悟空とともにさらわれて、やって来ました「カメハウス」。
小さな島に、洋風の派手な家。
ここに住んでるのは、悟空の師匠・亀仙人さんこと武天老師さま。
でも今は、賑やかで楽しい、そしてちょっと……いや、かなり悪ノリの大好きな、悟空の仲間たちも集結してるようです…………(汗)
第二章:強制会議?
「海だ! 海だ海だ海だー!!!」
飛行機から降りたとたん(高所恐怖症ゆえ、飛行機の中ではおとなしく悟空にしがみついていた)、目の前に広がる地平線に感動し、何のために連れてこられたのかも忘れて大はしゃぎのである。
白い砂浜に打ち寄せる波は透明で。
深くなるにつれて真っ青に色づいていくその海水に、太陽の光が反射してキラキラきらめいている。
「すごーい! 綺麗〜! ね、入ってもいい?」
悟空を振り返りお伺いを立てながら、すでに入る気満々で靴を脱ごうとしているの顔には、楽しいときとか嬉しいときのまったく飾らない満面の笑みが浮かんでいる。
ホント、可愛いよな〜///
そんなふうにのんきに思いながらをニコニコ眺めている悟空と、その答えなんか待たずにさっさと裸足になって海に向かって走り出すを見やりながら、ブルマは軽く息を吐く。
「ほんっとに、しょうもないカップルねぇ……」
さっきまでここに来ることを思いっきりビビっていたにもかかわらず、もう忘れているかのようにはしゃぐと、つられるように靴を脱ぐ悟空。
恋ゆえなのか、愛ゆえなのか、それとも…………ただのおバカなのか。
とりあえずここまで連れてきたんだし、まあいいか、とブルマは若干脱力しながらカメハウスの玄関を開ける。
「あ、お帰りブルマさん。……あれ? 悟空とちゃんは?」
はじめに気付いたクリリンがブルマに話しかけ、それから拉致ってきたはずの悟空との姿が見えないことに首をかしげる。
「ああ、あの二人なら―――――――――」
「うぶ!?!? つ、冷た!!! え!? な、、、や〜〜〜……」
「、なにやってんだよ…って、うわっ!!!波にさらわれてんぞ!!!」
ブルマが答えるより早く。
遠浅だと高をくくってざばざば走っていたが、いきなり深みにハマってまずすっ転び、身体に感じたその水の冷たさに悲鳴を上げ。
立ち上がった瞬間に思いのほか高い波に頭からのまれ、更にはその波によって沖に流されだした。
片割れの悟空は、靴を脱ぎ終えたときに騒ぎ出したを不審に思って振り返れば、海の上に手だけをバタバタ振っている彼女の姿を目の当たりにし、全身から血の気が引く。
とにかくなりふりかまわず海に飛び込み、じたばたともがくの腕を引っつかんだが、パニクっているは手に余るくらいの抵抗を試み。
「ゃ…やーーー!!! ゴボッ! 死ぬ! 溺れる!! 助けて悟空―――!!!」
「だから今助けてんだろっ!!! 痛てっ!!! コラ暴れんなよ!!!」
さすがはというべきか。
神殿での修行はだてではなく、こんなときに見せなくてもいいのに、つかまれた腕を必死に振りほどこうと素晴らしい動きを見せる。
しかしそこは世界最強の悟空。
力で劣るを必死に押さえつけ、力いっぱい押さえつけてもなら死ぬことはないだろうと動けないようにがっつり羽交い絞めにして、岸に向かって泳ぎだす。「ぐぇ」というの声は聞こえないフリだ。
そんなこんなでようやく波の届かない砂浜までたどり着いた二人は。
悟空はとりあえず岸にあがれたことに安堵の息を吐き、はいまだに悟空にしがみつき、恐怖に目を見開いていて。
「ハァ…。ったく、頼むからあんまり心配させんなよ」
「うぅ…、ご、ごめん。ありがとう、助かったぁ」
―――――――――こいつらは。
あまりの大騒ぎに外に出たクリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子。
何事かと窓の外に目を向けた亀仙人、ウーロン、プーアル、ランチ。
そして、軽く額を押さえるブルマ。
集中する視線の先の二人はその全員の呆れ顔に気付き、パパッと離れて引きつった笑顔を返す。
「あ〜、う〜んと………お、オッス」
「あ、と……こ、こんにちは」
そう、二人は必死だったのだ。
なにせ命がかかっていたのだ。
抱きあっていたのだって、別にいちゃいちゃべたべたしていたわけではないのだ!!!
