本日の悟空の出で立ちは、いつもの亀マークではなく、やたら重いアンダーシャツの上に黒い武道着を羽織り、白いズボンをはいて、赤い帯を締めている。リストバンドや靴はいつものとおりごっつ重いものを身につけ、頭に巻いた白いターバンが彼の特徴的な髪型を隠していた。

本日のの出で立ちは、いつもの高校ジャージ(今章初公開vv)ではなく、同じくやたら重いアンダーシャツの上に黒い武道着を羽織ったが、悟空と同サイズのそれは丈が膝まできてしまったので、ズボンははかずに赤い帯できゅっとウエストを締めた。髪はいつもと同じくポニーテールでまとめ、モチロン靴やリストバンドもつけたまま。

神殿の庭に出た二人は、いつもの見慣れた服装とは違うその姿にお互い顔を見合わせ、照れ笑い。

「オ、オッス」
「お、ハヨっす」

少しギクシャクしながら挨拶を交わす二人の胸の内は。

(可愛い……///)
(カッコいい……///)

―――――――――これから命のやり取りが始まるというのに、二人は今日も、やっぱりいつもと変わらない。





第十一章:Let’s go to パパイヤ島 !







天下一武道会まであと二日。
その会場の南の都・パパイヤ島まで、神殿から約一日。
というワケで、悟空とは本日神殿を出発することになった。

庭に出た二人の背中には、それぞれの荷物が乗っていた。
悟空は新しく新調した例の『亀』マークの武道着と、着替え一式をその中につめ、は用意してもらったポロシャツとスパッツと着替えをリュックの中に詰め込んだ。

にとっては、こちらの世界に来てからというもの神殿からはほとんど足を踏み出すことがなかったため、ここ以外の世界を見るのは初めてに等しく、期待と不安を膨らませていた。

これで見納めになるのかな、と懐かしいような気持ちで振り返って神殿の全景を目に収めると、そこから神とミスター・ポポが出てくるのが目に入った。


悟空とが並んで挨拶をすると、神とミスター・ポポは頷く。

「孫よ、必ずやピッコロ大魔王を倒すのだぞ」

神が悟空を見て念を押すように言うと、悟空はその鋭い目をまっすぐに見返し、不適に笑った。

「ああ。そのために修行してきたんだからな!」

自信に満ちたその表情と、力強いその答え。
それに満足したように、神は表情を緩め、それからに視線を移す。

よ、そなたも頑張ってきなさい」

「は〜い。ベストを尽くします」

いつものようにフワフワ笑顔を浮かべて穏やかに答えるに少々苦笑する。
緊張していないようなので一応安心したものの、たぶん事の重大さを彼女はいまだに理解していないのではないか、という懸念を抱いてしまうようなその笑顔。



「じゃ、行ってくる」
「お世話になりました」

悟空が手を振り、がぺこりと頭を下げる。


「二人とも、気をつけて」


二人の後ろ姿を追ってくるミスター・ポポの声は、普段どおり感情のうかがい知れない色ではあったが、今この場で一番心を砕いているのは他でもない彼であることを知る神は、そっとその肩に手を置いた。



「大丈夫だ。いざとなれば、が切り札になろう」

「でも、ミスター・ポポ、そうなってほしくない」



が切り札』。
負の感情が最高潮に達したとき、彼女は爆発的な力を発揮する。
もちろん、悟空がピッコロを倒してしまえばそれにこしたことはない。だが、仮に悟空がやられそうになったときには、その力が目覚めるのは目に見えて明らかで。
二人に傷ついてほしくないミスター・ポポにとっては、そんな事態には陥ってほしくなかった。



