悟空との突っ走る恋愛劇(?)を目の当たりにし、見せ付けられたことに少々羨望を感じながらも、真っ赤になってうろうろと視線をさまよわすがあまりに初々しく、可愛くて。
こわごわと自分たちのほうに向けられたその潤んだ瞳が、妙に悪戯心を刺激する。
それは、飛び跳ね喜ぶその片割れがやらかしたのであって、別に彼女に非はないし、まぁ、幸せそうなあのときの表情には妬けるけれども、それでも彼女は悪くはないのだ。むしろ被害者なのだ。
そう、わかってはいるのだが。
――――――どうにも、かまいたくなってしまう仲間たち。
全員が全員、その感情に促されるままのニヤ〜、とした笑顔を浮かべ。
その笑みに、びくりとおびえたように肩を震わせたが、いまだ立たない腰のまま、そろり、と後ずさった。
最終章:Sweet Love
「あ、あのっ!! はいっ、、、スイマセンごめんなさいわたしが悪かったっ!!! えと、えぇと〜〜〜、わ、わたしなにも話すことありませんっ!弁解の余地もありませんっ! だから……来ないでぇ〜〜〜!!!」
真っ赤な顔を左右にこれでもかというほど振り回し、迫りくる好奇の笑顔に別に悪くもないのにひたすら謝りながらじりじりと後退さる。
「あらぁ、ちゃん。謝ることないのよ? 別に悪いことしたわけじゃないし? ただちょっと、見せ付けてくれちゃっただけなんだから。それに〜、ちゃんが話すことなくても、こっちは聞きたいことが盛りだくさんなのよね〜v ねぇ、みんな?」
ブルマが背後の同じ空気を纏った仲間たちを振り返り、それからにっこりと、それはもうに〜っこりと、裏のありまくるキラキラ笑顔をに向けた。
ウルウルと潤みきったその澄んだ鳶色の瞳は、夕日を反射してきらめいていて。
爆風のせいで髪は乱れ、服だって埃まみれだし顔にいたってはその埃と涙が混ざり合ってそりゃもうかなり汚れているのに。
あまりに飾らないその性格からか、はたまたそのいっぱいいっぱいな表情からか。
やっぱりは、可愛らしくて。
――――――だから余計に、いじりたくなる。
妙に気迫のある空気に押されるように後ずさっていたの背中に、硬質なものがこつんと当たり。
(こ、これ以上………逃げられないっ)
背後が壁だと認識し、迫り寄る笑顔たちに泣きべそをかきながらのとった行動とは、言わずもがな。
「悟空!!!助けて〜〜〜っ!!!」
はい、お約束v
一方、悟空はといえば。
誰にもジャマをさせずににキスできたことと、念願の天下一武道会に優勝したことで、最高の気分でジャンピングを決めまくり、心のままに「やったー!」と叫んでいたのだが。
切羽詰ったの助けを呼ぶ声にふと我に返り、空中でぴたりと止まり、その澄んだ高い声の響いてきた方向に視線を向ければ。
そこにはゆかいな仲間たちに詰め寄られたの姿が。
「……………………どうすっかなぁ………///」
先ほどやらかした自分の所業がどれほど仲間たちの悪戯心を刺激してしまったか……。
勢いで突っ走ってしまって、もちろんそれを後悔なんかしてないが、落ち着いて考えてみればいくら熱くなっていたからといって、そしていくらガキのころからの付き合いだからといって、人前では拙かった、と今更ながら失笑してしまう。
はっきり言って、このままをかっさらって逃げてしまいたい悟空だったのだが、当のがガッツリと皆さまに囲まれガード(?)されてしまっていては、それもままならない。
しょうがねぇ。
とりあえず、をなんとか助けださねぇと。
本音を述べれば、今のテンションの上がりまくっているその方々にはあまり近づきたくないのだが、まさかこのままをほっとくワケにもいかないだろう。