そもそも、正確には悟空が暴れるを動けないように羽交い絞めにして押さえつけ、は恐怖ゆえに悟空にしがみついていただけで、抱きあってなどいないのだ!!!!!
仲間たちを見る悟空との必死な瞳が、そう語っているのは当然読み取れる。
『目は口ほどにものを言う』とはよく言ったもんだ。口に出さずとも、それはもうわかりやすいほどに、手に取るようにわかる。のだが。
相変わらずのラブラブっぷりとバカさ加減に、全員が全員、深くため息をつき。
「ゴメンナサイみんな、そして悟空さん! わたしがおまぬけなばっかりに…っ!」
この事態を招いてしまったのは自分だと理解しているが、自己嫌悪はとりあえず謝ってからだと結論を出し、ガバッと勢いよく頭を下げ。
それから、そ〜っと上目遣いに仲間たちに向ける彼女の表情に、一同惚けた。
頭からかぶった波のせいでびっしょりなは、なんだかえもいわれぬ色気を醸し出していて。
纏める余裕すらなくさらわれて来たため、長い髪は肩にうちかかり、濡れたせいで軽くウェーブがかかっている。
ウルウルと潤むその黒目がちな瞳と、きれいな顔から滑り落ちる水滴。
全身全霊で「ごめんなさい」を表現しているその姿は、まるで叱られた子犬のようで。
悟空がその濡れた髪をかき上げて、「気にすんな」と笑いかけると、ふわっと広がる柔らかい笑顔。
ブルマとランチは、「あら可愛いわ、ちゃんv」と笑いあい、天津飯、餃子は不覚にも見惚れ、クリリン、ヤムチャ、亀仙人が悟空をひっぱたき、ひっぱたきたいけど乗り遅れたウーロンと、クスクス笑うプーアル。
「痛ってー!!! なにすんだよクリリン、ヤムチャ、じっちゃん!!!」
「うるせー! この幸せ者が!!! オレだって、オレだってなぁ!!!」
「わかるぜクリリン、その気持ち。もっとひっぱたかせろっ、悟空!!!」
「そうじゃっ! くぅ〜〜〜!!! ちゃんを独り占めできるんじゃ! 一発くらいじゃ足りんわいっ!!!」
ギャーギャーワーワーと飽きもせずにはじまった喧騒の中、「わたしのせい!?わたしのせいなの!?!?」とおろおろしているに気付いたブルマが「やめなさーい!!!」と叫んだが、耳に入ってない様子の仲間たち。
「…………声じゃダメね。ランチさん、お願い」
「おう、まかせとけ」
ドバババババババ!!!!!
―――――――し〜〜〜〜〜〜ん………………。
「さ、じゃあ中に入って、本題といきましょうか」
フッと、マシンガンの煙を吹き消す格好いい素敵なランチ。
にっこり笑うブルマの背後に、夜叉が見えたのはだけではなかったはず…………。
ずぶぬれの悟空とは、それぞれバスタオルに包まるといった姿で。
カメハウスではブルマの言う『本題』の会議が開かれる運びとなった。
「じゃあまず今回皆で集まったのは、ズバリ! 悟空とちゃんの結婚式についてなんだけど、当人たちに何か希望はあるのかしら?」
一応聞いてあげるわ、みたいなニュアンスで議長のブルマに言われ、悟空は例の如くきょとんとし、はちょっと困ったように笑う。
「ケッコンシキ? なんだそれ? それしないとケッコンできねぇんか?」
「……はい、孫くんは後ほど結婚についての講習を受けてもらうとして。ちゃんは?」
ブルマ、悟空の発言を軽くスルーし、に目を向ける。
「えぇと、、、さっきも言ったけど、わたしたち文無しなもんで/// 結婚式とかってすごくお金かかるって聞いたことあるし、なんか悪いかな〜、なんて」
うつむきがちに語る。
「それは大丈夫だよ。オレたちが楽しむためでもあるんだし。なぁみんな?」
クリリンの意見に頷く面々。
「ちゃんだって、ウェディングドレス、着てみたいでしょ〜?」
ブルマの言葉に、頬を染める。
そりゃ、ウェディングドレスは乙女の夢だ。
愛する人のために着てみたいと思うのは、いたって当然のことなワケで。
そんなの様子ににんまり笑うブルマ。
一方、なんでは赤くなるんだろう、とまるでわからない悟空が口を挟む。
「なぁ、ケッコンシキって………」
「孫くんは黙ってて。後から真の結婚の意味をクリリンくんたちに教えてもらってちょうだい」
「は? お、オレっすか!?」
「あら、『たち』って言ったじゃない。ヤムチャや亀仙人さん、その他諸々の男性陣もそこに入ってるわよ」
「オレもかよ!?!?」
「わしもじゃと!?!?」
