太陽が西に傾き、空にはきれいな橙色が広がっている。先ほどまで降っていた雨がうそのようだ。
そんなきれいな夕日に見惚れていると、オレンジ色に染まる彼女の横顔に魅入る悟空。
そして、そんなのんきな二人とは対照的に、イラつくその他約五名。
少し前に、武道会場のほうから『あと十分で出場受付を締め切ります』と言う場内アナウンスが流れたにもかかわらず、出場する予定の悟空の仲間たちが、まだ姿を現さないのだ。
ピク、と。
それまで夕日に目を奪われていたが、小さく肩を揺らしてあらぬ方向に視線を送った。
同じく悟空も彼女と同じ方向に目をやり、一言。
「間に合ったな」
すごいスピードで近づいてくる大きな気は、一、二……全部で四つ。
もう間もなくこの場所に到着するだろうその気の存在に、人見知りなは再び身を硬くした。
第十三章:再会と初対面
「まったく、なにをやっとるんじゃ、あやつ等は!!!」
亀仙人の杖がトントンと落ち着きなく地面を叩き、ブルマがイライラと腕を組んで。
「ホント、何やってんのかしらーーー!?!?!?」
突然目の前をよぎった疾風に、ブルマの語尾が不自然に高くなる。
「よっほー!!!」
疾風の収まった先、大きな気を持つ四人のうちのひとりが、陽気な声を上げた。
「そこんとこでちょうどみんなと会ってさ!」
その人が明るく続ける。
一見、ごく一般的なヒト化に分類される人間に見えた。ちょっと背が低くて、キャップの帽子の下はたぶんきれいに剃られたつるつる頭だとは思われるけど、普通の男の人……と思いきや。
(あ…この人、鼻がない………)
それでいいんだろうか……? それでも、人間といえるのだろうか???
いやでも、服を着た豚のウーロンや空飛ぶ猫のプーアルに比べたら、かなり大きな比率で『人間』といえるだろう、との中で結論が出た。
その人のとなりには、これまた奇妙な人物(?)が。
鼻ナシ人間よりも小さく、身長だけでいえばほんの子供のようだ。その顔は、真っ白。色白とか、そういう問題ではなく、舞妓さんとかがよくやる『白塗り』という化粧を施したような白なのだ。そして、ほっぺただけが丸く真っ赤で、唐傘のような帽子をかぶっている。まぁ…この人も『人』なのだろう。
その後ろには、白塗り小僧とおそろいの服と帽子をかぶった、長身の男の人が。
雰囲気的に『硬派』な感じの彼の額には、なんと! 第三の目が!!! むか〜し漫画で『三つ目が通る』っていうのがあったけど(マイナーだったけど大好きだった///)。本場モンの三つ目人に実際に会えるとは。
そしてもう一人。
三つ目より幾分背が低いが、長身の分類に入るであろう男性。長髪を後ろで一つに束ね、目のところとほっぺたに傷がある。他にこれといって不思議なところは見当たらない。唯一まともな『人間』だ。
それにしても、悟空のご友人たちは変わり者が多いのですね…、なんて、あやうくショートしそうになる頭を必死に駆使して、はムリヤリそんな答えを導き出した。
「お久しぶりです、武天老師さま」
帽子を取りながら、長身の三つ目の方が亀仙人に向かって挨拶をしたが、突然の四人の出現に唖然とするばかり。
その様子を見た的に唯一まともだと感じた人が、少し残念そうに。
「あ…あまり反応がないな……」
それを陽気に笑い飛ばす鼻ナシ人間。
「驚いてるんですよ、ボクたちの変貌ぶりに!」
そしてそのままその鼻ナシは亀仙人の前に進み出て。
「見てくださいよ、武天老師さま。私など、こんなに背が伸びちゃって! はははははは」
確かに。確かに亀仙人よりかは背が高い。高いのだが、世間一般的にいって、彼の身長は高いとはいえないだろう、ときわめて失礼なことを思っているのとなりで、悟空が動いた。
その鼻のない人のそばに寄り、その肩にポン、と手を置く。
「元気そうだな、クリリン!」
「え?」
彼は先ほどブルマたちが見せた微妙な表情で悟空を見たが、悟空はさっきと同じようにそれを気にすることもなく、後から来た方々を見渡して。
「これでみんなそろったな!」
あとから遅れてきたその場の全員が、悟空に注目した。信じられないような、驚いたような、そんな色の視線を受け、悟空がニコニコと笑みを零す。
クリリンと呼ばれた鼻のない人が、悟空をゆっくりと見上げ、震える指で彼を指差し。
「ごご……悟空………? 悟空か…………!?」
「ああ!」
悟空の答えを聞き、それからゆるゆるとその顔に笑みを上らせる。今にも泣きそうな潤んだ目で悟空を見上げ、それから悟空に飛びついた。
「悟空ーーー!!! このやろーーー、会いたかったぞ!!! ちっとも礼が言えなかったじゃないかーーー!!!!!」
「礼?」
聞き返す悟空に、うれしさで涙の滲む顔を上げ、彼は悟空の目を見る。
「オレは、一度ピッコロ大魔王に殺されたんだ。それを、お前が神様にたのんでドラゴンボールで生き返らせてくれたんじゃないか!!!」
「ああそうか。よかったな、クリリン」
微笑む悟空に「ありがとう」を繰り返すクリリン。
それを眺める長身の三つ目と長髪の彼が少し離れたところで。
「あ……アレが、悟空…か……?」
「そうらしいな……」
そんなに悟空は変わったのだろうか…?
