硬そうな長髪に、引き締まった筋肉。
見たこともない戦闘服に身を包み、左目になにか機械のようなもの。
そして、全身から放たれる、すごい殺気。
その男は突然現れて、そして―――――――― 一瞬にしてわたしの幸せを奪っていった。






第三章:異変





気配だけで、こんなに威圧できるなんて。
ピッコロ大魔王の時だって、こんな重い気を感じなかった。
重い―――――――――そう、そして……ゾクリと背筋が寒くなるような、威圧的な気。

そんな殺気だった気を携えて現れたその人物は、ほのぼのしていた仲間たちの前に立ち。
それから口端を上げてにやりと笑った。


「成長したな……。だが、ひと目でわかったぞ、カカロットよ…。父親にそっくりだ………」


ひたと悟空をその鋭い眼光で捕らえながらのその発言に、対峙する悟空が怪訝な顔を返し、そのとなりにいたクリリンがきょとんとその人物と悟空を見比べる。



「な、なんだよこいつ……。なに言ってんだ?」

そんな反応を無視して、男は悟空を見据えて話を続ける。

「カカロット、この星の有様はなんだ。人類を死滅させるのがきさまの使命だったはずだ。いったいなにを遊んでいた……!」



???
クリリンさんじゃないけど、本当に何を言ってるんだ、この人は。
首の後ろがチリチリするくらい殺気立ったすごい気配だけど、悟空を見ながら、え〜と……カ、カロット?
それに、言ってることも何がなんだかさっぱりだし。人違い、もしくは――――――変というか、イカれた人???


気配に威圧されながらもそんな失礼なことを思えるあたり、自分もずいぶんと肝が座ったものだ、なんて自分に自分で感心しながら顔を上げただったが。
その変人(?)に向かってクリリンが不用意にもずんずん近づいていくのを見て、顔色を変えた。



「ねえあんた、どこの誰だか知らないけど、帰って帰って! しっしっ! ンもう、昼間っから酔っ払ってちゃダメだったら」
「クリリン、近寄るなっ!!!」「クリリンさん、ダメッ!!!」



手を振って追い払うようなそぶりを見せるクリリンに、思わず上げたの声が悟空と重なった。
でも、重なったのは声だけではなくて。



バチィッ!!! と。



―――――――――その男がクリリンを攻撃したのも、ほぼ同時だった。





腕組みしたまま、その場に立ったまま。
どうやって攻撃したのかもわからなかったけれど、事実、クリリンは大きく吹っ飛ばされて。
勢いづいて飛ばされた先にいたブルマはクリリンを素早くよけて、彼はそのままカメハウスの外壁に突っ込んだ。





崩れた壁に頭から突っ込み、足だけが痙攣したように動いているそれを見て、愕然とする面々。
とくに何もしていないのに、何もここまですることはないだろう、と。思っていることはみな一緒だと思いきや。





―――――――――ブルマさん、ナイス。当たらなくてよかったぁ…。



と、幾分かホッとしていたりするのは、である。
だって、クリリンは、まぁ鍛えてるからこの程度で死ぬようなことはないだろうけど、ブルマを巻き込んじゃったら彼女の命は保障できない。確かにブルマは最強だけど、身体のほうはいたって普通の女の子。壁が崩れるほど叩きつけられて、無傷ですむはずがない。

クリリンだって大切な仲間であることに変わりはないけれど、自分の中ではやっぱりクリリン<ブルマだ、とそんなふうに脱線する相変わらずのはさておき。





「きさま………っ!!!」





クリリンが突っ込んだ壁から、攻撃した男に怒視線を流した悟空は、次の瞬間驚いたように目を見開き、動きを止めた。
その様子を怪訝に思いながらも、亀仙人とブルマが同じように男を見て、これまた同じように硬直する。

「…………???」

遅ればせながらもその様子に気づいたが、悟飯を腕に抱いたままその場の面々に倣い、そろそろと視線を上げた先。
多分それでクリリンを攻撃したのだろう、ゆらゆらと自らの意志を持っているかのように揺れる、まるでサルのような長い―――――――





「「「「シッポ!?!?!?」」」」





唖然としたように声を揃えるメンバーを、楽しむかのように皮肉げな笑みを口元に湛えたまま眺める男の視線が、悟飯に止まった。正確には、悟飯の、シッポ。
ハッとそれに気づき、が反射的に悟飯のシッポを隠して強く抱きしめる。

