悟空が、「結婚しよう」って言ってくれた。
わたしはもう嬉しくて嬉しくて、舞い上がってしまって。
そんな時ふと感じた視線。
それはシェンっていうオジサンからの視線だったけれど。
あり得ないとは思ったけど、この感じ。この視線。
「―――――――――神様?」
思わず呟いたわたしに、その人はかすかに頷き、それから人差し指を口元に当て、ウインクした。
なんで神様がこんなところにいるんだろう…? もしかして、ピッコロ大魔王を倒すため…?
じゃあ、神様がピッコロを倒してしまえば、悟空は闘わずにすむのだろうか。
第二十二章:準決勝その1
第二試合は、悟空VS天津飯。
前大会では決勝を戦い、優勝は天津飯だったという。
天津飯もさすがに強く、悟空はやっと重量装備を脱ぎ、それからは悟空の圧勝だった。(あまりの悟空のカッコよさにの目はハートマーク///)
第三試合で、クリリンとマジュニアことピッコロ大魔王が闘い。
クリリンも果敢に応戦して、少なからずピッコロ大魔王を驚かせていたが、やっぱり最後は大魔王が勝った。(クリリンが空を飛んだり、ピッコロの腕が伸びたり…摩訶不思議〜)
第四試合はシェンこと神様と、ヤムチャの試合で。
ことごとくダメなおっさんを演じていたシェンに、ヤムチャはなめてかかっていたが、途中でマジになったシェンが圧倒的な強さで勝利を手にした。(ヤムチャが辱められてて可哀想だった)
そんなこんなで、準決勝を闘うメンバーが出揃い。
すなわち、、悟空、マジュニア、シェン。
うわっ、錚々たるメンバー揃いだこと…。
悟空に大魔王に神様! その中にぽつねんと浮いているわたしって一体………(汗)
あれ?
――――――なんだ? 何かが今、引っかかった。
準決勝進出は、、悟空、大魔王、神様で。
第一試合で勝ち進んだは、当然第二試合で勝利した方がお相手で。
え〜と……?
「―――――――――っあーーーーー!?!?!?」
びくびくびく!!!
は反射的に声のかぎりに大絶叫。
思い当たったその答え。さきほど胸に引っかかったのは、このことだったのか。
その場にいた悟空やその仲間たち、そして神様、さらにはピッコロ大魔王までもがその突然の叫びに肩をビクつかせた。
「な、なんだよ。いきなり大声上げて」
ちょっと前までいつものように穏やかだったの突然の奇怪な行動に、悟空が瞬きをしながら問うたが。
行き着いてしまったその衝撃的な事実が事実なだけに、彼女の顔は蒼白でいっぱいいっぱいな様子。尋常ではないその様子に思わず心配になってしまったピッコロを除く面々をよそに、は突然ガバッと顔を上げ、悟空を必死な瞳で見上げた。
「つ、次!! 次って、次って……」
「ああ、1時間の休憩のあとだってさ」
そうじゃないだろう!!!!!
「ちがーう!!! 次だよ悟空! 次わたし、アナタと試合するんだよ、悟空さん!!!」
ぽか〜ん、と。呆気にとられたような悟空。
「「「うえええええええええ!?!?!?」」」
反応したのはクリリン、ヤムチャ、天津飯。
仲良く驚愕の叫びをそろえた三人が、必死なからそろって悟空へと視線を流した。
自分たちの試合のことで頭がいっぱいで、そっちまで脳みそが回ってなかったが、考えるまでもなくそれは至極当然なことで。
「…………そっか。そうだよなぁ」
しばらくぽけっとしていた悟空が、三人の好奇な視線(他人事なので悟空がどんな反応をするか期待していたりする)とのいっぱいいっぱいな視線を受けて、腕を組みながら納得したように頷いた。
「そうか、次の相手はか。そんじゃオラ、手加減ナシでいくからな!」
好敵手に向ける好戦的な笑顔。
きりっと引き締まった表情と、キラキラ煌めく瞳。
あまりな素敵笑顔に悩殺寸前のだったが、今そんなことでやられて死んでる場合ではないのだ!!
