「なあ、ここはどこなんだ?」
「悟空がわかんないのに、わたしにわかると思う?」
「そうだよなぁ。じゃ悟飯、ここはどこだ?」
「バブゥ〜」
「………悟空さん、悟飯ちゃんはまだお話できません。まじめに悩んでる?」
軽くにらんだの顔。
そんな顔もかわいいな〜、なんて余裕こいてる悟空はさておき、は本気で困っていた。
ある日のお話 *前編*
事の起こりは本日の昼下がり。
ぴんぽ〜ん♪
……と、この日、孫家初めてのインターホンが鳴った。
悟空は悟飯とお昼寝中、も少しうとうとしかけていたときに鳴り響いたその音。
なにせ山奥の家ゆえか、悟空と一緒に住み始めてから約二年もたつというのに、今まで訪問客が来たことなど一度もなく、この家にもインターホンがついていたんだ、と初めて認識しただったのだが。
「は〜い」
とりあえず返事をして、玄関の入り口を開けるや否や。
「「「キャーーー!!!」」」「「「ウォーーー!!」」」
耳を劈くような突然の大悲鳴に、ビクリ、との肩が大きくはね。
家の奥からは多分それで起きてしまったのだろう、「ふぎゃーーー!!!」という悟飯の泣く声と、「なんだなんだ!?」と悟空のうろたえる声が聞こえてきて。
「ナマよナマナマ! ナマよ!!!」
「うわっ! 写真よりずっと美人じゃね!?」
「すっご、こんな細いのにどっからくんの!? あの強さ!!!」
「すっげーカンドー!!! 本物だぜ本物!!!」
なんだか大騒ぎが始まった玄関先で、あっけにとられたようにポカンと立ち尽くすの後ろから。
「なんだ? なんの騒ぎだ?? 悟飯が起きちゃったじゃねえか」
その腕に、まだ一歳にも満たないわが子を抱いて、ふわぁ、とのんきにあくびなんかしながら出てきた悟空を、わけがわからないまま振り返る。
「あ、悟―――――――――」
「「「キャーーー!!!」」」「「「ウォーーー!!!」」」
大悲鳴の第二波に、はおろか、悟空と悟飯もビクビクッ、と肩を震わせる。
「孫悟空よ孫悟空!!! 世界一強いオトコよーーー!!!」
「やっぱ近くで見るとすっげ筋肉!!!」
「素敵すぎっ!!! あ〜もうっ! 悟空をナマで見れるなんて、生きててよかった〜〜〜!!!」
「男から見ても、いい男だよなっ!!!」
それはもう、怒涛のごとくとはまさにこのこと。
興奮してまくしたてるその方々を、ただただ鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして眺めているよりほかなかったご夫婦だったのだが。
「ふぇ……っく。フンギャーーーーー!!!!!」
「「あ、悟飯………」」
あまりの迫力に一瞬泣き止んだ悟飯が、再びその大声に泣き出して、ハッと我に返り。
なおもキャアキャアウオーーーと騒いでいる見ず知らずの方々に、ご夫婦とも困ったように視線を流した。
「あの、どこのどなたかはわかりませんが…子供が怯えますのでちょっと声のボリュームを………」
「すごい可愛い声〜〜〜www もっと話して!!!」
「え〜と……」
、あえなく敗北。
「あのさ、おめえらなんかオラんちに用か? 赤ん坊が泣いちゃうからさ、ちょっと静かに………」
「わわわっ! お、俺、孫悟空に話しかけられちゃったぜ!!!」
「う〜ん、と」
悟空、同じく敗北。
テンション上がりまくりな訪問者たちの迫りくる剣幕と、異常な興奮を感じ取って泣き叫ぶ悟飯に挟まれた二人が、途方にくれた末に取った行動は。
「仕方ねえ、、逃げるぞ!!!」
「同感!!!」
悟空が筋斗雲を呼び、悟飯とを抱いて飛び乗って急発進させて。
「あっ!!! 待てーーー!!!」
「やっとこの場所見つけたのにーーー!!!」
「「「「「逃がすもんかーーーーー!!!!!」」」」」
エキサイトしまくる皆様方の追いかけてくる声を無視して逃げ出した。
で、逃げ出したはいいが。
とにかく焦りに焦ってがむしゃらに吹っ飛んでしまったために、いったいどこをどうやって来たのかもわからず。
そんなわけで、気づけば親子三人そろって―――――――――迷子の迷子の子ネコ一匹ネコ二匹。
お山の向こうにお日様が沈みかけているため、それはもう空も景色も橙色で息を呑むほどきれいな夕焼けだけれど。
悟空と二人だったら別に迷ったからといって気長に帰る道を探すこともできるけれども。
まだ赤さんである悟飯を伴い、オムツも替えの服も離乳食もない今現状、一刻も早く家に戻りたいなのである。
焦る気持ちをなんとか落ち着かせるため、すぅ、はぁ、と大きく深呼吸したは、くるりとあたりを見渡し。
「とりあえず……ここがどこなのかを確かめよう。そう、誰かに聞くとかして………って」
誰もいらっしゃいません。
それにこの風景やいかに。
緑一色の田園・田畑が地平線を作っている。
遠くに見えます高い山。
人が住んでいると思われる家が、ぽつんぽつんと広く間隔をあけて建っていて。
ここはもう、まごうことなき―――――――――どイナカ。
暗くなりかけている状況で、人一人見当たらないこんなどイナカで、どうやってこの場を好転させるかがとっても不安なはずなのに。
