数日前。
はミスター・ポポに、悟空が神殿で修行している理由を聞かされた。
それを聞いてからというもの、彼女は何をすれば悟空の役に立てるのか、真剣に悩んでいた。
悟空には、『世界を救う』という大きな使命があるんだ。
わたしみたいに趣味(?)で修行をしてるのとはワケが違うんだ。
それじゃわたしは、悟空のためにいったい何をしてあげられるんだろう……?




第六章:彼のために出来ること






が朝食後の座禅修行でいつものごとく雑念をとばしていたそのころ。
神殿の奥深くで語らっているものが約二名。
いわずと知れた神と、その付き人ミスター・ポポだ。





の修行の様子はどうだ?」

「とても、順調。あれなら充分、悟空のサポート、できる」

「そうか。……では、そろそろか」

「はい。そろそろ、いい頃」




が神殿に初めてやって来た頃、神は自らの責任を感じ、気が紛れるならば、と彼女がここ天界で修行することを承諾した。だが、その気晴らしのために始めた修行で彼女が驚異的な速さで力をつけてきていることが判明し、ピッコロ大魔王を倒す戦力にもなり得るだろうと推測していた。

もちろん、いまだ武道を始めて数ヶ月のに悟空ほどの強さを求めているわけではない。(ったりめーだっつーの!)ただ、最終的には悟空を助ける、いわばサポート的な存在に仕上げようと考えたのだ。


しかし、には実践的な経験がほとんど皆無。ミスターポポとの組み手のほかは、たまたま神殿に乗り込んできた礼儀知らずの化け物と手合わせしたくらい。


てなワケで、基礎体力も充分、相手の気の動きをつかむこともほぼ完璧、ミスター・ポポとの組み手の実力もずいぶんとついてきたことから考えて、『そろそろ』下界に送って実践での修行をさせても大丈夫だろう、ということになったわけで。



そんなこととは露知らず、その人は相変わらず『悟空のために出来ること』を考えていたのだが、近づいてくるミスター・ポポの気を感じ取り、マズいっ! とあわてて雑念を消し座禅に集中した。







ミスター・ポポの呼びかけに、やっぱ邪念を飛ばしてたのがバレちゃったか・・・と思いながら、はそっと片目をあけて彼を窺い見る。彼の表情からはやっぱり何を考えているか読み取れないけれど、やましいことを考えていた呵責がありまして。
彼が何かを言いかけるより早く、はあわててごまかし笑いを浮かべた。



「あ、あの、えと。違うのポポさん! わたしは純粋に、修行してたよ!! 別に悟空のこととか考えてないしッ。ゼンゼン問題ナシ、です!!!」




――――――なにを勘違いしたのか知らないが、焦って早口にまくしたてる彼女を見て、悟空のことを考えていたのか、とミスター・ポポは苦い笑いを浮かべながら。



毎度のことながら、なんてわかりやすいヤツだ、と内心ため息をつく。





、今日から新しい修行、始める」


あたふたしているにペースを乱されかけたが、そこはさすがに天界人。
軽く咳払いをして、本題に入った。



「新しい、修行?」


考えていたこととは違う言葉(しかられると思ったので///)にきょとん、と聞き返してくるに、ミスター・ポポは軽くうなずいた。



「そう。お前、今日から悟空と同じく下界で修行する。とにかく、付いて来い」


くるり、と回れ右をして、神殿の中に入っていくミスター・ポポの後を、があわてて追う。



(下界で修行? わたしが??)



アタマはもう疑問符でいっぱいだ。?マークがの頭上から絶えずピョコピョコ飛び出てくる。
なにせ、こっちの世界に来てからというもの、はここ天界の外には一歩も出たことがなく。
何気に天界がこっちの世界のすべてだと思っていたような…(おバカ!!)



てゆうか、それよりも。
なにゆえ、自分が下界で修行をしなければならないのか。



確かに、最初は途方もなく遠く感じた例の殺人修行メニューも、最近ではかなり楽にこなせるようになってはいるけど、(だからこそ、邪念を飛ばす余裕が生まれる///)にとっての武道の修行とは、単に気晴らしと暇つぶしだったりして。
だから、本格的に武道家を目指すとか、試合をするとか、そんなこととは無縁の世界を歩んでいるはずだ、と思ってた。




なのに。
なんで、自分が下界修行??