一方クリリンたちはというと。
やっぱりそう来たか、とうなずきあっている。
強い相手と戦うことが何よりも好きな悟空だが、想いすぎるくらい想っているが相手ではやはりやりにくいのではないか、とも思っていたのだが。
その相手も信じられないくらいの実力者なのだ。ここでやってみたいと思うのが悟空の悟空たる所以だ。基本的には変わってないんだな、と苦笑してしまったりしている。
「やだ! わたし、悟空とやりたくないっ!!!」
「なんでだよ? いつも一緒に組手してただろ?」
「組手!? 試合と組手、一緒なワケ!?!?」
「ま、おんなじようなもんだろ?」
手加減ナシ発言だとか、試合と組み手がおんなじとか、好き勝手言ってくれちゃう悟空に、はおろおろと周囲を見回し助けを求めるような視線を投げかけたのだが。
「はは、ちゃん頑張れ!!」
「オレは悟空よりちゃん応援してるよ!!」
「どんな試合になるか楽しみだ」
クリリン、ヤムチャ、天津飯も、の気持ちなんか無視して好き勝手言ってたりする。
実力伯仲の二人が激突するのを見てみたいのは、武道家の血というものだ。加えて恋人同士の彼らがどんな戦いを繰り広げるのか、ヒジョーに興味がある。(←クリリン、ヤムチャはむしろこっちのほうが比重が高い)
まずいっ!! このまま流されては本気で拙い!!!
困りに困りきったがとった行動は。
ダダダダ、とシェンのもとへと走り、その胸倉をつかみ、激しく揺さぶって。
「わたしは!! 実践の経験をするために天下一武道会に出場したんですよね!?!? なのになんで!!! なんで悟空と戦わなきゃなんないんですか!!! やらなくたっていいですよね、神さ―――――むぐ!」
「ま、待て! 落ち着け!!」
こんなところで正体をバラされてはたまったもんじゃない。緊急事態のため、人間の身体を借りてここに居るわけだが、本来神は直接下界にかかわったりはしないのだ。
というわけで、今自分の正体を下界の者たちに気取られるのは非常に拙い。
あわてての口をふさいで押さえつけ、悟空もそうだったが、まったくこっちもキレると何をするかわからんヤツだとため息混じりに思っていたら。
「……オイおっちゃん。返してくれよ」
知らない男(しかもおっさん)に押さえつけられているを目の当たりにし、悟空が不快に思わないはずもなく。
少々据わった悟空の瞳の色に、思わずたじろく神様だ。ってゆうか。
が気づいているのに、それより二年も長く一緒にいた悟空が自分に気づいていないなんて。
はぁ、とを放すことも忘れてため息をつくシェンを見る悟空の目つきが、だんだん鋭くなっていくのに気づいたは、自分がいっぱいいっぱいだったことも忘れ神に視線を向け。
「あの、シェンさん。放さないと『シェン』さんの身が危ないと思いますよ…」
乗り移っているであろう神様は大丈夫だと思いますが、とが暗にそう込めると、ハッと気づいたように悟空を見た神は、彼の「ぶっ飛ばしてを取り返すか」的なヤバすぎる表情に、あわててを開放した。
「悪ぃな、神様。神様にだってオラのを触らせるのヤなんだよ」
…………………気づいてたのか。
悟空が神にしか聞こえないくらいの小声で囁き、苦笑する。
そんな悟空に驚きを隠せない神様。
コイツはこんなキャラだったか…? いや、に逢う前の悟空はもっと、こう、なんというか、、、うむ。
―――――――――白かった!!!
いや今でも純粋で素直で透き通った魂はそのままなのだが、純粋で素直なだけに、に対する愛情があまりにもまっすぐで。恐ろしいほどに、まっすぐで。
「で、ですね!? 話は戻りますが、わたし、悟空と戦う必要ないですよね!? 別に棄権しちゃっても問題ないですよね!!!」
開放されたはそんな悟空に気づかず、再びシェンに向き直り、必死に詰め寄ってくる。
「あ、ああ。そうであるな…。ここでおぬしが孫と戦わずとも、さしたる問題はないが…」
「ですよね〜♪」
シェンの答えを聞いて、やっと落ち着いてほわっと笑う。
神のお許しが出たのだ。コレで…コレで悟空と戦わずにすむ………!!!