一斉に色めき立つ男どもに、ブルマが深いため息を落とし、無視しようとしていた悟空に向き直る。
「ねぇ孫くん。アンタ、結婚ってどういうことだか知ってるの?」
「知ってるさ。好き同士の男と女がカテイってのを作って、ずっと一緒に暮らすんだろ?」
「………ずばり言うわよ。家庭を作る=子供を作るってことなワケ。アンタ、子供の作り方、わかる?」
ストレートなブルマの質問に、の顔は沸騰。
たまらず両手で顔を隠した彼女に、何をそんなに恥ずかしがっているんだろうと不思議に思ったが、それよりなにより。
悟空はことりと首をかしげ。
「子供って、作れるんか??」
はい、爆弾発言投下。
瞬間、仲間たちがいっせいに息を呑んだのが伝わってきた………。
いや、そりゃ悟空は昔っから恋愛なんかに興味を示さなかったし、むしろ見向きもしなかったけれど。
と出逢ってからはもうLove一直線で、その様子からしてそっち方面はすべて理解しているものとばかり思っていた。それは、そう思い込んでいただけだったというその事実。
驚きを隠せない面々を見渡したブルマが深いため息をついた。
「どう? コレが孫くんの結婚に対する知識なのよ。足りなすぎるのよ! コレじゃちゃん、幸せになんかなれっこないじゃない!!」
「いやあのブルマさんっ! わたしは別に悟空と一緒にいられればそれだけで……」
それだけで幸せだと、そう言おうとしたを、気迫と眼光で黙らせるブルマ。
それから自分を落ち着かせるように一息ついてから、ずずいとに顔を近づけ。
「………じゃあ聞くけどちゃん。アンタは孫くんとの子供欲しくないの?」
「うっ! そ、それは、その………」
再び顔に血液が集中するのがわかる。
そりゃ、欲しいか欲しくないかと問われれば、当然欲しいに決まってる。
愛する人と結婚して、その人との子供を産んで、幸せな家庭を築く――――――――――これぞ乙女の夢の極致だ。
再び顔どころか身体中を真っ赤に染めて恥ずかしそうにうつむいたに、すべての元凶である悟空が。
「、子供欲しいんか? オラ作り方わかんねぇけどさ、教えてくれればなんでもやるぞ」
「っっっやーーー!!! 悟空のスカタンッ!!!!!」
今まで生きてきた中で、こんなに恥ずかしかったことがかつてあっただろうか。(いやナイ。)
頭からすっぽりバスタオルを引っかぶって隠れてしまったの様が、悟空には何故そんなに取り乱すのか理解できず、不思議でならない。
不憫だ………。
が、たまらなく不憫だ。
「―――――――――わかったでしょ? これじゃあ、あまりにもちゃんが可哀想よ。だからアンタたちが孫くんに恋愛と結婚のすべてを一からしっかり叩き込むのよ!」
立ち上がり男性陣を見下ろすブルマの迫力に、皆はただただ頷くのみである。
「よし、孫くんはそういうことで。じゃ、行くわよちゃん」
「え?」
ブルマの唐突の発言に、バスタオルの隙間からそっと顔を出したの視線の先。
「そうねぇ…。会場、支度、その他諸々の準備を考えると………ざっと三週間ってとこかしら………」
腕を組みひとりごちたブルマが顔を上げ。
「ヤムチャたちは孫くんをしっかり教育してね。アタシはちゃんと一緒に結婚式の準備に取り掛かるわ。三週間後、アタシんちに集合でいいわよね?」
張り切るブルマに逆らえるものは、誰一人としていなかった………。
再び飛行機に乗り込むのは、ブルマ、プーアル、ウーロン、そして。
見送るのは、亀仙人、クリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子、ランチ、そして悟空。
この世界に来て初めて、は悟空のそばから三週間もの長い間離れることになるのかと、少し不安な気分になる。悟空は悟空で、なんだかわからないことだらけで頭がこんがらがっている上に、まで連れて行かれてしまって少々不機嫌だ。
まぁでも。
コレさえすめば幸せな結婚生活が待っていると信じて。
だんだん遠ざかっていく一番大切な存在。
見えなくなるまで、お互いずっと見つめあっていた。
一時離れ離れに。
Love休息で、悟空勉強・準備。
こんなんでスイマセンッ(≧人≦;) 頑張ります…

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