ブルマたちといい、この仲間たちといい、あまりに過剰なこの反応。
悟空の過去の姿を知らない、というか覚えていないは、ちょっと残念だな、と思いつつ、それから悟空に飛びついているその彼に(いいな〜///)なんて煩悩全開の視線を送ってしまったりした。
だってあなた、悟空と抱きあってるんですよ? なんてうらやましい……!!!
ふと、そんなふうに見ていたとその鼻ナシとの視線がぶつかり。
急に押し黙ったクリリンを不審に思い悟空が彼を見ると、なにかに目を奪われた様子。
クリリンの視線を追うと、その先にはの姿。
「」
悟空が破顔する。
その無邪気な笑顔を向けられて、はあわてて取り繕ったような笑顔を顔に貼り付けた。
自分が今思っていたことが思っていたことだけに、瞬時に頭のてっぺんまでカァ、っと熱が上がっていく。
真っ赤になったに首をかしげ、それを「ま、いっか」といつものようにスルーし(どうせ彼女の思考回路は読めないので)、悟空はクリリンを示した。
「コイツはクリリン。オラの一番の友達だ!」
それから悟空はその周りにいた遅れてきた仲間たちを次々に指し示して。
「そのちっこいのが、餃子。目が三つあんのが天津飯で、髪の毛長いのがヤムチャだ」
ちょっと、覚えきれるだろうか…、と一抹の不安がの胸をよぎったが、とりあえずそれは置いといて。
「あの、は、初めまして」
さっきもそうだが、興味津々の視線にさらされていることを恥ずかしく思いながらそう挨拶すると、悟空がの頭にポン、と手を乗せ。
「ってんだ。よろしくな」
頭から伝わる温もりについつい緩んでしまう頬。
恥ずかしいやら嬉しいやらでぽっと染まる顔をうつむかせるその様子を、声もなく見守る彼ら。
悟空が女の子を連れてきただけでも信じられないのに、その上その娘はすごい美少女で。
クリリンやヤムチャはもちろんだが、硬派な天津飯までもが一瞬目を奪われた。
そんな中、最初に我に返ったのは、クリリンだった。
「あ、ああ、その…なんだ。ヨ、ヨロシクね、えーと…」
なんだか以上に真っ赤になったクリリンを見て、はちょっと肩の力が抜けてにっこり笑いかける。
「です。ヨロシクね、クリリンさん」
ますます赤く染まる自分の顔を不思議そうに見返すに、もう一度「ヨロシク」といったクリリンは、彼女のとなりに立つ悟空に羨望と悔し紛れの目をやり。
「なんだよ、悟空。すっげぇ可愛い子じゃねえか!!」
「そうだろ? 神様んとこで一緒に修行してたんだ」
「「「神様のところで修行!?!?!?」」」
びくぅ!!!
悟空の発言に過剰に反応するヤムチャ、天津飯、餃子の三人。
その大声に驚いて飛び上がる。
「天界で、修行を?」
三つ目の人(え〜と・・・、天津飯さん…?)に真剣な顔で見られて、は少々逃げ腰になりながら。
「あ、ぇと、ハイ…一応」
小さな声で小さく頷く彼女を見て、悟空が満面の笑みを浮かべる。
「見かけはたいしたことなさそうだけどさ、実力は相当なもんなんだぜ、は」
「な、、、悟空!!!」
なんて事を言い出すのでしょうか、このヒトは!!!