ってゆうか、助け出さないとまたまたぶちキレそうなほどにいっぱいいっぱいになっている彼女に軽く戦慄を覚えながら、悟空は仲間たちととの間のわずかな隙間に割り込んだ。
「悟空っ! ふぇ〜〜〜ん」
目の前に現れた悟空の背中に、あまりの安堵感が後押しして飛びつく。
後ろから回った柔らかい腕が、ギュウッと服をつかむ。
背中いっぱいに広がる柔らかさに、思わず赤面する悟空。
「/// もう、でぇじょうぶだぞ」
回ってきた腕をぽんぽんと叩きながら、背中の愛しいぬくもりに幸せを感じてしまう悟空と、その広い背中の温かさにひどく安心して、笑顔のこぼれる。
「…………もう、大丈夫、ですって?? なにを言ってるのかしら、孫くん」
「ああ。もう、じゃなくて、これからだぜ、悟空」
二人の世界に入りかけた二人を現実に引き戻す、ブルマとクリリンのキランと光る怪しげな瞳。
かちこ〜ん、と固まる悟空と、固まった悟空を直に感じて伝染するようにそれに倣うを見る仲間たちの目は、ものすごく楽しそうで。
亀仙人「それじゃあ、始めようかの」
ランチ「おう、サクッといこうぜ」
ヤムチャ「おっと! 逃がさないぜ、悟空も、ちゃんも」
そんな皆々様方のニヤニヤ顔を目の当たりにし、顔を引きつらせる悟空とであった………。
賑やかに始まった喧騒、というか、悟空&の吊るし上げを少し離れた位置から眺める神。
その瞳は、先ほどまでの痛いほどの険しさは消え、穏やかで柔らかいものだった。
ピッコロ大魔王をみすみす逃がしてしまったことはやはり口惜しいが、自分が死ぬことを「哀しい」と、そう思ってくれる人間がいることが、今は何よりも神の心の癒しになっていた。
地上の者たちに勇気と希望を与える存在である自分が、逆に救われるなんて。
自然に浮かぶ微笑。
長年頭を悩まされ続けたピッコロの存在が消えることはなかったけれど、それでもこんなに清々しく心が晴れる日がこようとは、思いもよらなかった。
―――――――――ミスター・ポポ。
孫とは、どちらも無事であるばかりか、私の魂をも救ってくれたようだ……。
神殿を後にしてからもひたすら二人を案じていたミスタ・ーポポを思い、神が空を仰ぎ見て穏やかに微笑んでいると。
「――――――っというわけで、神様っ!!! 二人の馴れ初めを教えてくだされ!!!」
「このふたり、神殿でいちゃついたりしてませんでしたか!?」
「してねぇよ!!!!!」「してないし!!!!!」
「ああもういいのよアンタたちは黙っててくれて。ここは第三者である神様に聞きたいところなんだから!」
大興奮の悟空の師匠・武天老師さまが神に話をふったのをきっかけに、全員が二人の出逢いから神殿にいたころの様子について興味を示す。
神に対するクリリンの問いに、真っ赤になった悟空とが仲良く大音量でハモり、それを制するブルマがいて。
「ま、まぁ……馴れ初め…は、わたしの過ちにより孫を異世界に送ってしまい、そこで出逢ったを孫が連れ帰ってきてしまったというのがそもそもの始まりであったか。……ほんの2、3分の間に」
こんな話題で盛り上がっているこの状況が、何よりも『平和』を意味している。
少々呆れながらもそう感じ、ほんの一年前のことなのにずいぶんと長い月日が流れたかのように思われるあのときのことを思い出しながら、神が律儀に答えを返す。
「そういえば…あのときすでに、孫悟空はによって心を動かされていたようだ……」
顔面蒼白で、硬く目を閉じ、呼ぼうが揺すろうが反応を示さないにあわてた悟空の姿が意外だったので、印象に強く残っている。
マイペースな悟空が見せた、ショック(?)の第一波だった。
「2、3分の間……?」
「それって………誘拐じゃねぇか!!!」
天津飯が驚いたように呟き、それは絶対の許可が得られないだろう短すぎる間にヤムチャが色めき立つ。
