どぉしてっ!
どぉしてあの時、あなたの笑顔に負けてしまったんだろう・・・uuu
確かに、落ち込むヒマなんかない今の現状。
でも……体力的に、キツすぎないか……?
第四章:バトル!?
……『一から』って、言ったよね………?
……『一から教えてくれる』って、言ったよね、ポポさん…!!
これが、『イチ』なのか!?!?
「し・・・死ぬ・・・!!!」
――――――は、虫の息だった。
彼女の寂しさを紛らわすために悟空がありがたくも考えてくれた手段、それは、「武道の修行をする」だった。彼は純粋に自分が楽しいと思っていることを薦めてくれた。そんなことは解ってる。
解ってはいるのだ……でも。
にとってはちぃーーーっともありがたくないことが、今日一日で判明した。
病み上がり(?)のを気遣い、実際に修行を開始したのは、彼女が悟空の素敵笑顔にやられてから三日後。その修行の内容とは。
まず、早朝。
起きて軽く身体をほぐし、ランニング、神殿のお庭を50周v
続いて、朝。
基礎体力をつける修行。
イコール、腕立て、腹筋、背筋。それぞれ、一万回vv
そして、朝食。(うぷ…ッ食えない…!!!)
午前中。
精神を鍛えるとか何とかで、じぃ〜っと座禅を組むこと約五時間。(動くと容赦なくミスター・ポポの制裁が入る。)トイレにも行かせてもらえず、足はビリビリ痺れだすv
そして、昼食。(猛烈に喰らう!!!)
午後。
ミスター・ポポを相手に組み稽古。多少手加減はしてくれるものの、遠慮せずにバカスカ殴ってくれるおかげで、身体中生キズ&痣だらけv
夕方。
夕御飯まで精神鍛錬の座禅再び。
そして、夕食(ナマリのような手をかろうじて動かし、ゆっくり食す)
就寝前。
腕立て、腹筋、背筋、再び。それぞれ、五千回vvv
そして、就寝。(布団に入ったら三秒で深い眠りの世界へ・・・)
これらのメニュー(?)を、なんと片方10kgのリストバンド、40kgのアンダーシャツ、そして片方20kgの靴を履いてやれという……
………こんなことしてて、生きていられるのだろうか。(否、ムリだろう。)甚だ疑問であるuu
当然のことながら、は一般人。育った環境から、体力と運動神経は人並み以上だが、それでも運動能力テストも体力診断テストも一般的な範囲内なのだ。
近況では運動といえば、体育の授業とクラブ活動くらい。
格闘技においては、多少興味があったものの、習ったことなんか一度もなくて。
それなのに。ああ、それなのに。
常識からして、こんなメニューをこなすことなど出来るはずがないだろう。
「だいたい何だ、一万回って!! そんなん出来るワケないじゃん!! 腕立てなんて、どんな頑張ったって五十回が限界だよ!!!」
的には、五十回だって大したもんだと思っていたのに、それをはるかに上回る(というか不可能かつ不可解な)数字を申し渡された彼女は、ぶちぶち文句を零しながら、そして死にそうになりながらもなんとかしようと彼女なりに努力はした。
…のだが。
やっぱり、ムリっす。(そりゃ、ムリだろう)
結局、第一日目にこなせたのは、ランニング50周と腕立て150回。それでもかなりの快挙だと思うけど。
「だんだん、できるようになる」というミスター・ポポの励ましの言葉に、心の中ではいや無理、と思いつつも、声を上げる気力も無く息も絶え絶えにとりあえずうなずいて。
そんなこんなで無理難題な修行メニューに取り組むこと約1ヶ月。
は、どうにかこうにか、その不可能と思われた修行内容をクリアしていた。(あらまあウソの様vv)異世界を超えたに、何か不思議な力が働いていたのかもしれない。そうでもなければこんなに早くこんな絶望的な修行を可能にする身体能力を発揮することはなかっただろう。
もちろんそれだけではなく、も頑張ったとも。一日も休むことなく、一途にマジメに。
そりゃもう三途の川が目前に迫ってきたことなど数え切れないほど。それでも頑張れたのは。
言うまでもなく、悟空の応援があったからこそ。
彼も神殿にやってきてすぐの頃は今のと同じ修行をしていたようだが、現在は朝食後に神によってどこかに送られて、下界で修行をしている。
