天下一武道会。
三年に一度開催されるそれは、武術の達人たちの夢の舞台。
例えていうなら、高校球児たちの甲子園のようなもの。
その優勝者は『世界一』の称号と栄誉が与えられるという。
――――――つまりは、腕に覚えのあるものたちが戦いあって強さを競うというものだ。
天下一武道会が半月後に迫った本日、は真剣に、本当に真剣に、負けそうになる悟空の笑顔に初めて必死に反抗していた。





第十章:喧嘩!?






「い・や・で・す!!!」

ニコニコほわほわのいつものとは明らかに違う、ガンとして聞かないかたくなな横顔がそこにあった。


「なんでだよー」


悟空が口を尖らせて、を見る。彼もまた、珍しく不満顔。










が天下一武道会なる大会があることを知ったのはつい数日前。
悟空の宿敵、かのピッコロ大魔王が悟空の命を狙ってその武道会にやってくるという。

神に大魔王退治をたのまれ、その大魔王は悟空の命を狙っている。
その現実に、は心底悟空に同情した。


悟空としては、ピッコロとの対決は楽しみ以外のなにものでもないため(なにせバトルマニアなので)、なぜが自分を『かわいそうな人を見る目』で見ているのか理解できない。けれど、どうせまたよくわからない思考回路を迷走しているのだろうと思い、気にしないことにした。





「だけど、楽しみだな〜」


基礎をしながら自然と悟空の顔に笑みが浮かぶ。


「え!? な、なにが!?!?」



悟空って、ほんとに重い運命を背負ってるんだなぁ・・・・・・などと哀愁の視線を送っていたは、悟空のまったく予想しなかった嬉しそうな発言と笑顔に過剰に反応してしまった。


そんなに目をやり、悟空はにっこり笑って。


「天下一武道会さ。世界中から強ぇヤツらが集まって来るんだ。・・・まぁ、ピッコロより強ぇヤツはいねぇと思うけどさ、やっぱ強ぇヤツと戦うのはすげぇ楽しいからな」




――――――ホント、戦うのが好きなお人だ。

心の底から楽しそうな悟空の笑顔に、は苦笑してしまう。



「・・・・・・そっかそっか。よかったね悟空。誰とあたろうと、わたし、悟空を応援するからさ」


どうやら自分が考えているほど悟空はピッコロとの対決を重荷だと思ってはいないらしいことに幾分か安堵し、はフワフワ笑って彼に「ガンバって」と言うと・・・・・・。



「ああ、サンキュー!! だけどさ、もしと当たっちゃったら、真剣勝負だからなっ!」


にっと素敵笑顔を振りまきながらを悩殺しようとする悟空。(注意:悟空本人にそんな気はない。)

それにクラッとあっけなく堕ちそうになり、そして。







「―――――――――って、ハイ???」



は悟空の発言に、思わず腕立ての手が止まった。


・・・・・・・・・・・・なんか今、不思議な言葉を聞いた気がする・・・・・・・・・・・・。


すなわち、と当たったら』とか、言いませんでしたか・・・・・・・・・?






理解不能といったの顔を見て、悟空もまた基礎の手を休め、怪訝そうに彼女を見て。

「だってさ、武道会で戦う相手はクジで決まるからさ、オラとが当たる事だってあるかもしれねぇだろ?」




イエ、そういうことではなく。





「てゆうか、わたし、戦う気、ないよ?」


「は?」


今度は悟空がきょとんとする番だ。
戦う気がない? いったいどういうことだ?






「だから、わたしは天下一武道会に出場しないよ?」



「――――――――――――――――――――――――へ? なんで?」



「なんで・・・って、わたしはただ趣味ってゆうか、気晴らしがてらに修行してたってだけだし。武道会に出る気なんて最初からなかったし、だいたいそんな大会があること自体、最近知ったワケだし」







じっと見つめあうこと約数秒。
最初に口を開いたのは、悟空だった。




「勿体ねぇよ、。せっかく修行してそんな強くなったのに。なぁ、一緒に出ようぜ?」


優しい口調で温かい笑顔でさらに柔らかい声でのお誘いに、は一瞬心が激しく揺れ動いてしまったが、ことこれに関してはグッと踏みとどまった。



聞くところによると、その天下一武道会という大会はあらゆる武道の達人たちが寄り集まり、力を競い合い、世界一の強者を決するというものらしい。

そんな武道会に、女の、しかも修行を始めてまだ一年にも満たないわたしが、出られるとでも思ってんの・・・?





「ヤダ。そんなの出たって負けるに決まってるじゃん」


は人間であるがゆえに、優秀な学習能力が働くのだ。
神殿にトリップした当初、彼女は悟空のこの笑顔に負け、武道の修行を始めることになり、そのことを激しく後悔した経験があったりする。(四章参照vV)
ここで負けたら、あのときの二の舞・・・・・・イヤ、それ以上に後悔することになる!!!



もともと平和主義で争うのは好きじゃないし、理由もないのに知らない方々と拳を交えるなんてもってのほかだ。強くなろうと思ったのだって単に悟空の役に立ちたかっただけで、世界で一番強くなりたいとか、武道会で優勝したいとか、そんなことはこれっぽっちも考えたことがなかった。



――――――そりゃ、悟空の命が危なくなったら(そんな事態にならないことを望んでるが)乱入する気満々だけど、そのほかで殴ったり殴られたりするのなんてずぇーーーったいにイヤだ!!!




