「なぁ、
「……はい?」
「おめぇが、好きだぞ」
「……///」
?」
「ぅ、ん…」
「ほんとに、大好きだ」
今まで言えなかったその気持ちが、堰を切ったように溢れ出す。
固かった蓋が開いてしまったら、一度言ったくらいじゃ収まりがつかなくて。何度も何度も言いたくて、言うたびに真っ赤になって視線をさまよわす彼女が可愛くて。
「ん、と……わたし、も」
「ん?」
頭ひとつ下から聞こえてきたその声に抱きしめたまま見下ろすと、の潤んだ瞳と視線がぶつかる。
「だから………わたしも悟空が、大好き、だよ///」
鮮やかに頬を染め、恥ずかしそうにはにかみ笑いながら零れ出たの言葉に、心と身体が熱くなる。
こんなに想っている人がいて、その人が同じく想ってくれている――――――なんて、幸せなんだろう、と。
彼女の甘い香りと柔らかいその感触をもっともっと感じたくて、ぎゅう、と、優しく抱きしめた。





第十九章:ご報告





天下一武道会の出場者を選定する予選が終わり、気づいてみれば悟空との姿が見当たらず。
どこに行ったんだろう? とあちこち探し回っていたクリリン、ヤムチャ、そして天津飯の三人は、武舞台裏の選手控え室で話し合う二人を見つけた。

みんなそろって外で待ってる亀仙人たちに報告に行こうと思い、声をかけようとしたのだが。


中で繰り広げられてる昼メロのようなその展開に、一同いっせいに足を止め、そして口を閉じ、固唾を呑んで一部始終を目におさめてしまった。





「『大好きだ』だってさ。あの悟空が」

口元を押さえながら、まいったぜ、と呟くヤムチャ。

「こんなとこ、見てしまってよかったのか?」

硬派な天津飯は、のぞき見のような自分たちの行為に罪悪感を感じている。


「このやろ〜!!! やりやがったな、悟空っ!!!」


我慢できずに叫んでしまったクリリンの声に、ビクッと大きく肩を震わせてこっちを振り返った二人が、次の瞬間ボッと顔から火を噴いて固まった。



「なっ………!!! お、おめぇたち、いつからそこにいたんだ!?!?」
「え! や!! ぜ、ゼンゼン気づかなかった―――――!!!」


目の前の愛しい相手のことでいっぱいいっぱいで、それを傍観していた三人の気配にすら気づかなかった悟空と。見られていたとは露知らず、『すき』を連発したどころかしっかり抱きしめ合っていたりして。



は、恥ずかしい……!
 恥ずかしすぎる!!!



「いやいやいや、悟空。お前はよくやったぞ! 何せ逃げようとするちゃんを……」
「わーーー!!! やめてくれよヤムチャ!!!!!」
「後ろからギュウッてして『おめぇが大切なんだ』かぁ!? よくもまぁそんな言葉がその口から出てきたもんだな、悟空よ」
「く、クリリン!!! やめてくれーーーーー!!!!!」



ニヤニヤ笑いながら囃し立てるヤムチャとクリリンに耳まで真っ赤にして必死に抵抗を試みるが、やっちまったことを今更取り消せるはずもなく。
まぁ、取り消す気もないが「全部見られていたのか!!!」と、壊れるんじゃないかと思うくらいドクドクとさらに心臓が脈打つ悟空と。


「悪かったな。見る気はなかったんだが……」
「ふえ!?!? あ、ぁいえ!! えぇと、えぇと〜〜〜〜〜〜///」

大騒ぎするクリリンとヤムチャと悟空を潤みきった瞳に映したまま顔どころか体中を沸騰させて未だにカチンと固まっているに申し訳なさそうに声をかける天津飯だったが、それに「気にするな」なんて言える余裕は当然のことながらあるはずもない




『大好きだぞ、
『わたしも大好きよ、悟空』

悟空のまねをするヤムチャとのまねをしたクリリンがひしっと抱き合って、見せ付けられたことを再現してみせる。


「たのむからやめてくれーーー!!!!!」
「いやーーー!!! ホントやめてくださいぃいーーー!!!!!」



だんだんエスカレートしていくその様に、悶え死にしてしまいそうな悟空とが頭をかかえて恥じ入りMAXで叫んだ。

けれども。
なかなか見られない鈍感悟空のあわてようと、美少女のいっぱいいっぱいの真っ赤な顔が、さらにクリリンとヤムチャの悪戯心を刺激してしまっていることに二人は気づかない。