それをちらりと見やってから、男は悟空に視線を戻した。
対峙する悟空は、それはもう驚いたように目の前の男とそのシッポを見比べて。


「し…シッポだ………。こいつにも、シッポが、ある…………っ!」
「ふふふ…。やっとこのオレの正体がわかったようだな」


呆然と呟く悟空に対し、男はにやりと唇をゆがめて笑ったが、とうの悟空はといえばその言葉も理解不能とばかりに怪訝な顔を返す。

「正体…? どういうことだ!」


悟空の物言いに、いままで笑っていた男の顔から笑みが消えた。
組んでいた腕を忌々しげに解き、鋭い眼光で悟空をにらむ。



「カカロット、貴様、そんなことまで忘れてしまったのか!? なんということだ……。おい! 以前に頭に強いショックを受けたことがあるか!?」

声を荒げるその男の問いかけに、悟空は悟空であくまでも反抗的な態度をとる。

「オラはそのカカ何とかなんていうおかしな名前じゃねぇぞ! 孫悟空だ!!!」
「質問に答えろっ! 幼い頃などに頭を強く打ったことがあるのか!?!?」



口喧嘩が始まりました…、とそのやり取りをハラハラと見ていただったが。
………そういえば、シズばあさんが「赤ん坊のときに思いっきり頭から落ちて頭蓋骨骨折」とか言ってたような、と思い出す。

悟空は感情的になってきたその男の目を真っ向からにらみ、小さく頷いた。



「…ある! オラは覚えちゃいねぇが、うんと小せえ頃に頭を打った! 今でも傷が残ってる」

頭を押さえながらの悟空の言葉に、その人は舌打ちをして苛々と悟空を見据え。

「くそっ! やはりそうだったか……!」
「だけど、それがどうしたっていうんだ!!」


突っかかるように悟空が聞き返したとき、それまで黙っていた、というか、突然現れたシッポを持つ人物の殺気に気おされていた亀仙人が動いた。



「……悟空よ……。その昔、死んだ孫悟飯が言っておった。尾のはえた赤ん坊を拾ったが、性格が荒くどうにも懐こうとはせず、ほとほと困り果てていたそうじゃ。……だが、ある日過って谷に落ち、頭を強打して死にかけたが、信じられん生命力でその赤ん坊は助かったらしい。おまけにその後、性格の荒さは消え、おとなしいいい子になったという…」



久々にシリアスな顔をご披露する亀仙人を振り返った悟空の顔に、戸惑いの色が浮かぶ。

「それが、オラか………?」

神妙な表情のままこくりとうなずく亀仙人を見て、事の成り行きを呆然と傍観していたブルマが口を開いた。


「そ、それってどういうこと? あ…アイツ、孫くんとなにか関係があるわけ?」



今はないけど、昔、悟空にもはえていたというシッポ。
そして、その血を受け継ぐわが子にもはえているシッポ。
更に、目の前にいる殺気立った男も、長いシッポを持っていて。



ブルマの言葉と、その「シッポつながり」に、の胸にも不安が広がる。


「お、おめえ、いったい誰だ!? なにもんなんだ!!!」

悟空の問いに、男はひとつ頭を振り、それからゆらゆらと揺らめかせていたシッポを自分の胴に巻きつけた。

「何もかも忘れてしまったとは、厄介な野郎だ…。いいだろう、思い出させてやる。これからきさまにもいろいろ働いてもらわねばならんからな………」





悟空に、働いてもらう――――――って。





「う〜ん……。悟空は、働けるのかなぁ……」
「おかあさん?」
「あ、ごめんね悟飯ちゃん」



ぽそり、と呟いたの声は、当然緊迫しているその他の方々に聞こえるはずもなく、密着している悟飯だけがやっと聞き取れるくらい小さいもので。
だって、バトルマニアで身体を鍛えることが大好きな夫。加えて天然でマイペース。
そんな悟空が好きだけど、の知識の中での『仕事』には、まったくもって向かない気がする。
まずは時間の拘束に耐え切れないのが目に見えているし、規律や規範なんか無視する可能性も非常に高い。



そんな風に飛んでいくの思考を引っぱり戻したのは、まだ年端もいかない悟飯だったりして。
この緊張感のなかで、子供でさえもそれを感じているというのに、どうしてわたしはこんなにも暢気なんだろう、と軽い自己嫌悪に陥るのとなりで、壁に突っ込んでいたクリリンが頭を押さえて立ち上がった。





