





が自分を愛してくれているのは、よくわかっている。けれど、同時に、悟飯を大切に思っているのも、よぉくわかってしまっている。
大人気ないと思いつつも、を独り占めにしたいと思う気持ちにはどうしても勝てない。
もちろん、悟空だって悟飯を大切に思っているし、可愛いと思ってる。悟飯が産まれた瞬間なんかもう、嬉しいやら感動するやらで飛び跳ねて喜んだくらいだったのだ。



でも、とにかく手のかかる赤ん坊。
こんなふうに寝てるときとか、無邪気に笑ってるときなんかはものっすごく可愛いけれど、一度泣き出したらもう。
なるほど、だから「赤ん坊」っていうんだなって思うほど、真っ赤になって腹の底から大声を出し自己主張し、それに振り回される
当然のことながら、一身にの愛を受けていた頃よりも、悟空にかまう時間は収縮されるわけで。



悟飯のことだって愛してるけれど、やっぱりを取られるのはいやだな、と思いながら、わが子を見るホンワカしたの横顔を見ていたら。



「悟飯は悟空にそっくりだね。大好きな人の子が大好きな人に似てるなんて、なんか嬉しいな〜」


悟空を振り返り、ふわりと広がるの笑顔に、悟空の頬も思わず緩む。
いまだ悟飯のほうを見ているを後ろから抱きしめれば、昔も今も変らない心地よい温もり。




「はぁ。シアワセ〜/// 悟空はいつも、あったかいね」
だって、いつもあったかいぞ」


心底シアワセそうに呟くが愛しくて愛しくて。
自分がこんなふうに一人の人間を深く愛することができるなんて、昔は全然思いもしなかった。





もっともっと強くなって、強い相手と戦うことがなによりも楽しくて大好きだったのに。
今でも闘うことは大好きだが、その大好きと双璧に並ぶ、を想う気持ち。








「これからも、親子三人、あったかくて幸せな家庭を築こうね」
「そうだな」


二人して悟飯の寝顔を見守りながら、穏やかに笑っていたのだが。















「なあ、オラやっぱ女の子も欲しいぞ。もうひとりくらい子供作らねぇか?」
「………悟空ってさ、サラッとものすごく恥ずかしいこというよね…///」
「だってさ、悟飯が寝てねぇとオラのことかまってくれねえんだもん」
「ぅわっ!」



くるっとをひっくり返して自分のほうに向き直らせ、その顔を覗き込めば、真っ赤になって困ったように瞳をゆらゆら揺るがせていて。
そんな顔に、悪戯心が刺激され、本能が疼きだす。



「だ〜か〜ら〜、悟飯ちゃんのほうが手がかかるんだから仕方ないじゃん。もう少し大きくなるまで、お父さんは我慢してください」
「やだ。今悟飯は寝てんもんね。起きたらちゃんと我慢すっからさ、今はオラだけ見てくれな」


―――――――――我慢してなかったじゃん。

そうは思うものの、そんな殺し文句と共に、にっこりと悩殺素敵笑顔をご披露されてしまっては、に残された選択肢はただひとつ。





「ハイ///」





はにかみ笑いながら頷くの柔らかい髪をひとつ撫で、悟空はふんわりと優しく抱きしめる。










これから先、いろんなことがあるだろう。
人生、山あり谷ありだから、哀しいことや苦しいことだって経験するかもしれない。
それでもきっと、悟空の笑顔がそばにあれば、なにがあっても乗り越えられる。


「これからも、悟空とくっついていたいな、わたし」


クスリと照れ笑いをするの言葉も、悟空にとっては殺し文句。


、愛してっぞ」


愛しい気持ちに後押しされて、少し力をこめて抱きしめる。
ホンワカした穏やかな気配をそばに感じるだけで、苦しいことなんか吹き飛んでいく。
心の底から溢れてくる想いが、どんなことにも負けない勇気をくれるから、なにがあってもへっちゃらだ。










「ね、悟空。悟空に逢えて、よかった」
「うん、オラも。が産まれてきてくれて、よかった」
「いつか、悟飯ちゃんもそんな相手、見つけるのかなぁ」


自分の言葉になんだか一抹の寂しさを覚えながら、穏やかに眠っている悟飯のほうに視線を流したの顔を両手で包んで、自分のほうを向かせる悟空。


「今は、オラのことだけ見てろって言ったろ?」

にっと笑う悟空に笑顔を返し、その広い胸に顔を埋めた。















どうしてこんなに好きになったのか。
どうしてこんなにも心を惹かれてしまったのか。

悟空と出逢う前、幾度となくそう思った。
適当なところで手を打て、現実逃避も大概にしろ、と、何度もそう言われ、それでも折れてくれなかったこの想い。

あの日、あの時こちらの世界に迷い込んで、こちらの記憶はなくしてしまっていたけれど。
それでも消えなかった、『悟空が好き』という想い。
















今思う。
貴方のいるこの世界が、確かに存在していて、だからこそ。
こんなに惹きつけられたんだ。すべての記憶が消えてしまっても、絶対に忘れられないほどに。




















先のことはわからないけれど、ずっと、愛し合っていける。
どんな未来が待ち受けていても、この気持ちだけは変わらない。

過去の自分があったからこそ、今のこの幸せがあって。
だから未来だって、そうそう悪いものじゃないと思うから。










「これからも、よろしくな」「これからも、よろしくね」





重なった声に小さく笑いあって。
















――――――――――――――静かに目を閉じたに、悟空は優しいキスを送った。





















そんな感じで、Happy Life 完結です。
原作とはまったく関係のない管理人の妄想爆走激にお付き合いくださってありがとうございましたww
次回より、いよいよサイヤ人編に移行しようかな…と。(次回がいつになるのかしら;;)
妄想&構想練って新たに出発しますですっ!
というわけで、また遊びに来てくださいますと踊りながら両手を広げてお迎えいたします〜w