「よぉし。この勢いで武天老師さまたちに報告だ!!!」
「おう! そりゃいい考えだ、クリリン!!!」



その場は大騒然。
大爆笑でなおもノリノリにからかい続けるクリリンとヤムチャ。
からかわれ必死な形相でそれをやめさせようとする悟空と
その大騒ぎをあっけに取られて傍観している天津飯。










――――――――――――そして。



ギャーギャーワーワー大騒ぎをしながら向かってくる天下一武道会出場組を出迎えた亀仙人たちは。

「なにを騒いどるんじゃ、あやつらは……」
「さて、なにか発展があったかしらね〜vv」
「「「はぁ〜?」」」

呆れたような亀仙人の声と、笑い含みに瞳をきらめかせるブルマと、そんなブルマの発言に首をかしげるランチ・ウーロン・プーアルである。


いち早く亀仙人たちに気づいたクリリンが、片手をあげて破顔した。

「あ、武天老師さま〜! それから皆も!! 聞いてくださいよまったくもう!!! ねっ、ヤムチャさん!」
「おう! 驚きの一大報告ですよ!!! なっ、天津飯!」
「あ、ああ………」

ヤムチャが次に言葉を継いで天津飯に視線を投げかけ、話を振られた天津飯は困ったように頷いた。



「ぎゃーーー!!! ほんとマジやめてクリリンさん!!!!!」
「待て、待ってくれヤムチャ!!!!!」


クリリンに手首を捕獲されたと、ヤムチャにヘッドロックをかけられた悟空がずるずると引きずられるように連行されていて、その後ろから微妙な表情で天津飯がついてくる。

その異様な様子に見学組の5人は呆気に取られてしまった。





「―――――――――てゆうか、おまえらさぁ。予選は通ったのかよ?」

ウーロンが呆れながらもとりあえずそう聞くと、出場組でただいま唯一まともな思考回路を働かせている天津飯がコクリと頷いた。

「あ、ああ。それは問題ない。ただ、餃子だけは負けてしまったが…」

「な、なんと…! それは残念じゃったのう。しかしみんな、ようやったぞ」
「まぁ、当然よね」

亀仙人が労い、ブルマが頷く。

「じゃあ、やっぱりさんも強かったんですねっ」

ランチが弾むような声を上げてくれたのだが、今のにそれに答える気持ちの余裕はまったくなく。
代わりに答えてくれたのは、やっぱり一番普通の心理状態に近い天津飯。

「流石に天界で修行しただけのことはある。超一流の動きだった」

おぉ〜、と5人分の感嘆の声は、当のの耳には届かない。


の今の心理→どうしよう恥ずかしい逃げ出したい放せクリリン言うなヤムチャ!!!!!


「孫もかなり鍛えられたようだ。実力の四分の一も出していないだろうな」

天津飯の言に、やはり感嘆の声が上がったが、当然いっぱいいっぱいの悟空がそれを聞いているワケもなく。


悟空の心の叫び→拙いいっそ口封じかイヤそれは流石にやべぇどうしよう何とかしないと!!!!!





「―――――あのヤムチャさま、一大報告というのは武道会出場の報告とは違うんですか?」

なにやらニヤニヤ笑いながら悟空を放さないヤムチャに、彼の忠実なしもべ(?)であるプーアルが問いかけた。





((余計なことを…………!!!!!))





ぎくりと身体をこわばらせ、悟空とが同時に空飛ぶ猫に刺すような視線を向けてしまう。
イヤ、八つ当たりなのは重々承知だし、たとえプーアルがそう聞かなくたってすでにカウントダウンが始まっていることはわかってはいるのだが、今の彼らの心中は緊張と焦りで崩壊寸前で。