相も変わらず神殿の奥を目指してずんずん歩いていくミスター・ポポの背中を追いかけながら、はしきりに首をひねっていた。





神殿にはいろいろな部屋があって、ミスター・ポポに聞いたところによると過去の部屋、現在の部屋、未来の部屋などなど、不思議な部屋の豊富なバリエーション。ずいぶんと長い間ここに居座っているけれど、が神殿探検ツアーを試みたのはここに来たばかりの時だけで、それからはなにかと忙しくて(というか命の危機)好奇心はどこかに身を隠してしまっていた。



(う〜ん、ホントたくさんの部屋だなぁ…入ってみたい!!!)


むくむくと野次馬根性が頭をもたげてくるが、すたすたと先を行くミスター・ポポを見失ってはタイヘンだと思い直し、はやっとこさ自分の欲求を押さえ込む。なんせ彼女は、筋金入りの方向音痴だ。たとえばどこかに旅行に行ったとして、地図を見ながら反対方向に歩き出す。さらには旅館やホテルで迷子になる。とかく、東西南北という方向感覚が欠けている。


旅館で迷子になるくらいだ。ここ神殿で迷子になる自信は多大にある!!(そんな威張ることじゃない) そしてここで迷子になるのはヒジョーに危険デアルことくらいにだって理解できる。


そんなわけで、湧き上がる好奇心をグッとこらえ、ミスター・ポポを追ってしばらく後。



なんの変哲もない、シンプルなドアの前にたどり着いた。



「ここだ。入れ」

振り向いたミスター・ポポを見て、は不安な顔をする。

「ポポさんは? 一緒じゃないの?」

「この先に、神様がいる。あとは、神様が説明する」


ミスター・ポポはいつもどおりの抑揚のない声でそういった後、の背中を優しくたたいた。

「大丈夫。お前、強くなった」

うつむいていたは、その言葉に顔を上げ、彼を見てはにかんだように笑うと、「行ってきます」と小さく呟いてドアを開けた。





ヘンな部屋。



その部屋に足を踏み入れて一番にそう思った。


なんだか、大きくて白いスクリーンがあって、元の世界の映画館に酷似している。そのスクリーンを背に、神がその前に立っていた。
相変わらずの緑色。鋭い鉤爪に鋭い目。


「神様、お久しぶりです」

やっぱり顔色良くないなぁ、なんて思いながら、は久々に顔を合わせた神にぺこりと頭を下げた。


同じ神殿にいるにもかかわらず、神とはあまり顔を合わせる機会がない。時々修行の様子を見に来るといった感じで、普段はなにか別の仕事をしていたり、思慮深く難しそうな顔で考え込んでいたり。
――――――つまり、神もなにかと忙しいらしい。




よ、ここでの生活にはもう慣れたか?」

しわがれた神の声。

「あ、はい! 悟空にもポポさんにも、とっても良くしてもらってます」


思考がトリップしていたときに声をかけられ、はあわてて答える。
それが緊張しているように見えたのか、神は少し笑った。

「そう気負わずとも良い。…さて、本題に入ることにしよう」


神が背後を振り返り、その巨大なスクリーンを見上げる。
すると、映写機からの映像を捉えたように、そのスクリーンにはうっそうとした森が映し出された。



「ミスター・ポポに聞いたとは思うが、には今日から下界での修行をしてもらうことになる」

「あの〜…質問しても、よいでしょうか?」

は小さく挙手して、上目遣いに神を見上げる。
神は先を促すようにを振り返った。


「ちょっと気になってしまったのですが…わたしの修行って、いわばお遊びの領域のような感じですよね? それなのに、わざわざ神様直々に下界に送ってもらえるなんて、なんだか腑に落ちないんですが」

の発言に、神は笑った。

「なるほど、少し説明不足だったか。よ、そなたの修行の様子は時折見せてもらっていたが、そなたには類まれなる素質があるようだ。この短期間でこれほどまでに成長するとは神である私にも想像がつかなかった」


