唐突にやってくる、朝。
お日さまが打ち上げ花火のように上がると同時に、豚さんが「ペンギン村に朝が来たぞ!」と村中を走り回る。

その声にホワッと目をあけたは、見慣れない景色に一瞬パチクリと瞬きしてから。
昨日迷子になって、千兵衛博士の家に泊めてもらったことを思い出した。

「おはよ、悟飯ちゃん」

キャコキャコとご機嫌で目覚めた悟飯のほっぺたに、いつものようにおはようのチュウをすれば、これまたいつものように自分を抱きかかえて眠っている悟空の腕に力が入る。
どこにいても変わらないなぁ、なんて苦笑しながら、はそんな旦那様のほうに身体を方向転換させた。

「おはよ、悟空さん」
「おはよう、

甘くきらめく漆黒の瞳。穏やかなその瞳が大好きで。柔らかなその声が、大好きで。
何年経っても、朝一番の悟空にはときめいてしまう。

近づいてくる端正なお顔。
おはようのチューをくれるこの瞬間は、ちょっと切なくて甘酸っぱくて、今だって最高に幸せな気分にさせてくれるけれど。

ここは、自分の家じゃないんだ。この屋根の下には、自分たち以外にも人がいるんだから、と。そうは思っても、悟空のこの顔には大変弱いわけで。

ああダメだ、やっぱり拒めない、勝てないや。

そんな風に思っているのがそのまま表情に出るが瞳を閉じたのを見て、悟空はクスリ、と笑って。
その柔らかい頬に手を添えて、唇を重ねようとした、まさにそのとき。

「悟空くんちん悟飯くん、んちゃーーー!!! 早く起きて雲に乗っけてちょ!!!」
「だ、ダメですよアラレさん!!!」

どばーーーん!!!

と扉を豪快にぶち開けて、追いかけるように駆けつけてきたオボッチャマンの静止など聞く耳持たずでアラレ乱入。

キス寸前のその格好のまま固まる悟空とを視野におさめるや否や、とても二十歳とは思えない純情少年そのままの反応を見せるオボッチャマンが顔を真っ赤にして。

「大っ変失礼いたしましたーーー!!!」
「なしてーーー!?!?」

天真爛漫すぎる妻を引きずって、その部屋から超高速で走り去った。







ある日のお話*後編*







本日もお日さまニコニコいい天気。
――――――ほんとうに歯を見せて笑っているお日さまは、やっぱり違和感があるものだが…。



朝食を済ませた後、「雲に乗せてちょ!」と目を輝かせて訴えるアラレに引っ張られるようにして、千兵衛とミドリ以外は外に遊びに出かけた則巻家。

千兵衛はいつものように研究室にこもり、なにを作っているのかはわからないがドンチャンビビビッと発明品の製作に取り掛かり、ミドリは掃除洗濯をしていた。





「しっかし……今まで生きてきた中で初めてだったなぁ、あんな可愛い子見たのは…」





アラレがなにをやらかしたのかは知らないが、それこそ露出してるところを真っ赤に染め上げて起きてきて、なんだかよくわからないが必死に「ごめんなさいすみません申し訳ありませんこの非常時にわたしってばマジあほんだらです〜〜〜!!!」と誰にともなく頭をぶんぶん上下させるの様を思い出し、ポツリ、と千兵衛がこぼす。



顔ももちろん可愛いけれど、ふわっとした雰囲気も、ぜんぜん飾らない態度も、ほんとに無垢で。

とても、男を知っているとは思えないし、ましてや一児の母だなんて、目の前で子供を抱いていたって信じられない。





「それは、ちゃんのことかしら?」
「―――!? み、ミドリさん!?!?」





手を休めて、独り言のつもりで出た言葉に答えが返ってきて、驚いて恐る恐る振り返れば、そこにはお茶の用意をしてきたミドリが立っていた。
いや、自分の妻とてペンギン村で1、2を争う超美人で、なおかつそれを鼻にかけないおっとりした性格で、自分はそんな彼女にベタ惚れしているわけだが、突然目の前に現れた美少女に目を奪われてしまうのは、哀しきかな、オトコのサガだ。



「い、いえね、一番はミドリさんですとももちろ」
「あら、別に怒ってるわけじゃありませんのよ。私もあの子はとっても可愛いと思ってますし、それに、夫も子供もいる人にいまさらヤキモチなんて妬きません」