そう思って、イヤだって言ったのに。




「負けねぇって。決勝まではぜってぇ残るさ」



だから、そうじゃないんだってば!!!






「やだ! 出ないっ! 絶ぇーーーっ対に!! 出ません!!!!!」





かつてが、悟空に対してここまで拒否反応を見せたことがあっただろうか。(いや、ナイ)


かたくななの態度を初めて見た悟空は、こんな一面もあったのか、と幾分か驚いた。




しかしよく考えてみれば、いつもはホンワカして素直なだが、彼女はけっこう感情的だったような・・・・・・。


よく笑うしよく泣くし、楽しいと思っていることはそのまま心をさらけ出し、強がっていたって哀しければその表情で簡単にわかってしまう。





頑固なも、それはそれで可愛いと思ってしまうのは、やっぱり恋の成せる技なのか。


ぼんやりとそんなことを思っていた悟空だが。







やっぱり勿体ない。




は強い。そりゃあもう、素早いし体力も申し分ないし頭の回転も速くて機転が利くし。攻撃力こそ少々劣るものの、いまや超一流の武道家だ。彼女にはまったくもってその自覚はないが、事実は事実だ。



「なぁ、

「ヤダ!!!」

「・・・・・・まだ何にも言ってねぇだろ?」

「出ろって言おうとしてんのバレバレ。い・や・で・す!!!」

「なんでだよー?」




悟空もさすがに不満顔になった。
どーしてここまで拒否るのか。強い相手と闘うあの高揚感。だってゼッタイ楽しいと思うのに。






理由もないのにむやみに闘いたくないと、戦いの中の楽しさをにも求める悟空。





根本的なところでズレているこの言い争いに決着がつくはずもなく、いつまでも平行線のままだったのだが。

だんだんエキサイトしていくとともに声がでかく感情的になっていくのが口ゲンカというもので。











「だから!!! わたしは大好きな悟空の役に立ちたくて修行してたの!!! 天下一武道会に出たくて強くなろうと思ったワケじゃないんだってば!!!!!」

「オラだって!!! でぇ好きなにオラが一番楽しいと思うことを一緒にやってもらいたいだけなんだよ!!!!!」





















「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わぁ!!!!!!!!!!」」








エキサイトして思わず口走ってしまった本音にはたと気づき、声をそろえて悲鳴を上げた。一気に体中が熱を上げる。




だが。






二人とも興奮状態だったせいもあり、自分が言ったことはハッキリと覚えているが、相手が言ったことはほとんど聞いていなかった。
つまり、自分の言ったことに対していっぱいいっぱいになっていて。










真っ赤になって固まると、同じく真っ赤になって口をパクパクさせる悟空。









「お前たち、何してる?」

静かに割って入ってきたミスター・ポポの声と、普段はめったに顔を見せない神の姿に、二人ははっと我に返り。


「や、あの、その!!! 何でもない!!! 別に何にもしてないよな、!?!?」

「う、うんうん!!! 何にもしてないから!!! ポポさんも神様も心配しないで、ね!?!?!?」








二人の不審な態度に神とミスター・ポポは顔を見合せ。

また何か色恋がどーのこーのとやっているのだろう、とスルーすることにして。






「まぁ、よい。それより、おぬしらがここを去る時期が近づいてきたのでな、それぞれに天下一武道会の試合用の武道着を用意しようと思うのだが。孫はいつも着ているその武道着でよいかな?」



「あ、ああ。オラはこれでいい」


悟空は今身につけている山吹色に黒い帯、左胸と背中に『亀』というマークの入った武道着を見下ろして頷くと、神は次にに視線を流す。



は何か希望があるか?」


「い、いえ、別に。しいていうなら、できるだけシンプルなほうが・・・・・・・・・・・・・って、わたしも出るんですか!?」





聞かれたことに素直に答え、次いで行き着いた答えに思わず聞き返す。


それに答えたのはミスター・ポポだった。


は、実践の経験、不足してる。試合もまた、修行。天下一武道会に出場して、戦い方を、学べ」

「そういうことだ。孫を手助けするのに足りない実戦経験を、武道会の試合をすることで補ってほしいのだ」

















―――――――――今まで必死になって悟空の笑顔に反抗してきたのはなんだったのか・・・・・・。




神とミスター・ポポの顔を交互に見て、思わずがっくりと肩を落とすのとなりには、喜色満面な悟空の顔があって。





「一緒にがんばろうな、!」




なんて笑うもんだから、結局悟空のペースにはまり込んで、それを心地よく感じてしまっている自分に気づいて。
軽い敗北感に、うなずくのが少し悔しくて、ちょっとだけ拗ねてしまう。




「なんか……あり得ないし!!!」



そんなふうに答えてぷくっと頬を膨らましたを、「やっぱり可愛いな」、と思ってしまう悟空は悟空で、完全ににやられてしまっていると感じる。





そして二人とも共通して思うのは。
とりあえず相手の態度からして、『大好き宣言』が、完全に聞き流されたようだ、ということ。

よかったような、残念だったような。


















とにかく、天下一武道会はもうすぐなのに、なおも浮つく二人だったという//////(それでいいのか!)





















いいんです。二人とも、意識の切り替えは早いから。
それにしても///駄文です。とにかく謝るしかありません・・・(泣)
ごめんなさい申し訳ありません許してくださいぃい〜!!!