予選トーナメントの対戦相手を決めるため、それぞれみんなくじを引き。
「オラ、2番か。一ブロックの最初のほうだな。は?」
「え…と、57番。ってことは、4ブロックかな。 クリリンさんは?」
「セーフ、16番! 1ブロックだけど、あとのほうだ。ヤムチャさんは?」
「オレは22番だから2ブロックか。天津飯、どうだ?」
「35番だ。餃子、おまえは?」
「48番」
ものの見事にばらばらで、「すっげえ偶然だな〜」と頷きあう悟空、、クリリン、そしてヤムチャ。
そのわきで訳知り顔で笑う天津飯と、誰にともなくピースサインをキメる餃子。(←超能力の力です)
そんなこんなで始まりました、第23回天下一武道会出場者の8名を決める予選試合トーナメント。
第十五章:婚約者
戦い慣れた悟空たちは勿論余裕で順調に勝ち抜いていた。
そりゃもう憎らしいほど簡単に、さらっと、気負いも何もなく
初挑戦で緊張のあまりカチコチになっていたも、なんだかんだ言いつつシッカリ勝ち残っていたりした。
「………オイ、悟空。ちゃん、すげぇな」
ちょうど番号を呼ばれて必死な面持ちで舞台に上がるを見ながら、クリリンが悟空に話しかける。
「はは、そうだろ。でもあいつ、まだまだあんなもんじゃねぇぞ」
目を細めてを見上げながら、悟空がにっ、と笑う。悟空特有の、強い相手に対応したときの笑顔。
不安げに視線をさまよわせていたが悟空を見つけ、安心したようににこりと笑みを浮かべる。手を挙げて「頑張れ!」と笑ってやると、はこくりとうなずいた。
「はぁ、でもマジ可愛いよな。華奢だし思わず守ってやりたくなるっつーか。……でも、武道に関しちゃ超一流だな。ホントに素人なのか、彼女?」
となりにいるヤムチャがの笑顔を見てため息をつき、悟空に聞く。
「ああ、ホントに修行初めてまだ一年も経ってねぇんだぜ。すげぇだろ?」
まるで自分が褒められたかのように、嬉しそうに悟空が答える。
「信じられん。スピード、技、パワー…。どれをとってもすごい達人にしか見えないが…」
戦うに視線を送りながら口を開く天津飯。まったくムダのない動き、流れるように滑らかな身体の使い方、そして、相手の動きに即座に反応するすばらしい機転と並外れた反射神経。
パワーは他に比べて少々劣るものの、それでも並みの武道家のそれと比較すれば、やはり超一流と言っても過言ではなく。
はといえば、とりあえず怪我だけはしないようにと臨んだ初試合だったのだが、自分の予想以上に俊敏に動いてくれる身体と、相手の動きにあわせて勝手に反応してくれる反射神経に少なからず驚き、「わたしって、ちょっとはデキる女かも///」なんてやっと自覚したりした。
けれどやっぱり、自分が怪我したくない以上に相手を傷つけたくなくて。
自分の力がどれだけなのかわからなかったいちばん最初の試合で、悟空に「攻撃は手加減しろ」と言われ、相手の隙をついて軽く蹴ってみたところ、思いのほか吹っ飛び壁に激突させて気絶させてしまって。
いつの間にかとんでもない馬鹿力を身につけてしまった(悟空は思いっきり攻撃してもよろけるくらいだったので気づかなかった)ことを自覚してからは、なるべく攻撃しないようにしていたので、たいていは相手の攻撃を素早く避けて勢いあまって場外に相手が落ちる、という勝ち方が主だった。
まぁ、そんなこんなで皆さん着々と勝ち進んでいったわけだが。
途中、天津飯と餃子のもと先輩で、昔悟空がやっつけたという『桃白白』と名乗る半分サイボーグのような姿の殺し屋が登場し、対戦した餃子が半殺しにされるというシビアな現実を目の当たりにし。
改めて、こわい世界だと感じる。
桃白白は悟空と天津飯を殺すつもりらしいが、おそらくというか確実に、それはムリってもんだろう……。
餃子を除くほかのメンバーはそれからも着々と勝ち抜き、それぞれに天下一武道会の出場を決めていった。
―――――――――そして。
「第四ブロック最初の決勝を行います。57番と59番の方、競技台に上がってください」
はい、来ました。来ちゃいました! なんとここまで来てしまいました!!!
普段ホワホワしているだが、実は、根はけっこう負けず嫌いだったりするわけで。
ここまで来たからにはやっぱり勝ちたい、負けたくない。
「ガンバレよ、。あと一人だ!」
「う、うん! ガンバッてみる!」
悟空の応援にキリッと表情を引き締めたは、それはもう綺麗で。
笑顔もいいけどやっぱりこの真剣な瞳もゾクッとくる……なんて思ってしまい、まったくどうしょうもねぇなぁ、と悟空がポリポリ頬っぺたをかいていたが、目の前の『決勝』に思考を奪われているはそれには気づかずに競技台に上がる。
反対側から上がってきた決勝の相手を見て、は驚き目を丸くした。
その人物は、青いチャイナ服に赤い帯、長い黒髪を一つにまとめた超美人――――――そう、悟空に「誰だ?」と問われてぶち切れた、チチという人だったのだ。
顔を上げた彼女は燃えるような瞳でを見据え、全身全霊で怒りを表現していて。
そういえば、この人は悟空のことが好きなんだ・・・と、試合のことでいっぱいいっぱいで忘れていた重い不安が、の胸に戻ってきた。
「では始めてください」
審判の声と同時に飛び掛ってくるチチ。
チチもかなりの使い手で今までの相手とは段違いだったが、の身体は思った以上に素早く動き、チチの攻撃を軽くかわしていく。
それでも諦めずにスピードを上げて攻撃を仕掛けながら、チチはを怖い目で睨み。
「おめ、悟空さのなんだ!?」
「は?」
突然の問いにワケがわからず、ひらりと身軽にかわしながらチチを見返したは、その瞳の中に明らかな激しい嫉妬の色を感じ取り、思わず息を呑んだ。
「あ、あの……何、って言われても…」
なんて答えればいいんだろう。
わたしは悟空に片想いです、なんて言ってしまっていいんだろうか・・・?