複雑な表情を浮かべたミスター・ポポを、神は労わるように見つめ、それから今まさに神殿を出ようとしている二人の姿に目を移した。







「ところで悟空……?」

が神殿の端っこで下を見ないようにして悟空を顔を上目遣いに窺う。


「なんだ?」

「どうやってここから降りるんでしょ〜か…」



なんだかいや〜な予感がするんですが、と言外にこめる。
悟空はそんなの様子には気づず、思いっきり笑顔で。


「そんなの簡単さ。――――――飛び降りるんだ!!!」


ひょん、と。

それはもう、簡単に神殿の端から先に飛び降りる悟空。
しかも、の腕をシッカリつかんで。










「イヤあああああああ〜〜〜〜〜!!!!!!」




いやな予感的中の上に心の準備をするまもなく引きずられるように落ちていくの悲鳴が、だんだん小さくなっていく。




そういえば、彼女は高いところがニガテだった…………。


「「……………………………………………………………」」






この期に及んで緊張感のない二人に、神とミスター・ポポは言葉もなく二人を見送った。















「ぎええぇぇえ!!! 死ぬ! 死ぬ!! マジ死ぬーーー!!!」

! ちょっと寄り道するぞ!」

「わ、わたしは!!!いま!!! フォ〜リン・LOVE!!!」(壊れた)

「???」



言ったことに対する答えが返ってこないばかりか、なにやら意味不明なことを叫ぶを不審に思うものの、従来の気にしない性格から「ま、いっか」と思いつつスルーして、(ひどい・・・!)悟空が下を見る。



神殿の真下には、猫仙人の住む建物が見えてきた。



がくん、と悟空は武空術で空中に浮き、を引っ張り上げてその建物に降り立った。






、死にかけ。
真っ青な顔でへなへなとその場に崩れ落ち、言葉もなく放心状態デアル。



「カリン様ー!!!」



悟空の呼びかけに、杖を突いた二足歩行の白い猫が現れた。
二本足で立ってること意外は、いたって普通の猫。ふわふわと真っ白な毛並みに、長いシッポ。糸のようにきらめく髭をそよがせ、ピンクの鼻が何かを確かめるようにヒクヒクしている。










「――――――――――――?」





視界の端に入ったその姿を見て、がまたまた不可思議なことを言い出した。
悟空が彼女に目をやると、目を丸くしてカリン様を凝視している。もともと潤んでいた目をさらに潤ませ、それからパァッと顔を綻ばせて。





 やっぱりそうだ!! 何、あんた、こっちに来てたの!?!? わぁ、もう会えないかと思ってたのに、すっごい嬉しい!!! 元気だった!?」



タックルの如くガバァッ、とカリン様に抱きつき、ぐりぐりと撫で回しながらなおもワケのわからないことを口走る
対するカリン様は、彼女の力いっぱいの抱擁に息を詰まらせ言葉が出ない。





「…って、あれ? 、いつの間に二足歩行できるようになったの? しかも…アハハハハ!!! 何その杖!!! ヘンだよそれ!!!」




やっと放してもらえたカリン様は咳き込み、悟空はその様子を呆然と傍観する。



「ゲッホ、ゲホゲホ!!! 悟空、なんじゃこいつは!?」

「………あ、いや、そいつはオラと一緒に――――――」

「すっごい!!! 、あんたこっちに来たら喋れるようになったワケ!?!?」



悟空の言葉を途中でさえぎり、大興奮の
カリン様は迫り来る彼女に、たじたじと後ずさりながら口を開いた。





「オイ、何を勘違いしとるのかは知らんが、わしはとやらではないわ!! この塔の主、猫仙人のカリンじゃ!!!」



「は? 猫仙人???」


きょとんとするに、悟空がぶっ、とふき出した。


「ハハハハハハ!!! なんだよって!」





笑い出した悟空と依然状況を把握できていないようなに、カリン様は不機嫌に頬を膨らます。


「だいたい悟空、オマエは天下一武道会に行くんじゃなかったのか!?」

笑いすぎて出てきた涙をぬぐいながら、悟空はそうだ、と頷き、カリン様を見る。

「ああ、そうなんだけどさ、オラの如意棒がここにあるだろ? それ持ってこうと思って寄ったんだ」


それからを見て、ふき出しそうになるのを必死でこらえて。

、この猫はカリン様だ。えらい猫なんだぞ」

「えらい、猫? や、猫違い!?!? ――――――ご、ごめんなさい!!!!!」




不機嫌そうなカリン様には真っ赤な顔でガバッと頭を勢いよく下げる。
恥ずかしい! 限りなく、恥ずかしい!!!