「ウソですそんなの! なにせわたしは武道習いだしてからまだ一年も経ってないし実力なんてコレっっぽちもないどころか自分の力さえよくわかってないほどで第一いまだに悟空とポポさん以外の人間と手合わせしたこともないド素人なんです!!!」
必死も必死。
真っ赤な顔をして機関銃のごとく早口に一気にまくし立てるの様子に、悟空はことりと首をかしげて。
「いや、ウソじゃ……」
「ウ・ソ・な・の!!! ねっ、悟空さん???」
「あ、うん………」
反論しようとした悟空の言葉をさえぎり、さらにはハートマークが飛び出してきそうなほどそれはもうニッコリと笑っているが明らかに目が怒っているのその笑顔に気圧され、思わず頷いてしまう悟空。
そしてそんな二人のよくわからない言い合いを呆れたように眺めていた面々が、悟空はの尻に敷かれているのか、なんて思っていたりして。
さらに男性陣(特に、クリリン、ヤムチャ、亀仙人、ウーロンの四名)は、の尻になら敷かれるのも悪くない、などと幾分か口元を緩めてしまい。
「ちょっとヤムチャ! な〜にデレッとしてんのよ!!!」
「い、いででででで!!!!!」
突然割って入ったブルマが、ヤムチャの耳を思い切り引っぱって大声を上げ、その声にその場の全員が正気(?)を取り戻した。
「まったく、三年ぶりに会ったっていうのに、『ただいま』の一言もないどころか孫くんの彼女に見惚れてるなんて、どういう神経してんのかしらね!!!」
「あ、ご、ごめん! ごめんブルマ! ただいま!!!」
こっちはこっちでヤムチャを尻に敷くブルマであった…。
―――――――――――――ってゆうか…………………………『彼女』って。
「違うぞブルマ!!!」「違いますブルマさん!!!」
悟空とが耳まで真っ赤になって仲良くハモり、付き合ってないことを大主張。
・・・・・・・・・そのあと、お互いに力いっぱい否定されたことに二人してどーんとへこんでしまうあたり、まったくどうしようもない。
「と、とにかくじゃ、おぬしらはさっさと受付を済ませてこい。それから、今日はわしが宿を取っておいたから、明日に備えてゆっくり休むんじゃ」
気を取り直したように亀仙人が咳払いをしてそう言い、遅れてきた四人があわてて出場の受付を済ませ、それから武道会場の近くのホテルに向かって歩き出す。
先を行く悟空たち男性陣は久しぶりの再会を喜び、楽しそうに話しながら歩いていく。
はブルマたちとともにその後姿をほほえましい気持ちで見ながら歩いていると。
「しっかし、しんじらんないわ〜」
ブルマが前を行く悟空の背中を見ながら口を開く。
「え?」
が聞くと、ブルマはそこから目を離さずに。
「あの孫くんが……けっこういい男になっちゃったりしてさ」
「うん、悟空、カッコいいですよねっ」
は喜色満面に素直にそれに同意する。
ブルマはそんなを見て、意味ありげに笑った。
「ねぇちゃん」
「ハイ?」
「孫くんのこと、好き?」
「――――――――――――――――――――――――///」
真っ赤になってうつむくに、ブルマは明るく笑う。
「そっかぁ。初々しいわねぇ。アイツ鈍いから大変だろうケド、がんばんなさいよ!」
ばしばしの背中を叩いて「応援するわよ」とそれはもう自分のことのように嬉しそうに言う。
やっぱり女の子。色恋の話には目がないらしい。
そして、前を行く悟空とクリリンは。
「くっそーーー! 今度こそ抜いたと思ったのになぁ」
「なんだよ、クリリンだってけっこう伸びたんだろ?」
「お前を抜かなきゃ意味ねぇんだ!!!」
何の話かといえば、いわずと知れた身長の話。
三年前はもう少しで届くはずだった悟空の背が、いまや自分よりも頭一つ高くなってしまっているその事実に、ものすごく悔しさを感じるクリリンである。それと、悔しい理由はもう一つ。
「しかもさぁ、あーんな可愛い女の子連れて来るしさ」
クリリンの視線の先には、ブルマとなにやら楽しそうに話しているの姿。
「……やっぱ、アイツって、可愛いんか?」
「あ? 何言ってんだよ悟空。すげえ可愛いじゃねぇか!」
悟空の問いに、クリリンが呆れたように答える。そういや、悟空は昔から、可愛いとか美人とかの基準がわかってなかったな、なんて懐かしく思い出す。
「そっか、オラそういうのわかんねぇんだけどさ、は可愛いと思うんだよな」
こっちはこっちで素直に思ったままを口にする悟空。
クリリンはちょっと驚いて柔らかく笑う悟空を見る。昔から悟空を知っているクリリンにとって、そんなセリフが悟空の口から出てきたことがまったくもって信じられなかった。
純粋に強くなることだけを望んでいて、女の子になんか見向きもしなかったのに。見向きもしなかったどころか男と女の区別さえ見分けがつかなかったのに。
「悟空―――――――――……成長したな」
「はぁ?」
えらく感動したようにトントンと悟空の肩を叩くクリリンに、悟空はワケがわからないといったように聞き返すが、それには答えず、クリリンがにやりと笑う。
「親友の初恋だ。悟空には勿体ないくらい可愛いちゃんだけど、応援してやるぜ」
「……………………………なんでわかったんだ???」
初めて見る悟空の真っ赤な顔に、「そんだけ素直に言っておいてわからないはずがないだろう」と呆れ苦笑するクリリン。
相変わらずのボケボケ二人に、それぞれの強い(?)味方。
そして、一夜明けた本日。
天下一武道会の予選会まで、あと数時間。
……いや、だだだ駄文でごめんなさい。
ほんとにどうも、スイマセン。
とにかく、ギブミー文才!!!

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