神様の言葉を聞いて、の疑問がまたひとつ増えた。


「素質…って、そんなのナイと思いますが……」


疑わしそうに目を細めて自分の手を眺めるに、無自覚なのか、と神のほうが逆に驚いてしまう。
ミスター・ポポに聞いてはいたが、本当に彼女は鈍いらしい。(失敬な)



しかしまあ、実力のほどは確認済みであるし、ワンランク難易度をアップしても差しつかえはないであろうと思い直し、神はいまだ信じられないという顔をしたに目をやる。


「信じられなければそれでも良いが、私の推量では、、そなたはまだまだ強くなる。ここでの修行で基礎的な武術はほぼ身についているであろう。そこで、次に必要なのは実践的な……」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


つらつらと意見を述べる神の言をはあわてて遮った。




なんか、なんかなんかなんか!!!!


『まだまだ強くなる』とか。
『基礎武術が身についてる』とか。




神様、なんか勘違いしていらっしゃいませんか・・・?


「わたしはただの一女子高生ですよ。たかだか数ヶ月の修行で、そんなに強くなったとは思えません」


――――――もっともな意見だろう。
本当に四、五ヶ月前までは、武道の武の字も念頭になかったのに、それがちょっと修行したからといって神ののたまうような強さを身につけているとは到底思えない。


自分の強さをどうしても認めようとしないに対し、神はといえばここは言い方を変えていったほうが良かろう、と結論を出し、微妙な笑顔を浮かべて彼女から視線をはずし天井を仰いだ。



よ、私は神だ。そなたのことなら何でもわかるぞ」

「は?」

「たとえば…時折もといた世界が恋しくなって人知れず泣いていることとか……」

「ぅえ!?!?」


時々ホームシックにかかっていること、気づかれてたのか…! たまにしか顔を合わせないってのに、神様、あなどり難し!!!


「それに、心ひそかに孫悟空を好いていることとか……」

「!!!///」


は真っ赤になってカチン、と固まった。

ここまで態度に表しておいて、『心ひそか』が聞いてあきれる。わかってないのは当人たちだけで、いつもそばで二人を見ているミスター・ポポはもちろん、神にだってバレバレだったのだ。


いまだ固まっているに視線を戻し、神は一気に畳み掛けた。


「そなたが孫に対して出来ることはないか、と悩んでいることも知っておるぞ」


「――――――参りました・・・」



がっくり肩を落とす
さすがは神様。人の心を読むなんて、たやすいことなんだなぁ、と思わず遠くを眺めてしまったり。


思ったとおりの反応に神はほくそ笑み、本題に入る。


「私は孫がピッコロ大魔王と戦う際に、にはその手助けをしてもらおうと思っておる。信じておらぬわけではないが、孫一人に重荷を背負わせるのは心許ない。しかし、それには実践の経験が必要となろう」



悟空の、手助け。

わたしが悟空に出来ることって、結局は強くなるってコトなんだろうか。
……確かに、わたしが強くなると悟空はうれしそうにしてくれるし、それで悟空の役に立てるかもしれないけど。



でも、大魔王なるものと闘うのは、恐ろしい・・・・・・!!!!



そうは思ったものの、結局は神を見て、諦めたようにひとつ頷いた。


「わかりました」


なんだかうまく乗せられたような気がするが、そこはまぁ気づかぬ振りをしておこう。
ここで反論しても、きっとまた言いくるめられてしまう気がするし。
――――――というか、反論するのが面倒になっただけだったりして。(いい加減)










そんなこんなでしばらく後。

強い電力を身体に感じ(感電再び♪)、それが治まると。

は先ほど巨大スクリーンに映っていたうっそうとした森の前に立っていた。



「森に入って、一番奥に咲いている『神鏡草』って花を取ってくる」


神の命をもう一度反芻し、キュ、と拳を握りしめる。


「……よし!!! 悟空のために、ちん、頑張りやす!!!」


少々ズレた気合を入れて、は森の中へと足を踏み入れた。













あらやだ! つづいてしまいましたがな。しかもワケわかんないし。
……すすすすみませんごめんなさい!!!駄文も駄文ですね…(≧人≦;)