とは、が元の世界で可愛がっていた白い猫。
あまりにそっくりで、テンションがあがりにあがりまくってしまったが、考えてみれば普通の猫が二足歩行したり杖をついたり喋ったりするわけがないだろう。




仙人と名の付くような偉い方に、わたしってばなんてことを……!!!




恥じ入りうつむくの様子に、カリン様は幾分か機嫌を直し。



「まぁよいわ。とにかく悟空、如意棒はそこじゃ。ついでにこれも持っていけ」

猫仙人が指差した先には、赤い棒。

悟空は背中にあった荷物の中から同じく赤い鞘を取り出して、そこにそれを収めると、再度荷物を背負った。
さらに『ついで』と投げ渡されたのは小さな袋。が覗き込むと、何粒かのお豆が入っていた。



「あ、仙豆か! 助かるよ」

「センズ? なに、このお豆」



が問うと、カリン様はぺろぺろと自らの手をなめて、顔を洗い出した。
そのしぐさはもう、絶対ニャンコそのものだ。
可愛い・・・///


「それは一粒食べれば10日は腹が膨れるという、ありがたい豆じゃ」


が自分の愛猫を見るような目でカリン様を見ていることには気づかず、カリン様は仙豆の説明をすると、悟空に向き直り。

「ほれ、とっととピッコロのヤツを倒してこい」


今度は髭をそよがせながらそう言った。
マジ可愛い・・・!!!




「ああ、じゃあ行ってくる」



「――――――あ…っと、本っ当にすみませんでした!!!」


そのあまりに可愛すぎるしぐさに見入っていたが悟空の一言にハッと我に返り、さらに深く頭を下げるの腕をつかみ。




ぴょん、と。




「――――――って、またっすかーーーーーーー!?!?!?」





ためらいもなく飛び降りる悟空とともに、またまた落ちていくの叫びが耳に刺さる。


カリン様は呆然とそれを見送って、ポツリと一言。

「相変わらず、緊張感のないヤツじゃのう」















地面が見えてきて。
激突グッバイわたしの人生uu、なんて思ってたんだけど。



――――――自分でも信じられないことが起こった。


の身体は勝手に手足を縮め、くるくると回転し始め、次の瞬間にはスタ、っと。
オリンピックで金メダルを取れるような、綺麗で見事な着地を決め込んでいた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・/// はぁ」




自分のしたことに自分で驚いて唖然としながらも、とりあえず助かったという安堵感で地面にぺたりと座り込んでしまう。

死なずにすんだ。切実に、生きてるって素晴らしい……!(感涙!!!)



涙を滲ませながらそんなことを思っていると、同じように着地していた悟空がに手を差し出した。



「立てるか?」



もとはといえばあなたのせいです、とは思うものの、悟空のその手にすがってしまうあたり、やっぱり彼には敵わない。



「う、ん」



悟空に引っ張り起こされてとりあえず立ち上がると、悟空はにっこり笑って。



「な? 大丈夫だったろ?」

「大丈夫…っていうか……じぶんでもびっくりだよ」



悟空は彼女がちゃんと着地できることがわかっていたらしい。
まったく何にも考えていないようで、意外に先を見ている悟空の行動に少し驚いた。




「じゃ、走るか」

心の内で、(おめぇに怪我させるようなことするわけねぇだろ///)と思いながら、自分のその思考に赤く染まる頬をごまかすように悟空が言う。

「OK」

ごまかしきれなかった悟空の赤い顔に、(なにテレてるのかなぁ・・・)と思いながらもつられて赤くなってしまった自分のほっぺたを両手で押さえながら答え。








そして二人は南のパパイヤ島を目指して走り出し、聖地カリンを後にした。




















思いのほか長くなってしまいまして…uu申し訳ありません///
次回からは、原作沿いになるかなぁ・・・なればいいんですけど、ね〜・・・(^^;