焦りどもる千兵衛ににっこり笑いかければ、ほっとしたように胸をなでおろす夫である。



「悟飯くんもいることですし、早く帰る方法がわかればいいんですけど…」
「そうですね…」





仲良くお茶を飲みながらそんな会話をしていた夫婦の耳に、玄関のほうから呼びかける声が聞こえてきた。






「ごめんくださーい!」






「誰か来たようですわね」
「郵便屋さんかな?」



よいしょ、と立ち上がった千兵衛が玄関に向かい、「はいは〜い」と返事をしながらドアを開けると、そこには数名の男女のグループが。



「どちらさんですか? 見ない顔だけど……」



怪訝そうにその方たちを見回す千兵衛に、それぞれ顔を見合わせて突っつきあった後、一番前にいた女の子が口を開いた。



「えっと、ですね。。。ちょっとお伺いしたいのですが、昨日の夜くらいに、めっちゃ可愛い女の子と、すっごい筋肉の男の子がこのあたりに来ませんでしたか?」
「あら、ちゃんと悟空くんのことじゃないかしら? ねぇ、千兵衛さん?」


後ろからやってきたミドリの言葉に、千兵衛よりも先に色めきたつその方々。



「そう! そうです、悟空とです!!!」
「ここに来たんですね!?」



ぱぁ、と明るい笑顔になり、キャイキャイ騒ぎ出すグループに、千兵衛とミドリは顔を見合わせて首をかしげあってから、そこに視線を戻した。


「ええ、迷子になったとかで昨夜はうちに泊まっていきましたけど。あなたたちはいったい――――――」
「「「「「泊まったーーーーーー!?!?!?」」」」」



声をそろえての大絶叫に、則巻夫妻はビックリだ。





「な、なななんて羨ましいっ!!!」
「俺たちも、この村の住人でいたかった!!!」

「困ってるあの二人に暖かい手を差し伸べてお友達になるなんて、サイコ―のシチュエーションだよねぇ!」
「いいなぁ!」





口々に述べる面々に、どうも状況を飲み込めない千兵衛とミドリ。


「えーっと……で、あなた方はあの二人と知り合いなんですか?」


相手がハイテンションなので、ちょっとビビりながら千兵衛がそう問うえば。





「これからお知り合いになるんで〜す!」
「俺たち、あの二人のファンなんで〜す!」








ファン………って。








「――――――まぁ、ちゃんも悟空くんも素敵なカップルですけど、まさかファンクラブがあるなんて」



呆然とつぶやくミドリに、そのグループのひとりがチッチッチ、と一指し指を振りながら答える。



「確かに顔も最っ高なんですけど。わたしたちはもともと格闘技観戦が好きで集まったグループでして」
「「格闘技?」」
「はい。で、三年に一回開かれる天下一武道会っていう大会があるんですけど、その大会であの二人を一目見て気に入って、それから戦う姿を見て一致団結でファンクラブ結成したんですよ」



ほお、と、とりあえず納得した夫妻だったのだが。





悟空は、わかる。
筋肉でかちこちの手足に、厚い胸板。一目見て強そうだ。



「孫悟空は、今回のその大会の優勝者でね〜」
「確かに強そうな身体してるけど、ぜんぜんそういうの鼻にかけないし、笑顔全開で可愛くって!」
「普段穏やかな感じだけど、キリッとしたとこなんかは男でもゾクッてするほどかっこいいんですよ!」 



なるほど、さすがファンを名乗るだけのことはある。悟空の特徴をよく捕らえている。





「でもちゃんは……」



ちょっと殴られたり蹴られたりしただけで折れちゃうんじゃないかってくらい細っこい華奢な身体、見た感じにどこもかしこも柔らかそうで、とても格闘技なんてできるとは思えない。




千兵衛もミドリも、同じことを考えていたのだけれども。



「そうなんですよ! そのギャップが最高なんですよ彼女は!」
「とても闘えそうにない上に、こっちが守ってやりたくなっちゃうような細い線と激マブ顔!」
「それなのに、もう、すっごい強いんですよ彼女! 格闘技っていうとオトコって感じだったけど、そんな概念ふっ飛ばしてくれちゃいました!」



とても信じられないが、鼻息荒く捲し立てるその方々の興奮度からいって、多分現実なのだろう。








話しているうちにだんだんエキサイトしてきたのか、口々に悟空とを褒めちぎるファンクラブの方々。
それを呆然と、しかし感心しながら聞いている千兵衛とミドリ。



ひとしきり大騒ぎして落ち着いた面々は、興奮しすぎて弾んでしまった息を整えてもう一度則巻夫妻に向き直り。





「そういうわけなんで、あの二人の行き先、教えてもらいたいんですけど!!!」





………想像だけでこんだけテンションをあげられるんだ、本人たちに会ったら火に油を注ぐような気がする…、と少々心配だったのだが、教えなければ命をもとられるんじゃないかってくらいの興奮状態の方々と、とりあえず二人のところには幸いにもアラレとオボッチャマンもいることを思い出し。