余談になるけれど、悟空とが出逢ったのも、実は神が修行のために悟空を下界に送ろうとしたときに、誤っての世界に送ってしまったようだ。神は万能だというが、時には失敗することもあるらしい。(そういうことにしておく///)
それはさておき。
一度下界に送られた悟空は、たまにはそのまま2、3日そちらに滞在することもあるけれど、たいていは夕飯前に帰ってくる。帰ってくるたびに、死にそうになりながらも前日よりひと回り成長しているの姿が嬉しいようで、彼女がその笑顔に弱いことを知ってか知らずか(たぶん後者)それはもうに〜っこりとやわらかく暖かく笑んで。
「今日も頑張ったな!」とか「昨日と見違えたぞ!」とかお褒めの言葉を掛けてくれるのだ。
大好きな悟空が労ってくれる。
自分よりもきっと桁外れな厳しい修行をしているんだろうと思われる悟空が、疲れを見せずに自分を励まし笑顔を向けてくれる。
それが嬉しくて、もっと喜んでもらいたくて。
我ながら、不純なやつだ///
悟空が笑ってくれるだけで、身体のダルさも死にそうな気分も吹っ飛んでしまうから不思議なものだ。
(これが『恋の力』ってヤツかな…へへvv)
なんて、先刻までの瀕死の形相が嘘のように、へらりと頬が緩んでしまうから困ってしまう。
そして、悟空は悟空で、疲れた顔をしているが自分のかける一言で元気を取り戻して笑ってくれることに、なぜだか満たされるような、そんな気分を味わっていた。
不思議なヤツだと、そう思う。
泣いてても笑ってても、気になって仕方がない。
最初に逢ったときから、もうすでに振り回されていたような気がする。
なんだかなぁ、と悟空は苦笑した。
よくは判らないが、どうも気になる。
半ば強引に誘ってみた武道の修行に、全身全霊で励んでいる。その成長の早さには本当に驚きっぱなしで。
……だから、その素質があるから、こんなに気になるんだろうか。
悟空は初めてのその感情に戸惑っていたが、少し考えた後。
「ま、いっか」
と頭の後ろで両手を組んで、空を見上げた。
手合わせするのもそんな遠い夢でもないな〜、なんて思いながら。
そして、さらに月日は流れ。
は、気の動きをつかむところまで成長していた。
これは毎日の精神鍛錬のタマモノで、心を無にして相手の気配を感じ取るというものだった。
夕食前。夕日の陽光を受けながら、いつものように座禅を組んで目を閉じる。
感じるのは、神様の気。ミスター・ポポの気。
この二人の気は、とっても不思議な感じがする。なんていったらいいのか、とにかく言葉に出来ない形容しがたい気なのだ。さすがに、天界人だ。
ちなみに、今は感じない悟空の気は、包み込むように暖かくて、柔らかくて、心が和んでしまう、すごくすごく気持ちよく感じる気。だけど、修行中は圧倒されるほど大きく強くなる。
悟空、早く帰ってこないかな〜、なんて座禅を組みながら邪念を飛ばしていたとき、ふと、初めて感じるもうひとつの気配を感じた。
(あれ? あれれ?)
聞いたところによると、神殿にやって来られるのは、心の清く正しい人で、神様に選ばれた方に限るってハズなんだけど。
それならアナタは何故に此処にいる? って聞かれたら、答えに窮してしまうではあるけれど。(アクシデントです、アハハ〜)
でも、それが原則だったはず。
今、が感じている気は、ちょっと良くない気だ。
攻撃的っていうか、悪意があるっていうか……。
目を閉じてるのにわかってしまうなんて、ホント便利な能力だことvv なんてのん気に言ってる場合じゃないや。とにかくポポさんに知らせよう。
そう結論を出して、は目をあけてヨイショ、と立ち上がったとき。
目の前にいたそのイヤな気配の持ち主が、見たくもないのに視界に入ってしまった。
(ば…ば…ば…、バケモノーーー!?!?!?)
、絶句。
そこにいたのは、身体を蒼いうろこで覆われ、背中からは黒い大きな翼、頬まで裂けた口に、そこからのぞく赤く長い舌。
どこから見ても立派な化け物だ。
「な、ななな、なに!? え!? だ、誰!?!?」
…もうお解りかと存じますが、さんはパニくると、ストレンジなことを言い始めます。
バケモノに向かって、誰、はないだろう。
頭の中にはレーセーに突っ込みを入れる自分がいる。
てゆうか、言葉、通じるんだろうか?
