第23回天下一武道会の出場者8名決定!!!
厳選なる抽選の結果、それぞれの対戦相手も決まった。
第一試合、桃白白VS!! 第二試合、天津飯VS孫悟空!! 第三試合、クリリンVSマジュニア(ピッコロ大魔王)!! 第四試合、ヤムチャVSシェン!!
世紀の一大決戦がいま、始まろうとしていた。




第二十章:開幕





亀仙人たちの激励に押され、戻ってきた武舞台裏の選手控え室。
そこでピッコロ大魔王の姿を見つけ、当たり前だがやっぱり予選通過しちゃったのか、、、とがっくりうなだれ、もし大魔王と当たったらどうしよう!!!とハラハラドキドキのの気持ちなんか露知らず。再びヤムチャとクリリンがニヤついたが、二人が何か言うより早く、黄色い髪の毛でサングラスをかけた男の人がクジの入った大きな箱と選手の名簿を持って入ってきた。


「え〜、私が武道会の司会と審判を務めます。よろしくお願いします。」

そう挨拶をしてから選手の人数を確認しようと周りを見回した審判は、クリリンに目をとめ、動きを止めた。

「また、どーも」

片手を挙げてにこっと笑ったクリリンを凍りついたように見つめ、それからポトリ、と持っていた名簿とクジの箱を落とし。




「うわわわわーーーーー!!!!!」




びくうっ!!

緊張でバクバクしていたの心臓がもうひとつ大きく跳ね上がった。




何事!?!?とそちらに視線をやったが見たものは。
大絶叫したどころか両手を合わせて「ナンマンダブナンマンダブ…」とクリリンに向かってぶつぶつお経を唱え始める審判さんの姿。



クリリンはといえば、頭をぽりぽりかきながら、そんな審判の姿に困ったように笑って。

「いやだなぁ…。ユウレイじゃないですよ、生き返ったんです」
「あ、そ、そうだったんですか…」


それを聞いて安心したように胸をなでおろす審判。落とした名簿とクジを拾っていたが。





って、はい!?!?




そんな簡単なものなんでしょうか…? 
だってだって、『生き返った』なんてこと、あるわけ!?!? てゆうか、生き返ったってことは死んだことがあるってことじゃあありませんこと???



ひたすら疑問がわいてくるだが、周りはいたって驚くこともなくそのままスルーしていて。
ここでは死んだ人が生き返るのなんて、フツーに日常にあり得ることなんだろうか。





「ねぇクリリンさん」
「なに?」
「クリリンさんて、死んだことあるの??」




どうも納得のいかないは、思わずクリリンを捕まえてストレートに質問してしまった。



「ああ、そうか。ちゃん知らないんだね、ドラゴンボールのこと」

「ドラゴン、ボール?」



なんだかどこかで、聞いたことのある響き。
なんだろう……? ひどく、懐かしいその言葉。



「簡単に言うと、なんでも願いを叶えてくれる珠、かな。確かにオレ、一回死んだんだけどさ。それに頼んで生き返らせてもらったんだ」

「―――――――――そうなんだ」



こっちの世界には、なんて便利なものがあるんだろう、なんて、ひたすら感心するである。

ちゃんだったらどんな願いを叶えてもらいたい?」
「オラも聞きてぇな」


話に入ってきたヤムチャと悟空を交互に見上げ、眉間にしわを寄せウ〜ン、と唸ってから、ほわりと笑い。

「今はいいや〜。一番の願いは叶っちゃったからね〜」


フフフフ、と顔を赤らめ幸せそうに笑いながら言っているのその『一番の願い』は、本当にもうわかりやすすぎるほど想像がついてしまって。

聞かなきゃよかった、なんて思っている面々はといえば。
からかい飽きたヤムチャとクリリンは、ジト〜、と悟空に殺気と羨望のこもった視線を送り、天津飯は聞こえなかったフリを決めこんだ。

とうの悟空は悟空で、「よかったな〜」なんて、こっちも幸せそうに頬っぺたを赤く染めながらぽんぽんとの頭を撫でていて。





「だああああ!!! ったくお前らは!!!!! 戦いの前の緊張感というものがないのかよ!?!?」


羨ましさが後押ししてか、クリリンがぶちきれて叫ぶ。

ああそうだ、これからクジを引くんだった、なんて今更のように思い出し、再びカチンと緊張し固まると、「なに怒ってんだよクリリン?」と不思議そうに尋ねる鈍い悟空。







そんな賑やかで緊張感のない(だけは緊張していたが)雰囲気の中、天下一武道会の対戦相手を決めるクジ引きが行われた。












「第一試合……桃白白さん………」

呟くようなの声に、悟空が振り返る。

「良かったじゃねぇか、一番たいしたことなさそうなのと当たってさ」


何気にものすごく失礼なことをさらりと言っちゃっている悟空だが、はといえば、顔面蒼白、身体はカチコチ、目に見えて緊張している。


たいしたことない、って言ったって、相手は餃子さんを半殺しにした殺し屋さんで、悟空と天津飯さんの命を狙ってるサイボーグ。明らかに予選で戦った方々とは桁が違う。
大丈夫か、わたし? こんな人と戦って、自分も相手も無傷ですむなんてわたしのポリシー、貫けるのか?