「クリリンさん、大丈夫?」
「あ、ああ……。なんとかね」


口元を拭いながら、心配そうなに強がって無理に笑いかけ、それから悟空に目をやるクリリン。


「気をつけろ悟空。あ、あいつ……普通じゃない」
「うん、そうみてえだな。こうやって向かい合っているだけでも正直言って怖いぐれえだ。こんなこと初めてだ」



悟空の『怖い』宣言に、急速に不安になる
脱線しまくってはいるけれど、気がつけばやはり目の前の男は背中に冷たい汗が伝うほど重たい威圧的な気配。





「教えてやる。まずきさまはこの星の人間ではない。生まれは惑星ベジータ。誇り高き全宇宙一の強戦士族サイヤ人だ!!!」



「は!?」「な!?」「い!?」「なな、なんじゃと…っ!?」「ぅえぇええーーーっ!!!」



驚きでそれぞれ声をあげるなか、もちろん、最上級の驚きの声をぶちかましたのは、である。

ご、悟空さんは………エイリアンだったのか!?!?!?の頭のなかに、もとの世界で見たエグイ映画の光景が浮かび上がる)


い、いやうん、アレは違う!
悟空はちゃんと人の形してるしっ、他人の身体に卵を産み付けるようなことはしないし……っ!



突然の衝撃の宣言に大パニックを起こすアタマ。
一番ショックを受けるはずの当人よりもオロオロとうろたえ、涙目になった瞳を泳がせ始めたの様に、思わず宥めにかかる皆々様である。



「ちょ、ちゃん落ち着きなさいよっ!」
「だだだだってブルマさんっ! ご、ごご悟空がエイリアンなんて……っ」
「わわ、泣くなよちゃん!」
「大丈夫じゃ、大丈夫じゃよちゃん」
「えいりあんってなんだ?」
「おかあさ〜ん!」



賑やかに繰り広げられるそのやりとりに、完全に無視される形となった男のコメカミに怒りの青筋が浮かんだ。





「ふざけるなきさまらっ!!! 話はまだ終わってはいないっ!!!」






―――――――――……………し〜ん………。






張り上げた怒声は、どう考えてもマジ切れ声。
一瞬忘れていたけれど、感じるだけで恐ろしくなる気配の持ち主が、キレて怒っていれば、当然のごとく波を打ったように静かになる場。





「ご、ごめんなさい……」





騒ぎを起こした張本人のが、お怒りモードのその男に思わず小さい声で謝る。
その声につられて自分のほうを見た男と、このとき初めて、目があった。



強い眼光と鋭い視線を向けられ、完全に蛇ににらまれたカエル状態のの思考はといえば。





うをを。。。
にらんでるにらんでるすっごいにらんでるっ! そりゃそうだよね、思いっきり存在無視しちゃったんだから。でも! 自分の夫が宇宙人だなんて聞かされて、UFO☆チャカチャチャンチャンチャン♪なんてなったら誰だってビックリするじゃんか! そんなおっかない目で見ないでよ〜〜〜、ちゃんと謝ったんだから〜〜〜っ!!!





一方、話のコシを折られた男はといえば。





ほう…。
カカロットやさっき会った緑色のヤツには劣るが、この星の人間にしてはまあまあの戦闘力じゃないか。腕に抱いてる尾のはえたガキはカカロットの息子だな。ということは、この女はカカロットの女か…。ふん、カカロットのやつめ、戦闘力は未熟のくせに、女を見る目はあるようだ………。





完全に怯えたような様子のと、品定めをするかのように彼女を見る男の間に、悟空が割り込んだ。

「おめぇ、そんな目でを見るなっ! 怖がってんじゃねか!!!」
「フン、ずいぶんと可愛がってるんだな。……そんなに大事か?」
「あたりめえだ! それより、早く話の続きしろよっ!!!」





今まで以上に声を荒げる悟空を鼻で笑ってから、「悟空サイヤ人説」の続きを始めるその男。





すなわち。

その男は、悟空の兄(!!!)のラディッツという名で。
戦闘民族であるサイヤ人は、環境のよい星を探してその星に住むものを絶滅させてから、適当な星を求めている異性人たちに売るのが仕事で。
戦闘力の高い者のいる星には大人の戦士が直接乗り込み、地球のようにレベルの低いところには、赤ん坊を送り込む。
つまるところ、悟空は赤ん坊のときに地球人たちを絶滅させるために、送り込まれたサイヤ人。