「あのへんで遊んでると思いますよ」





みんなして連れ立って行った方向を指差す千兵衛だった。


















一方、こちらは筋斗雲に乗ってご機嫌の方々。



「わ〜い! う〜ほほ〜い!!! 気持ちいい〜♪」
「本当、気持ちいいですね〜♪」
「クピプペポ〜♪」
「落っこちんなよ〜!」



悟空が操る筋斗雲に乗せてもらったアラレとオボッチャマン、そしてガッちゃんズのはしゃぎ声を聞きながら、は悟飯を抱っこして空を眺めていた。
そのそばには、アラレに召集された友人たちがちらほらと。


「オレさぁ、あの雲乗れなかったんだよなぁ」


の隣で、彼女と同じように空を仰ぎ見て舌打ちしているポニーテールの女の子は、アラレと同級生の木緑アカネ。
ちょっとヤンキー風のアカネの隣には、中華風の服を着たまじめそうな男の子。


「ははは、あれは良い子じゃないと乗れないって雲あるね。アカネさんじゃ、ちょっと無理あるよ」

「何だよツクツン! じゃ、おめえなら乗れるってのか!?」

「そ、そうは言ってないあるよ」


噛み付くアカネにたじたじと答えるツクツン。
そばにいたやはり中華風の服を着た、お団子頭の女の子がくすりと笑った。


「ツクツンも無理あるよ。いい子ぶってるけど、けっこうシタタカあるね」

「お、言うねぇツルリンちゃん。さすが兄弟!」

「タロウさんも、無理あるね」



合いの手を入れたタロウに、すっぱり切り捨てるツルリン。







わいわいと賑やかに遠慮なく言い合う面々の会話を、くすくすと笑いながら聞いていたに、みんなの視線が集中した。





「で、ちゃんっていったっけ?」
「あ、はい。です」



ズズイ、と顔を突き出したのは、ポニーテールのアカネちゃんだ。



「おめえは乗れんのかよ? あの雲」
「乗れるに決まってるだろ! 一目でイイ子ってわかるじゃねーか!」
「そんなのわかんないあるね。顔がいいからってイイ子って決め付けるの、間違いあるよ、タロウさん」
「でも、ねーちゃん、ちゃんは僕もいい子だと思うあるよ」
「ツクツンもかよ!? あ〜やだやだ、これだからオトコはよぅ」



どうにもけんかが始まりそうな雰囲気に、たじたじと困ったように首を傾げるに向かって、全員が声をそろえて。





「「「「で、乗れるのか?」」」」





一息ついて、なんだかいけないことが見つかったような子供みたいな表情で。



「――――――――― 一応、乗れるってことになっているようです……」



と、うつむきがちに言ってから、は突然、ババッと顔を上げた。



「で、でも! 別にわたし、イイ子ってわけじゃないと思うんですよねっ! けっこうわがままだし自己中なとこだってあるしヤキモチ妬きだし頑固だし負けず嫌いだし!!! こんなわたしを筋斗雲が乗っけてくれるのがものすごく不思議で仕方ないんですよ。だからいつも、筋斗雲がわたしを乗せてくれたときは、ありがとうと大好きを伝えてます!!!」





雲に向かって、「ありがとう」と「大好き」を……。





力強くこぶしを握りながら力説するその様子をあっけに取られながら眺めていた皆様が、一同納得する。
自分たちはその不思議な雲を、空を飛ぶ道具としてみているが、の思考回路の中では生き物、しかも言葉の通じる高等生物となっているらしい。

考えてみれば、今、空を飛んでいる勝ち組(?)は、そろいもそろって筋斗雲イコール友達wみたいな感じだ。





なるほど………それが決定打なのか!!!