突き刺すような悟空との視線と、それとは正反対の待ってましたとばかりのキラキラ輝くヤムチャとクリリンの瞳に同時に晒されたプーアルは、たじたじとしている。



「よくぞ聞いてくれた、プーアル!! やっぱりお前は俺の相棒だぜ!!」

もう喜色満面に、笑顔を精一杯ふりまくヤムチャ。

「みんなも聞いてください! 実はこの二人…………」

「「わあぁぁあぁーーーーーー!!!!!」」




言いかけたクリリンの言葉を必死にかき消そうと、同時にあらん限り声を大にして叫ぶ悟空と
が、次の瞬間。
クリリンとヤムチャが同時に捕まえていた二人を解放した。





「あ、あれ……?」
「え……?」




突然の解放感にそんなおまぬけな声を上げる二人。反射的にクリリンとヤムチャを振り返る。
彼らは顔を見合わせ、それから悟空とに笑顔で向き直り。



「よし! 俺たちが言えるのはここまでだ」
「こういうことは、自分の口で伝えたいだろ? 悟空」

にっこり笑いそう言われ。






LOVE全開の恥ずかしい場面を目撃されて散々からかわれ、さらには真似までされて、恥ずかしさの極致でアタマも本来の機能をほとんと果たしていなかったが。
――――――考えてみれば、告白しあったときのあの幸せな気持ち。やましいこともないのに隠し立てする必要もないし、むしろ親しい仲間たちには言っておくべきことなんじゃないか。

悟空がを見ると、も悟空を見上げていて。
お互いにかなり気恥ずかしくて頬を染めたが、その後柔らかく笑いあう。
いつもはよくわからないの思考回路だけれど、今考えていることは同じことだと確信し、悟空は見学組に向き直った。












「じっちゃん、みんな。ちょっと恥ずかしいんだけどさ。オラ、コイツのこと……のこと、好きなんだ」





「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」





一同、あっ気。


まぁ、二人の様子からしてそのようなことだとは思っていたが、まさかこんなに直球ストレートで来ようとは。
言葉もなく目を皿にして顔を赤くした悟空を見ていた彼らの呆けたような視線が、次に向かうのは当然その片割れの美少女の方で。


悟空と同じく朱に染まった頬をふわりと緩ませるは、みんなの視線をしっかり返すように背筋を伸ばし顔を上げ。




「わたしも、悟空のことが好き、です…///」










シ―――――――――――――――――――ン………。




その場だけ、天下一武道会のざわめきさえも遠のくような静けさが襲い。





次の瞬間。



「いやダメじゃ!! わしだってまだちゃんに触ってないんじゃぞ!!!」
「バカじゃないの!?!? なんで亀仙人さんがちゃんを触んなきゃなんないわけ!?!?」

いきなり駄々をこね始めた武道の神様に、間髪いれず遠慮も何もなく「スケベじじいなんだから!!!」と毒舌を返すブルマ。

「まぁ! ステキですね。とってもお似合いですわvv」

胸の前で指を組み、目をキラキラさせてそう言うランチ。

「おいマジかよ? あの悟空がねぇ…。女には興味ありませ〜ん、って顔してて、まったく侮れんヤツ!!」
「妬かない妬かない」

仏頂面で不機嫌に腕を組むウーロンの肩を、プーアルがぽんぽんと叩く。





「まぁとにかく」

始まった賑やかな大騒ぎを巻き起こした悟空との前に、いつの間にかブルマが立っていて。


「よかったわね、ちゃん」

「ブルマさん……」

にっこり笑ったブルマのブルーの瞳には優しい光が宿っていて、は「ありがとう」と心の底から感謝の言葉を述べる。


「それから孫くん。さっきあたしが言ったこと、忘れるんじゃないわよ」

「あ、ああ。わかってるって」

悟空に向けられるブルマの笑顔は、に向けたそれとはまったくベツモノで。
思わずたじたじとしながら苦笑してしまう悟空。










「ハイ!!! というワケで、ここで一発この二人のLOVEシーンを私とヤムチャさんで再現しようかと…」

「「だからヤメテ(くれ)ーーーーー!!!!!」」



またまた悪ノリを始めようとするクリリンとヤムチャに、悟空との叫びがこだました。




















「やっとまとまったみてぇだなや」
大騒ぎするその一同から少し離れた場所で、チチはその様子を窺い小さく笑って呟いた。
「さて! いつまでココにいたって仕方ねぇ。おらも新しい恋さ見つけねばな!!」
吹っ切ったようにぐっと拳を握りしめまっすぐに顔を上げて、それからくるっときびすを返し、チチは武道会場を後にした。




















「ふざけるのも大概にしやがれ………」
そうやってバカ騒ぎして笑っていられるのも今のうちだ・・・。

冷たく暗い視線が悟空とに向いていたことを、幸せの絶頂にいた彼らは気づいていなかった。





















クリリンさんとヤムチャさんがが悟空さんとさんを引きずってこられるわけがありませんよね・・・イヤンvv
イヤンvvじゃないよイヤンvvじゃ!!! ゴメンナサイませーーー!!!m(__)m