「幸いなことにこの星にも月があるしな。おまえひとりでも数年かければ充分に邪魔者を一掃できたはずだ。……命令さえ覚えていればな」





いたいけな赤ん坊に、人殺しをさせるなんて………。
子を持つ母として、神経を逆なでされるような感覚に襲われる
きゅっと悟飯を抱きしめるをいたわるように見てから、悟空はラディッツに視線を戻し。



「…………おい、ここには月があるからなんで幸いなんだ……?」

その問いに、自信に満ち溢れたゆがんだ笑みを口元に湛えるラディッツ。

「とぼけるな…。月が真円を描くときこそが、われわれサイヤ人の本領を発揮できるときではないか!」

「「「あ………っ!!!」」」





ラディッツの言葉に反応を示した亀仙人、クリリン、ブルマが仲良くハモった。
それを、ことりと首を傾げて見やると、そんな母親を怪訝そうに見上げる悟飯と、意味不明といった感じの悟空と。




「なんのことかさっぱりだ」



わからない、ときっぱりはっきり宣言する悟空に、ラディッツは大きく目を見開き。
それからハッと気づいたように悟空の姿を凝視する。



「ま、まさか…!!! 貴様、シッポは………っ! シッポはどうしたっ!?!?」
「ずっと前に切れてなくなった」
「――――――なんということだ…。愚か者めっ! どうりで貴様がこの星の者どもと仲良くしていられるわけだ!」



ぎりっ、と歯軋りが聞こえてきそうなほど苦渋の表情を見せ、吐き捨てるようにいうラディッツに、悟空もグッと拳を握り締めた。





「もういいっ!!! オラがよその星から来たなんとかってヤツだろうが、おめえが兄ちゃんだろうが関係ねぇ!! そんなやつらは最低だっ!!! オラはここで育った孫悟空だ!!! とっとと帰ぇれ!!!」



悟空の言葉に、顔を上げる
そうだ、悟空が宇宙人だって、柔らかい悟空とはまったく正反対の気を持つラディッツがお兄さんだって――――――悟空は悟空だ。それ以外の何者でもない。


仲間たちも、彼女と同じ気持ちになったのだろう、次々とラディッツに非難の目を向けた。



「そうよそうよっ! 孫くんは孫くんよっ!!」
「そういうことじゃ…。過去はどうあれ、今の悟空は誰よりも立派な地球人なんじゃ」
「悟空はな! この世界を救ったくらいなんだぞ! 帰れ帰れっ!!!」



そんなブーイングなど、星を滅ぼしてきたラディッツは聞きなれているのだろう。
再びその顔に皮肉げな笑みを浮かべ。



「ところが、そういうわけにはいかんのでな………」

引き下がるつもりなんか毛頭ないといった様子で、口端をゆがめながら再度語りだす。





もともと少数民族だったサイヤ人の星である惑星ベジータが、巨大隕石の衝突で爆発し、ほとんどすべてのサイヤ人は―――悟空やラディッツの父母も―――宇宙のチリと消えてしまったという。
残ったサイヤ人は、悟空を含めてもたったの四人。
高値で売れそうな星を見つけたが、三人では苦戦しそうなので、悟空を仲間に引き入れて四人でその星を攻めようと思いついた……。





「目を覚ませカカロット!!! 楽しいぞ!!! サイヤ人の血が騒がんか!?!?」



ゾクリ、とその笑みに背中が粟立つのを感じる。
それは、戦闘と殺戮を楽しんでいる目の前の男への嫌悪感。
戦い好きなのは、悟空を見てればわかる。わかるけど、弱いものをいたぶり命を奪うなんて――――――間違ってる。