顔を見合わせてガッつりとうなずきあう面々を、不思議そうに見やっただったが。
その方々のはるか後方、何人かのグループがこっちに向かって猛ダッシュしてくるのが視野に映り、いぶかしげに目を細めた。





「………あの人たちも、お友達ですか?」



ことり、と首を傾けるの視線を追って、その場の負け組み(?)が自分たちの後方に目を向ける。





「……いや、見ない顔、だよな」
「うん、知らないあるね」
「珍しいあるね、ペンギン村に村民以外の人が大勢来るなんて」
「ああ、確かに」



口々に言い合って首をひねっている面々の耳に、なにやら黄色い声が聞こえ始め。
そのグループが近づくにつれてはっきりと言葉になるその叫び声に、目に見えてが固まった。



「おい、ちゃんどうし―――――――――」
「「「「「見つけたぁーーーーー!!! ーーーーー!!!!!」」」」」



ビクビクビク!!!





はもちろんのこと、その場の全員の心臓がその大声にドッキーン!!!とひときわ大きく跳ね上がった。










このキンキン声。
この異常な興奮。
極めつけは、この狂気交じりのすさまじい迫力。










追ってきたのか!!!!!










空高く舞い上がっている悟空はまだ彼らの視界には入っていなかったが、もう一人の標的はハッキリバッチリ目に収まっていた。



怒涛のごとくダッシュをかまして近づいてくる皆々様を、棒を飲んだように動けずに突っ立って眺めていたが、殺気紛いの気配を気取った悟飯が泣き出したことで、我に返り。





逃げなきゃ!!!





と、くるりときびすを返して、こちらも全速疾走を開始。









「キャーーー!!! が逃げたわよーーー!!!」
「大丈夫!!! オレが開発したこのハイパースニーカーなら、のスピードにもかろうじてついていけるはずだから!!!」
「よし!!! 絶対見失うなよ!!!」
「合点承知の助よ!!!」
「でも悟空は!?!? 悟空はどこにいるの!?!?!?」
「二兎を追うもの一兎も得ずだ!!!
 まずは目の前の獲物を追ええぇええ!!!」
「「「「「よっしゃーーーーー!!!!!」」」」」










悟飯を抱きかかえ、風のごとく走り去ったに続き、目の前を神業的なスピードで突風を生み出しながら疾走していくエキサイティングな方々に、アカネ、タロウ、ツクツン、ツルリンは呆然とその風に煽られるままになっていたが。
突風がやんで、声も遠ざかって静かになると、ポツリと一言。



「助けたほうが、よかったかな」
「助けたほうがいいだろうけど、俺たちに助けられると思うか?」
「すごい、人たちに追われてたあるね、ちゃん」
「可哀想だけど、死にたくないある……」



心の中で謝罪しつつ、「どうか無事で!!!」と祈るその場の皆様。
自分たちはきっと、一生筋斗雲には乗れないだろう、とあきらめていたとか。















で、こんだけ全力疾走しているにもかかわらず。
悟空でさえ、自分の全力疾走にはついて来れないはずなのに。
なぜか、自分を追ってくるわけのわからない集団を振り払えず、は輪をかけて焦っていた。

後ろから狂気を伴うすさまじい執念を感じ、腕ではそんな殺気を敏感に感じ取った悟飯が泣き喚いていて。どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだ! と涙目になりながらも必死で逃げる



一方、追いかけるほうのファンクラブは、機械が壊れるほどのスピードを上げているにもかかわらず、との距離がまったく縮まらないことに、驚愕度と萌え度がぐんぐん上昇してしまう始末。










しかし。










熱烈エキサイティングと、悟飯号泣の挟み撃ちにあっていたが、限界突破でプッツンするのにそんなに時間はかからなかったらしい。










「もう、アッタマきた」








短く声に出して言った後、急停止して後ろを振り返る。
ギラリと鋭い眼光には、臨戦状態にみせる炎が宿っていて。





「いい加減に………しろ!!!!!」





悟飯を空高く放り投げ、右のコブシに気を集中し、怒りに任せて地面にその気を放った。






どおおおん!!!!!






地響きと地震をその身に感じ、追っ手は次々に転倒。
見れば、地面には大きな亀裂が入っていて、底が見えないほどに抉れている。



そんな常識破りなことをやってみせた目の前の人物は、細い肩を上下させてハアハアと息を切らし、落下してきた自分の息子を器用にキャッチして、シ〜ン、と静かになった転倒している追っ手たちを一睨みした。

ぶん投げられた悟飯のほうは、さすが悟空との息子というか……それが楽しかったらしく、キャコキャコとご機嫌で笑っていたりするが、睨まれたファンの方々は、ちょっとビビッてしまっていた。