「そんなに緊張すんなって。でぇじょうぶ、勝てるさ!!」



―――――――――その根拠のない自信はどちらからいらっしゃるのでしょうか、悟空さん?



ああ、不安だ。たまらなく、不安だ!!!

「あのさ、……」

「もういいっ! 悟空の『大丈夫』と『緊張するな』は余計にプレッシャーになる!!」


極度の緊張にイライラしていて思いっきり八つ当たりをしてしまったことに心の中ではゴメンナサイと言いつつも、やっぱり悟空のその楽観的な物言いは、今のにとっては苛立ちの原因にしかならない。



「いや、そうじゃなくてさ。そんなに不安なんだったら、その重い服、脱いじゃえばいいじゃねぇか」

「は?」



きょとん、と悟空を見返してくるそのお惚けな顔に、思わず笑ってしまった。
予選の始まる前の着替えの段階でてっきり脱いでくるだろうと思っていたその重量装備をいまだに身につけているを見て、も自分と同じようにギリギリまで着ていようと考えたのだろうと思っていたけれど、その表情から察するに、彼女は脱ぐのを忘れていただけなんだろう。

言われたで、いまだに着ていたそのやたらと重い服の存在にやっと気づき、自分はどこまですっとぼけてるんだろう、と自分のことながら呆れてしまった。





「――――――わたし、なんでまだコレ着てるんだろうね?」

「いや、オラに言われてもわかんねぇけど……」




呆れたように自問自答しただったが、ごく真面目に答えてくれる悟空に苦笑して。


「悟空、ありがと! よし、脱いじゃえ」





靴を脱ぎ、リストバンドをはずし、そして一番重たいアンダーシャツをやっとのことで脱ぎ捨てるに、ヤムチャ、クリリン、そして天津飯はぎょっとしていた。


それもそのはず。
予選を堂々と勝ち抜いてきたとびきり可愛い女の子が、服を脱ぎだしたのだ!!!
悟空はいつものことなので気にもとめなかったし、そのアンダーシャツの下にはちゃんとキャミを着ているも別に気にしていないのだが。





キャミソール姿のは、本当に華奢で。
細い首、細い肩、きれいな鎖骨、そして―――――――――柔らかい曲線を描く胸。





それは本当に短い時間で、はさっさとすぐにポロシャツを着てしまったが。
………あまりに、無防備なその行為。
修行修行で女の子にかまけてなんかいなかった三人にとって、その光景はそーとー刺激的だった。






「ふあ〜。すっごい軽くなったぁ!……って、あれ?」


あまりの身体の軽さに驚き、その開放感に思わず笑みをこぼすだったが、真っ赤になっている三人を視界に収めて不思議そうに首をかしげた。


「あの、どうかしました?」

またなんかヘンなことをしたのだろうか?と少々不安になりながら問いかけるに、あわててそろいもそろって手と首をブンブン振り回し。




「な、なななななんでもない」
「そ、それより、その服片付けようか?」
「あ、ああ。靴とかもどっか寄せといたほうが・・・」




そそくさとが脱ぎ散らかした靴とリストバンドを拾い上げようとしたクリリンがぴたりと動きを止め、アンダーシャツに手をかけたヤムチャが顔色を変えた。




「あ、いいですよ〜。そのくらい自分でするから」


笑ってそれらをかき集めようとしたに向けられたのは、クリリンとヤムチャの驚愕した顔で。



ちゃん……」
「ハイ?」
「今まで、こんなの着て、戦ってたのか………?」


クリリンの声は驚きで上ずっている。



「???………ああ! うん、神様がね、コレも修行のうちだって」

その重い服のことを言われたのか、とようやく思い当たったそれに納得して(何しろそれを着ているのが普通になってしまっていたので)が破顔する。

「どうした」という顔でヤムチャを見た天津飯に、ヤムチャは黙っての着ていたシャツを渡すと、天津飯はその重みでガクン、と体制を崩した。




「全部で100kgはあるぜ………?」
「な、なにでできてるんだ?この服……」
「それより、こんな重いのを身につけて、どうやってあんなに速く動けるんだ・・・?」



先ほどの華奢な女の子を見る目とは180度ちがう、驚愕の瞳の色を感じて、はたじたじと。


「あ、え〜と、それは――――――単なる慣れですよ、慣れ!!」

てへへ、と困ったように笑い、頭に手を乗せながらそう言っているだが、クリリンたちからしてみれば、単なる『慣れ』で100kgものハンディでもアレほどの動きを見せた彼女の実力に正直かなりのショックを受けた。
今になってようやく、悟空が昨日再会したときに言った『の実力は相当なもんだ』の意味を飲み込んだような。そしてそのあと『そんなことはない』と必死こいて言っていたは、本当に自分ではそんな力はないと思っている様子。いわゆる天然、というやつだ。