「あ、そ、それより、ポポさん。ポポさん呼んでこなきゃ!!!」
立ち上がった当初の目的を思い出し(遅いよ)、は神殿に入ろうときびすを返しかけたが、そのとき、低い含み笑いとともにバケモノが喋りだした。
「へぇ。神殿には神しかいないと思っていたが、人間もいたのか」
…すっげぇ!!! 喋ってる、コイツ……!!!!
驚いた。いや、ホント、純粋に驚いた…!
まじまじとバケモノを凝視して、は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「俺様は、神の後継者になろうとここまで来たのだが…。ちょうどいい。神への見せしめに、お前を殺してやる」
「は、はいぃいーーー!?!?」
何故そうなる!?
はテンぱる頭を必死に動かそうとするが、考えがまとまるのをじっと待っていてくれるほど、バケモノは人(?)が良くなかった。
「死ね!!!」
「や、ちょ、ま、、、死にませんーーー!!!」
どう動いたのか、どうなったのか。
理解不能のままはやっぱりちょっとおマヌケな叫び声をあげながら、知らずにバケモノの攻撃をかわしていた。
「な、なんだと!?」
「あ…れ? わたし、無事・・・?」
同時に重なるうろたえた化け物の声と呆然とするの声。
先に気を取り直したのは、バケモノのほう。
ギロッ、とをにらみ、今度は本気モード。
「今度こそ…死ね!!!」
「ゃ……」
今まで命を狙われるような物騒な世界とは無縁で平和な世界を生きてきた自分にとって、この状況がイマイチ実感の湧かないものだったのだが、本気モードのバケモノを目の当たりにして、さすがにの心臓は恐怖と緊張でバクバク騒ぎ出した。(だから遅いって)
「やーーー!!!やだやだ!!!死なない死なない死なないですぅ!!!!」
もう、メチャクチャに手を振って叫び、は『死なない』をアピールする。
こんな超不自然な未確認生物に殺されるなんて、ゼッタイ嫌だ!!
そのの拳が、偶然にもバケモノのみぞおちに炸裂した!
たまらずバケモノが倒れこみ、はワケがわからないまま呆然とその場に立ち尽くした。
「……、おめぇ、なに騒いでるんだ?」
天界に帰ってきた悟空は、庭のほうから聞こえる賑やかなの声につられて外に出、神殿の入り口に立っての様子を見守っていたミスター・ポポに目をやってから、彼女に声をかけた。
「ふぇ? あ、悟空!!!」
涙で潤んだ瞳で悟空を認識。
瞬間、ダダダダダーーー!!!と悟空のほうに走ってきたかと思ったら、そのままドン、と体当たり。
「悟空悟空悟空〜!!! ば、バケモノがね、バケモノがね、喋ったり殺したりするんだよ〜!!!」
「???」
意味不明なことを言いながら思い切り体当たりをしてきたをとりあえず受け止め、良くはわからないが彼女が走ってきた方向に目を向ける。
そこには、確かにバッタリ倒れているバケモノの存在。
泣きじゃくるを見てから、再びミスター・ポポに目を向ける。
「が、退治した」
ミスター・ポポの声にがピクッと反応し、悟空から離れて今度はポポに喰いついた。
「ポポさん! 見てたんなら助けてよ!!! 死んだらどうすんのさ!!!」
泣きながらも元気そうなと、「やられそうなら、助けた」と言いながら彼女を落ち着かせるようにポンポンと肩をたたくミスターポポと、そして庭に転がっているバケモノ。
ようやく事の次第を理解した悟空は、ゆるゆるとその端正な顔を綻ばせて。
「やったな、! 初勝利!!!」
バシン、と彼女の背中をたたく。
「ケホッ…はぁ?」
軽く咳き込み悟空を見上げ、そこにある素敵笑顔をとらえたの顔が、みるみる赤くなっていく。
「ぁ…でも///でもね、闇雲に手を振ってたのが当たっただけで、べつに特別攻撃したとか、そんなんじゃなくってね、と、とにかく、偶然…そう! 偶然助かったってだけの話だよ!!」
故意にやっつけたわけじゃない、と耳まで真っ赤に染めながら、笑顔の悟空に必死に状況を説明する。
その必死な様子を「そうか」とうなずきながら嬉しそうに聞く悟空。
彼女は照れまくっていっぱいいっぱい。
彼はそれを見て、異性に対して初めて「可愛いな」なんて思っていた。
とにもかくにも、初勝利vv
とにかく、そういうワケなんです。
……すいません!!! ちょっと闘わせてみたかっただけなんです!!!(>д<;

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