「バカ言ってろ!!! そんなこと、オラ死んだって手を貸すもんかっ!!!」



案の定、悟空はラディッツに食って掛かったのだが。
ラディッツはそんな悟空を見て「なるほどな…」と小さく笑ってから、その視線をと悟飯の方に流した。




「あのシッポ……。後ろにいるのはおまえの息子だな?」



ギクリ、と硬直したのは、悟空と、ほぼ同時だった。
無意識に、悟飯を抱くの腕に力が入る。

「だから……なんだってんだよっ!!!」

基本穏やかな悟空の気配に、焦りの色が混じる。



「父親のおまえがなかなか聞き分けが悪いんでな。ちょっと息子を貸してもらうとするか……」


なんの気負いもなく軽く囁くように言って、目の前に悟空がいることなどおかまいなしでと悟飯のほうに歩み寄るラディッツにむかい、悟空は身構えた。



「それ以上近寄ってみろっ!!! ぶっ飛ばすぞっ!!!!!」



目と鼻の先に近づくラディッツが、身構えた悟空の目の前で一瞬ぶれたかと思った次の瞬間。
その膝蹴りが悟空の腹を直撃した。




「悟空!!!」「おとうさん!!!」





たった一発で、悟空が吹っ飛ばされるなんて――――――っ!!!





倒れこんで痛みにあえぐ悟空に、思わず駆け寄っただったが、彼女を追いかけてきた悟飯がその途中でラディッツにつかまってしまって。

攻撃され倒れている悟空と、恐怖に泣き喚く悟飯を目の当たりにして、のなかでなにかが弾けた。






「――――――いい加減にしてよ、このデコっぱち!!!!!」






バシィ、と。
の平手がラディッツの頬を張り。
痛みよりもきっと驚きのほうが大きかったのだろうが、一瞬緩んだ悟飯をつかむ手から息子を奪い取り、はキッとラディッツをまっすぐ見据える。
炎をともしたその瞳に、いままで絶対的な強さを見せ付けていた男が怯んだ。



「わたしの大事な悟空と可愛い悟飯。この二人を苦しめるあんたなんか、大っ嫌い。さっさとどっかに行ってよっ!!!」



いままで威圧されていたことも、我を忘れている今のには念頭にも浮かばず。
突然ビンタが飛んでくるとは思いもよらず、切れた唇をグイッと拳でぬぐうラディッツに、感情のままに怒りの視線を向ける



自分を怯ませた女とにらみ合うこと約数秒。
ラディッツはおもしろそうににやりと笑った。




「ふっ。おもしろい女だな…」



その物言いに含みを感じたが後下さり、不穏な空気を呼んだ悟空が立ち上がれないまま彼女に顔を向ける。



「に、げろ、…っ! うんと、遠くへ。悟飯と一緒に、逃げるんだ……っ!!!」


キレているであればできるはずだ、と痛みをこらえて必死に呼びかける悟空に小さく頷き、悟飯を抱き直して身を翻そうとするよりも一瞬早く。




ラディッツがガシッとその腕をつかんだ。




「っ! ちょ、痛!!! 放せこのМ字禿!!!」
「放せと言われて放すヤツがいると思うか? カカロットよ、オレはこの女が気に入った。まあ、とりあえず人質として息子と共に連れて行くが、さっさと決断したほうがいいぞ。言っている意味はわかるな?」



自分を見下ろして酷薄な笑みを向けるラディッツを見て、悟空の顔色が変わる。



「か、えせっ! 、悟飯……っ!」

はいつくばって足をつかむ悟空の手を、ラディッツが蹴り飛ばす。

「悟空っ!!! わたしのだんな様に何するの!!! てか、さっさと放せっ!!!」
「うわーーーんっ!!! 怖いよおとうさん、おかあさーん!!!」



いつも助けてくれるはずの悟空はその場に倒れこみ、他の面々も手出しができないこの状況で。
唯一身体が動く自分が悟飯を守らなきゃならないのに、腕を捕獲されてびくともしない。
このときほど、非力な自分を悔しいと思ったことはなかった。





「一日だけやるから苦しんで考えてみるがいい。まあ、仲間に加わるしかないだろうがな。ただし、証拠を見せてもらうぞ……。なあに、簡単なことだ。明日のこの時間までにこの星の人間をとりあえず百人ほど殺して、ここにその死体を積んでおけ」


そういい捨て、と悟飯を小脇に抱えたままきびすを返す。


「聞こえたな。明日を楽しみに待っているぞ。弟の女と子供だ。できればオレも無傷で返してやりたい。ふっふっふ…」





もがこうが暴れようがまったく動じないその腕。
切れるほどに唇を強くかみしめたは、唐突に最近の夢を思い出した。










重い不安。
なにかが変わってしまう予感。




















―――――――――――――――気のせいで、あってほしかった。




















なんともはや……こんなんでゴメンナサイ。。。
難しいですね、原作沿いって;
この後はいろいろ吹っ飛ばしつつ邁進しま〜すっ!(え!?)