「あ、あの、、、、さん、怒らないで……」
「無理」



おずおずと言いかけた言葉を、一蹴する静かな声。



「どこのどなたかは知りませんけど、ちょっとやりすぎです。わたし、追われるようなことをあなた方にしましたか?」



どこまでも静かな声が、余計に空恐ろしい。
地面を割ってみせた彼女の力を、わかっていたはずなのにどうして追い詰めてしまったのか、といまさらながら後悔してしまう。



「い、いえ…。なにも。ただ……さんが逃げるから………」


上目遣いにおどおどとそう言ったグループの一人に視線を向け、は小さくため息を漏らした。


「あんなに興奮して、殺気交じりのすごい迫力で追いかけられたら、誰だって逃げますよ。子供泣いてるのに、まったくお構いなしで奇声発するし。何でそこまでして――――――」
!!!無事か!?!?!?」
「あ、悟空」










完全に据わっていた目が、筋斗雲に乗った悟空の姿を捉えたとたん、穏やかな光を宿した。
それに伴い、緊迫したその場の空気も、フワン、と和らぐ。






アラレたちを筋斗雲に乗せ、ひとしきり飛び回ったあとに着地してみたら、の姿がなく。
状況を説明するタロウたちの話を聞いて、ががむしゃらに走っていった方向を教えてもらって大慌てで筋斗雲を急がせて、その無事な姿にほっとしたのだが。






「………、おめえ……」

「…あはw ちょっと、、、キレちゃった」



筋斗雲から降りた悟空が地面の亀裂に気づき、テヘヘ、と頭の後ろに手を乗せて笑うの額を軽く小突いてから、転がっている数名に視線を向けた。





「あのさぁ、何でオラたちのこと追っかけてんだか知んねえけどよ、こいつを追い詰めんのはやめたほうがいいぞ?下手すっと殺されちゃうぞ」
「やだ! さすがに殺人はしないよー」



咎めるように悟空を見るは、今は、ただの超可愛い華奢な女の子に戻っているけれど、先ほどの怒れる彼女の姿を見た皆様は。










悟空の言葉は、ただの脅しじゃない!!!










と、身をもって感じたわけであったりする。










けれども。



「で、どうしてわたしたち、追いかけてたんですか?」


と問いかけてくるは、ホワン、と穏やかないつもの彼女だった。
先刻までの鋭い気配とは180度違うそのやわらかい笑顔を向けられた方々は、学習能力を駆使して興奮して高鳴る胸を一生懸命押さえた。





「あ、あの! わたしたち、悟空、さんとさんのファンなんです!!!」
「「ファン???」」
「そうです! だからそのっ! お友達になってもらいたくてっ!!!」
「お話したくて、握手したくて、サインしてもらいたかったのに、ナマで二人のこと見たらもう、興奮でそれどころじゃなくなっちゃって!」
「ほんっとうにすいませんでしたっ!」
「そういうわけなんで……」



そこで一瞬言葉を切ったファンたちは、イマイチ状況をわかっていないお惚けカップルを、キラッキラした瞳でしかと見つめて。





「「「「「握手してくださ〜い!!! サインくださ〜い!!!」」」」」





声をそろえて、キャイキャイウオー、と二人を取り囲んだ。
――――――声のボリュームを、できるだけ抑えて。



















そして、帰ってきましたパオズ山。



なりふり構わず走ったのおかげ(?)で、悟空がようやく見覚えのある景色を見つけて、やっとのことで竹やぶの中の自分の家にたどり着いた孫一家。


「うん! やっぱり自分の家が一番だねっ!」
「一日ぐれーだっただろ?」
「そうだけど。でもやっぱ、自分の家が一番落ち着くよね〜、悟飯ちゃん」
「ばぶ〜」


ね〜、と悟飯を抱っこして笑うに、悟空はにっといたずらっぽい笑みを向けて。


「そうだな〜。自分ちだったらとチューするの、邪魔するヤツいねえしな」

「………なんでそういう恥ずかしいこと、さらっと言えちゃうんだろうね、悟空さん///」



真っ赤に染まったのほっぺたを撫でて、やっぱりオラの奥さんは可愛いな〜、とシアワセを感じる悟空だったとさ。




















一方こちら、ペンギン村。


「ね〜、悟空くんたち、どこ行っちゃったんだろね〜?」
「そうですね〜。無事に帰れてればいいんですけど……」
「「無事でいることを願うよ………」」
「「そうあるね………」」




















戻れ!!!


やっとこさ終了〜。
長くてすいませんっ!大変お疲れ様でございました☆
アキ様…謝罪の言葉もございませんです↓↓↓ これに懲りず、また遊びにいらしていただけると嬉しいです…
様、長らくお付き合いいただきまして、ありがとうございました!