の煮え切らない態度が、チチの嫉妬に燃えた心身に油をそそいでしまったらしい。
さらに激しく、さらに強くなる攻撃。
「おら、悟空さと約束しただぞ! 悟空さ、おらを嫁にもらってくれるって言っただぞ!?!? なのに、なしておめが悟空のとなりで笑ってるだ!!! そこはおらの場所だべ!!!」
怒り心頭。そして、爆弾投下。
瞬間、は今、自分が今なにをしているのかさえ、わからなくなった。
気づいたら、チチが場外に落っこちていて。
「場外! 57番、天下一武道会出場決定!」
審判のそんな高らかな声さえ、なんだか遠いところで聞こえている。
悟空と、結婚の約束をした………?
―――――――――ってことは、悟空の、フィアンセってコト…………???
は競技台を降りると、フラリとよろける足を叱咤して、身体を起こしたチチのところへ無意識に向かう。
「あの………」
バシィ!!!
声をかけたの頬に、チチの張り手がとぶ。
いきなり手をあげられたは驚き、殴られた頬に手を当ててチチを見ると、嫉妬と悔しさとが入り混じった瞳は涙にぬれていて。
「試合は、確かにおめの勝ちだべ。でも! 悟空さはおらのもんだ!! 今すぐ悟空さのそばから消えてけろ!!!」
泣き叫ぶ声。
競技台に集まる野次馬たちのざわめきの中でさえ、響くその痛烈な非難。
痛いのは、頬っぺた………?
それとも―――――――――胸?
ゆっくり立ち上がる。
ふらりと歩き出す。
「?」
かけられた柔らかい声は、大好きな人もの。
ぼんやりとその澄んだ漆黒の瞳を見上げ、はふんわり笑った。
「ん、とね。ん〜………。とりあえず今は、悟空はあそこで泣いてる人のトコに、行くべき、かな」
「へ? なんで??」
「お願いだから、行ってよ」
明らかに様子がおかしい。
視線を逸らしながらのほわっとした笑顔は、妙に不自然で。
するりと自分のとなりをすり抜けようとしたの腕を捕まえた。
「どうしたんだ、?」
「あは、どうしたんだろうね、わたし…」
視線は落としたまま、悟空のほうを見ずには笑い続け、突然悟空の手を振り払った。
「いいから行って!!! ちゃんと話をしてきて!!!」
やっとあわせてくれたの瞳は苛立ちと哀しみに揺れていた。
強い口調で悟空にそう言ったあと、小さな声でもう一度。
「お願いだから、行ってあげてよ」
悟空は混乱していた。
今心配すべきは、。
そのが、あっちで声をあげて泣いている女のところに行けと、懇願している。
「―――――――――――――――――――――わかった」
迷いに迷い、が望むなら、と、悟空はチチのもとへと歩き出す。
「悟空」
の声に呼び止められ、笑顔で振り向いた悟空に。
「今までありがとう。悟空と一緒にいられて…悟空に出逢えて……とっても。とっても幸せでした!」
精一杯の感謝と、精一杯の笑顔。
ちゃんと、伝えなきゃ。これが、最後かもしれない。
悟空がいたから、頑張れた。悟空がいてくれたから、異世界に来てしまった不安も、なんとか乗り越えられた。
悟空がくれた、たくさんの幸せ。すごく、すごく大切だったから。いちばんの宝物だったから。
――――――泣いちゃダメ、ここで泣いたら、悟空を困らせてしまう。
「なに言ってんだ? これからも一緒だろ?」
悟空の言葉が、胸に突き刺さる。
悟空の笑顔が、まぶしすぎてくらくらする。
「ん、そうだ、ね……」
悟空に背を向けそう答えてから、は外に向かって走り出した。
「………ちゃん?」
何も考えられず、とにかく悟空とチチが見えないところへ逃げ出したくて競技場から飛び出したに、外で予選が終わるのを待っていたブルマがいち早く気づき声をかけた。
「どうしたの? そんなに慌てて。予選は? 終わったの?」
「ブ、ルマ、さん……」
張り詰めていた気がプツリと切れた。
はたはたと、涙が溢れ出す。
「ちょ、どうしたの!?」
焦り問いかけるブルマに、はあわてて謝罪する。
「や、ご、ゴメン、なさい。なんでも、ないの」
必死に泣き止もうと努力したけれど、どうにも止まってくれない涙。
不意に、ふわっと、暖かくて柔らかいものに包まれた。
「………?」
顔を上げると、ブルマがふんわりと抱きしめてくれていて。
視線が合うとそのアイスブルーの瞳に優しい光を宿していて。
「孫くんと、なにかあったの?」
暖かい温もりと、やわらかい声。
先ほどに向けられたむき出しの嫌悪感とは正反対の、優しく心地いい腕の中。
思わずしがみつき、声を上げて泣いてしまった。
失いかけた温もりは、あまりに大きくて。
背中をさすってくれるブルマの柔らかな手が、とても、とても暖かくて、傷ついた心を癒してくれた。
戦闘シーン、ものすごい端折りかたをしてしまいまして///
それにしても、さん、イイ子過ぎます・・・。

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