天津飯こそ突然現れた悟空以外の好敵手にゾクっとするような高揚を覚えたものの、クリリンとヤムチャにいたっては、と当たらなくてよかった、と胸をなでおろす始末。さすがに天下一武道会の大舞台で大勢の観客たちの前で、外見だけは思わずこっちが守ってやりたくなるような女の子に負けるのは、恥ずかしいというかなんというか。





そしてはといえば。
気になる視線を投げかけられて困惑していたが、それ以上に重石の取れた身体の軽さに驚いていた。






「すごい、ホントに軽い……」


呟くように漏れた声。それはもう、感動したかのような声で。
お風呂タイムのときにしか取ったことのなかった重量装備。当然夜のお風呂のときは日中の修行でクタクタで、着てなくたって身体はナマリのように重かったから、あんまり感じなかったこの軽さ。




信じらんない……ちょっと今、負ける気がしない!!!


このとき初めて、は自分の力に自信を持った。




「どうだ?」

悟空がの顔をのぞきこみながらそう問うと、の顔にはかすかな笑みが浮かんでいて。

「うん……なんか、やれそうな気がするよ」



悟空を見返すの瞳は、穏やかな中に幾分強い光が宿っていて、緊張のあまりカチコチだった身体が滑らかに動き出し、軽くストレッチを始めた。















『ご来場の皆様、たいへん長らくお待たせいたしました! ただいまより第23回天下一武道会を始めます!!!』

武舞台に立った審判のマイクを通した声が、控え室にも響いてくる。
同時に湧き上がる大音量の歓声。


『第一試合は桃白白選手と、今大会の紅一点、選手です!! では両選手、どうぞーーー!!!』



パンパンと自分の顔を叩き、はキッと顔を上げた。

「頑張れよ!」

「うんっ!」


悟空の声援にガッツポーズを決め込み、は大歓声の巻き起こる武舞台へと歩き出す。



先に歩き出した桃白白が、を振り返りフン、と小バカにしたように笑った。


「安心しろ、とりあえず殺しはせん。オレ様の狙いは天津飯と孫悟空なんでな」
「はぁ……」

そんなのは無理だと思います、、、なんて、ものすごく自信たっぷりに言う桃白白の発言に心の中で突っ込みを入れながら、はあいまいに返事をした。







「やってやれーーー!!! 負けるんじゃねぇぞーーーっ!!!」


沸きあがる大観衆の中ひときわデカイ声が響き、そちらに顔を向けたは、金髪の女性が拳を握りしめて自分を応援してくれているのを発見し。








―――――――――誰???






ポカンと武舞台の中央で不思議そうに首をひねるに、その女性のとなりにいたブルマが苦笑した。


「ランチさんよ?」




え゛!? ランチさん!?!?
って、ふわんとおしとやかで今みたいな美人というよりも可愛らしい感じで何より大声なんて出さないような女の子の中の女の子って感じのあのランチさん!?!?





「うそぉ〜!!!」




おまぬけな声を上げるにはもはや、緊張感が欠片も感じられず。



「ランチちゃんはくしゃみするたびに良いこと悪い子が入れ違ってしまうんじゃよ」


説明してくれた亀仙人。
はといえば、いまだに目を丸くしていて、この世界ってホント不思議ワールドだこと……、なんて今の状況などまったく無視して思考を吹っ飛ばしている。





『あの〜、始めてもよろしいでしょうか……?』





「ぁえ!? あ、は、ハイ!!! ご、ごごごゴメンナサイ!!!」


審判に遠慮がちに声をかけられ、ハッと我に返ったは、真っ赤な顔で恥じ入りマックスでぺこぺこ謝りだした。今にも試合が始まるという状況にもかかわらず、すぐにどっかに行ってしまう自分のアタマがなんともアホっぽく思える……(涙)


「ふざけおって…。貴様、オレ様をなめとるのか……?」

「ゃ、い、いえ、そんなつもりはまったく…」





自分を無視してトリップしまくるに、桃白白はかなりご立腹の様子で、はあわててブンブンと手を振った。







まぁ、とにかく。



『では、第一試合、始めてください!!!』



審判さんの張り上げた声が快晴の空に響き渡り。



「あっさりと片付けてやろう……」


一礼したに桃白白が自信たっぷりに言う。
対するは深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。目の前の相手を見据え、軽く微笑んだ。


「よろしく、お願いします」


まずは、挨拶。
それから、心を静かにして、相手の気配を捉えること。















ざわめきと歓声の入り混じる中、今まさに、天下一武道会がついに開始された。





















本っ当にやっとのことで始まりました、天下一武道会///
ハイ、対戦相手かえちゃいました…ゴメンナサイ!!!(≧人≦;)