ここがどこかもわからないのに――――――こんなにホッとするのは、何故なのか。
「なに? なんなのこの懐かしさ……。すっごい落ち着く…」
どこかで見たことのあるような風景に、思わずこぼれる呟きと笑み。
なんのことはない、田舎育ちの自分にとってあまりになじみの深いその光景ゆえに、こんなに落ち着くんだという結論に達するまでにさほど時間はかからなかった。のだが。
フワンと嬉しそうな笑顔を浮かべて再び夕日に視線を戻したの顔が、かちり、と音がするような勢いで固まった。
につられるようにして笑った悟空が、その表情の変化に怪訝そうに首をかしげ、それから彼女が目を奪われている夕日に視線を向け、ぽかん、と口をあけた。
今にも沈みかけたお日さまが――――――――歯を、磨いていたのだ。
器用に歯ブラシで歯をブラッシングしているお日さまを唖然と見入っていた悟空とに、さらに追い討ちをかけるように。
「あれ? 見ない顔だね君たち。どこから来たんだい?」
と、そのお日さまが、声をかけてきた。
はそのあまりに現実離れした事実にいまだに固まったままだったのだが、悟空は困ったようにほっぺたをかきながらそんな太陽を見上げた。
「それがさぁ、どっから来たかもよくわかんねぇんだ。なぁ、ここ、どこだ???」
「おっと、ごめん! もう夜なんで、月の奴と交換なんだ。じゃあね」
言うや否や。
普通一般の常識として、西の山の向こうにゆっくり沈んでいくはずのそのお日さまが、一瞬にして沈没し、これまた普通一般の常識として、ゆっくりとそれに比例して昇ってくるはずの三日月お月様が、打ち上げられたかのような勢いでスポン、と空に出現。
「やあ。太陽の奴の話聞いてたよ。ここはペンギン村さ」
「ペンギン村? う〜ん……どっかで聞いたことあんなぁ」
お日さまと同じく、お月さまもしゃべってますよアナタ。
で、わたしの愛しの旦那様は、その腕に可愛いわたしの息子を抱いて、当たり前のようにそのお日さまやお月さまと会話をしておいでです………。
なんという順応力!!!
そして、なんてビックリドッキリワールド!!!
動物がしゃべることには慣れてきたが、まさか太陽と月までお話ができるなんて。
――――――――いや、今までこっちの世界で幾度となく夕日や月を見たが、そこに今起こっているような現実(目がある・口がある・手がある・話すetc)は、なかったはず。
とすると、ここはまた、別の異世界になるんだろうか…。
ショート寸前のの脳内がそんな結論に達したのと、悟空と月の会話が終わったのがほぼ同時だったらしい。
「ホラ、行くぞ」
「ぁえ? い、行くって、どこに???」
「なんだよ、おめぇさっき「そうしよう」って言ったじゃねえか」
「は?」
きょとんと聞き返すのオトボケな顔に、どうやら彼女は聞いていないにもかかわらずニコニコ相槌を打っていたらしいということに気づいた悟空は、まったく器用な奴だ、とこちらはこちらでまたずれたことを思いながら。
「あっちに警察があるんだと。オラたち迷子だからさ、警察に行って帰り道を教えてもらうんだ」
「あ、ああ、うん。そういうことね。うん、そうしよう」
納得したようにうなずいたの手をとって、悟空は月の示した方向へと田んぼの畦道をテクテクと歩き出した。
そのころ。
悟空とがこんな目に遭う原因を作った方々は。
「悟空とは、絶対ここにいるはずよ!」
「なんでそんなことわかるんだよ?」
「バカだな、あの変な金色の雲の後が、ここで途切れてるだろ? ということは」
「なるほど、この辺であの二人が降りたってことよね」
ペンギン村に降り立った数名の男女。
言わずもがな、逃げ出す二人を追跡してきたらしい。
「よし!絶対探し当てるのよ、あの二人!!!」
「わかってるさ! やっとのことで見つけたんだ、ここで諦めてたまるかよ!」
「そう。今回の俺たちの目標は!?」
「「「@ 悟空とのサインをもらう!」」」
「「「A 悟空とに触る!」」」
「「「B 悟空とのお友達になる!!!」」」
がっつりコブシを握り締め、力強く宣言するその方々の目的から察するに、どうやら二人のファンらしい。
納豆精神な熱烈ファンが「エイエイオー!!!」と気合を入れていることなど露知らず。
こんな状況にもかかわらず久々に手をつないで歩けたことに小さなシアワセを感じている色ボケ全開なご夫婦・悟空と、そして、ピンクで穏やかな空気に安堵したのか安らかに眠っている愛の結晶・悟飯だった。
続け!!!
あらまあ続いてますがなお客さん(誰だよ)
………ごめんなさい、ものっそ遅れたにもかかわらず、完結できませんでした↓↓↓
次は、ペンギン村の方々登場ですが、、、彼らのキャラをほとんどつかめてない管理人。
はてさて、どうなりますことやら。(いや、マジで不安です)
アキ様ごめんなさ〜い!!!

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