思わず「よっしゃ〜!」とガッツポーズを決めてしまうだったが、それを横目で見ていた悟空がそんなことで引き下がるはずもなかった。
のことは大好きだが、ソレとコレとは話が別だ。
愛情と戦闘意欲は、別なのだ。
「オラ、強ぇヤツと戦うの大好きだ」
「知ってるよ」
悟空の言葉に、間髪いれずにが答える。
そりゃ、強いお方と戦うのが大好きなのは、一緒にいればいやでもわかる。なにせ大魔王と名のつくような人物とこれから一戦交えようというのだ。ふつうならあの冷たく威圧的な雰囲気に飲まれて身がすくむというものだろうその気を真っ向から受け止めて、堂々と浮かべた、鋭利な微笑。普段の穏やかな笑みも素敵だけど、あのときの悟空はとても、とってもカッコよくて。その鋭い瞳と笑顔に、さらに惹かれた自分がいた。
「うん。だから、と戦ってみてぇ。おめぇ、スゲェ強くなったぞ。はっきり言っちゃうけど、組手してっときだって、オラ手ぇ抜いたことなかったんだ。だから……あの重てぇ服脱いだおめぇと、真剣勝負やってみてぇよ」
流されちゃいけないって、わかってる。悟空と戦うなんて、わたしにはムリだ。悟空はわたしの強さに期待してるけど、悟空が思ってるほどわたしは強くない。………失望されるのが、怖い。
それなのに。
真剣な口調、真剣な表情。
大好きな悟空に、そんな目で見つめられてしまったら……
「――――――わかりました。やります」
気づいたら、そんな言葉がするりと口からこぼれ出ていた。
……やっぱり悟空にはかなわない。
ずっと前に、悟空には逆らえない自信があるって思ったけど、いまだにそれは健在らしい///
「でも、でもねっ! 条件が二つほど…」
「なんだ?」
「わたし、気功波つかえないんで、カメハメ波とかはナシだよ。それと、空も飛べないから武空術もナシね」
「わかった。楽しみだな〜♪」
にっと笑う悟空の瞳は、期待に輝いていて。
そんなに期待されていると思うと、緊張する半面、は不思議と誇らしさを感じた。
『10分後に武道会が再開されます』
そのアナウンスに、きりっと表情を引き締める悟空と。
相変わらず、感情の切り替えは早い。
膝の屈伸を始める悟空と、軽くストレッチを始めるは、それまでのほわふわバカップルだった二人とはまったくもって別人だ。
審判が武舞台に立ち、マイクのスイッチを入れた。
『さて、大激戦の末ベスト4が決まり、いよいよこれより準決勝へと突入いたします!! 準決勝を戦うのは、選手、孫悟空選手、マジュニア選手、そしてシェン選手! いずれもとんでもない実力を秘めた武道かばかりです!!!』
審判の声を合図に、悟空とは準備運動をやめてお互いに向き合った。
悟空の顔には、好敵手に向ける鋭い笑みが浮かび。
対するも、戦闘体制の鋭利な光をその瞳に宿して。
「思いっきり行くぞ」
「真剣勝負だね」
にこりと笑いあった。
『それでは準決勝最初の試合は、選手と孫悟空選手です! 孫選手は前大会の準優勝者! その強さはまさに本物です! 対する今大会の紅一点、選手! 今まで無名だったことが不思議なくらいの超達人です! では、登場してください!!!』
武舞台へと向かう悟空と。
微妙な気分でそれを見送る神。(または流されたか…と少々同情気味)
さっきまでのおとぼけな二人とは思えない、穏やかさを消し去ったその表情にごくりとツバを飲み込むクリリン、ヤムチャ、天津飯。
そして。
「どれ。一つ、腕前の程を見ておくかな」
今まで見向きもしなかった大魔王が、低く呟いた。
武舞台に登場した二人に、ひときわ大きく歓声が上がる。
『では、始めてください!!!!!』
審判の張り上げた声が、晴れた空に響き渡る。
悟空とは互いの引き締まった表情を見て、一礼した。
「「よろしくお願いします!」」
実力伯仲。
二人の真剣勝負が今、始まろうとしていた。
というわけで、悟空さんとさんの試合開始〜。でも戦闘描写は例の如くぶっ飛びますm(__)m
どんな戦いが繰り広げられたのかは……ご想像にお任せいたします〜///
まいどいい加減で申しわけありません(≧人≦;)

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