「ち、ちが……っ!!!」
「がいきなり抱きついてきて放れないうちに神様が移動させちゃったんだからしょうがねぇだろ!?」
「だ、だって!!! ずっと好きででも絶対逢えるはずない悟空がいきなり目の前に現れたんだよ!? 嬉しくて思わず身体が勝手に動いてたの!!! それに、あのとき悟空だってギュウってしてくれたじゃん!!!」
「それはおめぇがすげぇ柔っこくていい匂いがしたから思わず……って」
言い合いから出た本音に、ハッとしたときはもう既に時遅く。
「アンタたちって………ホント天然バカップルだわ〜♪」
「マジからかい甲斐があるよな〜♪」
あわあわとなにかを言いかけるがなにを言ったらいいのかわからない悟空と、真っ赤になって視線をさまよわすを眺めながら楽しそうに笑う皆が、今は少し…いや、かなり意地悪に見える………。
「ああそれから。フム、修行はごく真面目にやっておったぞ。だからこそ孫は見事にピッコロを退くことができたのだろうし、もこれほどの成長を見せたのだろう。………ただ」
言葉を切った神が、仲間たちに微妙な笑みを向ける。
その笑みになにか焦りを感じる悟空とに対し、期待に胸を膨らますのが見て取れる皆様方。
「二人ともどうにも鈍くてな。見ているこっちはどう見ても相思相愛にしか見えんのだが、当の本人たちはまったく相手の気持ちがわかってなかったようだ。いちゃつき云々はともかく、神殿にいたころの二人は見ていて非常に興味深かった」
たとえば、悟空のためになにかをしてあげようと頑張るの姿。
たとえば、必要以上にに甲斐甲斐しく接する悟空の姿。
そして、ほのぼのと幸せそうに会話をする、二人の姿。
「はじめは、神聖な神殿に孫以外の人間が入ったことに少々懸念を抱いたが、今では孫がと出逢い、そしてがこちらの世界に来たのは、きっと運命だったのだろうと思っておる」
ごく真面目な声で、真面目な顔で、そんな恥ずかしいことをさらりと言ってくれちゃう神。
そんな神の発言に頬を染め、「運命か〜///」なんて嬉しそうに呟いていると、「うんめいってなんだ?」と、いぶかしそうに聞いている悟空と。
「そういや、ピッコロ倒したら結婚するって言ってたよな、悟空」
思い出したようにそう言うヤムチャに、それをその場で聞いていなかった見学組みが騒然となった。
「な、け、結婚!?!?」
「ついさっき付き合い始めたばっかなのにか!?!?」
「早すぎませんか!?!?
「聞いてないわよそんなこと!!!」
ランチが素っ頓狂な声を上げ、驚愕したようにウーロンとプーアルが立て続けに発言し、ブルマが信じられないとでも言うように頭を振る。
確かに早すぎるかな〜、なんて苦笑するのとなりで、悟空はきょとんとそんな仰天顔に首を傾け。
「なんで? 好き同士なら結婚するんだろ??」
当たり前のように零されたその言葉に、なんというか、言葉もなく唖然とするしかない。
理解しているようでわかっていない悟空の知識に、一抹の不安を抱きながらも、やっぱりそれでこそ悟空だと納得してしまう自分たちがいたりするわけで。
「神様公認じゃ、反対もできんわい」
ため息の混じる亀仙人の言葉に、全員が呆然と頷いた。
話題の中心の当人たちはというと、お互い頬を染めて幸せそうに笑いあっていて。
そんな二人を眺めていた神が、決定事項を言うならいまだ、と判断した。
「孫よ、おぬし、私に代わって神になってくれぬか? その資格は充分にある。二人で天界に住むがいい…」
「え? オラが神に??」
「ご、悟空が、神様!?!?」
悟空が「は?」というような顔を神に返し、が悟空を見て軽くふき出した。
悟空が神様って、、、なんかヘン!
確かにすごいことなんだろうけど、どうにも笑ってしまうに視線を向けてから、悟空はあわてて神に向かって頭と手を振った。
「じょ、冗談じゃねえ、やだよ! あんな退屈なとこにずっといたら、それこそ死んじゃうよ! オラ、絶対やだからね!! てか、笑いすぎ!!!」
「だ、だって、悟空が、神様って……アハハハ!!! ごめん! やっぱ笑える!!!」
悟空が神様みたいに杖を持って、思慮深く考えている姿を想像し、失礼にも「ゼンゼン似合わない!」と笑うの頭を、悟空が軽くたたく。
一方断られた神はといえば、ピッコロ大魔王を生み出してまでなりたかった自分の地位をくれてやるというのに、「冗談じゃねぇ」と返ってくるとは夢にも思わなかったらしく。
「孫、神だ! 神になれるのだぞ! 私の後を引き継ぐのは、おまえいがいにはおらんのだ!!」
強く迫る神に、悟空は「べー!」と舌を出し、空を振り仰いだ。
「筋斗雲よーーーい!!!!!」
「きんとうん???」
なんだかワケのわからないことを叫んだ悟空をきょとんと見返し、それから同じように空を見上げたの目に飛び込んできたものは、はるか彼方から飛んでくる金色の雲。
それが悟空の前で急停止して。
ぴょん、とその雲に飛び乗り、に手を差し出す悟空。
「、早く乗れよ」
こんなもんに乗れるのか、とおっかなびっくり悟空の手をとり、思い切ってジャンプする。
ぽよん、と、まるでウォーターベッドみたいな柔らかい感触がした。
が乗ったことを確認した悟空が筋斗雲の高度を上げ、下の仲間たちを振り返る。
「バイバイみんな!!! また会おうなーーー!!!」
「ぎゃ!!! お、おおおお世話になりました……っていやーーー!!!高いっ!!! 速いぃいいい〜〜〜!!!」
悟空のバイバイ宣言に、どっかに行くのだろうと理解したが下を向き、その高さに息を呑みながらもとりあえず挨拶を、と思い頭を下げるや否や、急発進する筋斗雲。
「孫ーーーーー!!!!!」
逃げられた神様が唖然とし。
「ちょっと孫くん!!! 結婚式はどうすんのよーーーーー!!!!!」
にウェディングドレスを着せたかったブルマが大絶叫。
それに返ってきたのは、のおまぬけな悲鳴だった………。
「………孫くんが行くとこなんて、お見通しなんだから。絶対捕まえて、結婚式やってやる!!!」
グッと拳を握りしめる漢らしいブルマの決意に、他の面々が強く頷く。
目下、二人の結婚式がドンチャン騒ぎをする一番大きなネタだ。
フフフフフ、と笑いあう仲間たちと、いまだ呆然と筋斗雲の消えた空の彼方を見つめる神が、その場に残されていた………。
そして、逃げ去った二人はというと。
パオズ山の見慣れた風景に、悟空が筋斗雲をとめて、竹やぶを抜けたところにある久しく帰っていなかった自分の家にを案内していた。
「ほら、ここがオラんちだ」
速さと高さから開放され、放心状態のが、悟空の指し示す建物を目に映し。
「へぇ。ふふ、可愛いv」
三角お屋根の小さな家を見て、が笑みを零した。
遠くから近くから、楽しそうに歌う鳥の声。
見渡すかぎり、木々と草の緑。
田舎育ちのにとって、都会の喧騒的な雰囲気はどうにも馴染めないのに対し、こういう風景は妙に落ち着く。
ニコニコと嬉しそうに笑うを、突然悟空が抱きしめた。
「はえ!? ご、悟空……?」
一気に速くなる鼓動と、顔に集中する血液。
まっかっかになったが悟空を見上げると、そこにあったのは太陽のような笑顔で。
「ヨロシクな、オラの奥さん」
柔らかい感触を確かめるように、悟空はをひとつギュウッと抱きしめて、その唇にそっと自分のを重ねる。
唇を離してその瞳を覗き込めば、二回目なのにやっぱり恥ずかしそうに潤んだ瞳をさまよわせて、それから悟空に視線を合わせ、柔らかく笑うのその表情に、悟空は一瞬見惚れた。
「幸せになろうね、わたしのだんな様」
クスクスと笑い合う二人を、夕陽が照らしていた。
始まりは、わたしが悟空に自転車で突っ込んで、それから時空を越えてこちらの世界に迷い込んだ。
武道を始め、大変だったけど、悟空に褒められるのがうれしくて、ひたすら真面目にがんばった。
ヘンなバケモノと闘ったり、ゾンビの親玉に気に入られたりと、いやな目にもたくさん合ったけど、悟空の笑顔がいつも、わたしを励ましてくれた。
今も変わらずとなりにある、だいすきなその笑顔。
ずっとずっと、一緒にいようね、悟空。
神様に送ってもらった下界に降りてすぐ、突っ込んできたのがだった。
ふんわり甘い香りに誘われて、思わず背中に手を回したときに移動が始まって、結局こっちに連れてきちまった。
ふわふわした雰囲気も、きりっとした表情も、時々見せる淋しげな瞳も。すべてが愛しくて、切なくて。こんな気持ち、に逢わなかったら一生わからなかったんだろうな。
こっちに来てよかったって思えるぐれぇ、大切にするからな。
、おめぇが、大好きだぞ。
とりあえず、Sweet Love完結です〜。はぁ。年内に終了できて一安心。
次はやっぱり結婚式かなぁ。。。
思いつきのまま次の行動を起こすいい加減な管理人なのでm(__)m
でも、これからも頑張ってまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします☆
読んでくださってありがとうございましたw

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